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時の焦点


時の焦点<海外> 苦悩する欧州
移民危機で亀裂露呈 日欧の国際報道における最大の違いは、中東やアフリカのニュースが欧州では質量とも圧倒的なことだろう。中東とアフリカは、欧州とは地中海を挟んで一つの歴史文化圏内にある。日本で言えば朝鮮半島や中国のように、安全保障上も社会経済上も無関心・無関係ではいられないのだ。 7月末、北アフリカ・モロッコに接しているスペイン領セウタに7万人を超す移民が一気に押し寄せた問題は、その欧州の最も敏感な部分を大いに刺激した。各国は中東・北アフリカから100万人以上の難民が流入した2015年の政治危機を想起し、EU(欧州連合)に不協和音が響いた。 イタリアは、EU域内を自由に移動できるシェンゲン協定をスペインとの間で1カ月停止。フィンランド、デンマーク、チェコが支持に回った。 怒ったスペインは9月7日まで伊からの国境審査を厳格にする対抗措置をとる。セウタの移民はほとんどがモロッコに戻って事態は沈静化したにもかかわらず、欧州の亀裂は露呈したままだ。 本来はドイツやフランスという中心国家がまとめ役になるところ、独は9月の地方選で反移民の極右政党「ドイツのため


時の焦点<国内> 消費税減税
懸念の払拭へ全力を 政府が食料品の消費税率を2027年4月から2年間、8%から1%に引き下げる方針を決定した。秋の臨時国会で関連法案の成立を目指す。 食料品の消費税率1%分の税収にあたる年6000億円分の給付も合わせて、消費税率を「実質ゼロ」にするという。 総額5兆円に上るとされる減税・給付の財源をどう確保するのか。財政や、為替・金利への悪影響はないのか。2年後に確実に税率を戻せるのか。高市首相は、様々な指摘を真摯に受け止め、懸念の払拭に努める必要がある。 首相は、英国の付加価値税など欧州の仕組みを参考にしているようだ。 英国の付加価値税率は20%(標準税率)だが、食料品の税率は原則としてゼロだ。金融危機の際には、付加価値税率を引き下げたこともある。欧州では英国に限らず、柔軟に税率を変更できる国が多い。 日本では物価の高騰が続いている。首相としては、国民生活に寄り添う姿勢をアピールしたいのだろう。 ただ、消費税は社会保障を支える安定財源だ。その減税には不安が付きまとう。 首相は税収減となることについて、「さらなる歳入確保の取り組みを進める」と語っ


時の焦点<海外> 対イラン戦争
「決着」時期と中間選挙 2026年2月28日に始まった米・イラン戦争は6カ月目に入った。トランプ大統領の強固な支持層でも、作戦の戦果・コストに疑問を抱き始めても不思議はない長さだ。 経済政策では成果を上げてきた一方、国軍最高司令官としてイランに対するアプローチは再三、危険な壁に直面。 同大統領は「イランや他の中東諸国から、ホルムズ海峡の再開放とイランの核問題解決への合意をまとめるための猶予を求められたので、計画していた大規模攻撃は見送る」と表明(8月1日)し、「イランと3日に協議」(2日)とも明かした。 しかし、イランは「米の敵対的行動が続く限り同海峡再開放はない」(2日・同国ファルス通信)、「米との交渉は行われていない。計画もない」(3日・外務省報道官)との対応だ。 トランプ氏は「イラン指導者は二枚舌」と怒り心頭だが、その二枚舌に踊らされる不明への猛省も必要なときだろう。 開戦時、外交政策の目的は明確だった―。(1)イランの核兵器保有阻止(2)長距離ミサイルの脅威除去(3)国際テロ活動の代理人ハマス、ヒズボラ、フーシ派への資金供与切断。...


時の焦点<海外> トランプの戦争
プーチンの二の舞か イランの核開発を阻止して中東の核拡散を防ぐという大義名分はどこへ行ったのか。トランプ米政権は対イラン交渉期限の8月中旬を控え、サウジアラビアと将来のウラン濃縮を可能にする原子力協定に署名した。イランにとって中東の覇権を争うライバルであるサウジへの「核拡散」は、自らの核保有への意思を揺るぎないものにする材料となりかねない。 トランプ政権のイラン攻撃は戦略も戦術も曖昧なまま、迷走を続けている。米ニューヨーク・タイムズ紙コラムニストのニコラス・クリストフ氏は7月末、「トランプの『パーフェクトな』戦争の袋小路」と皮肉った記事でイラン空爆の限界を指摘。地上部隊を派遣しようとすれば1年間にわたって60万人の兵士が必要で、当然それには犠牲が伴うとの退役将校の見立てを紹介した。 戦争が袋小路に入り込んでいるのは米国だけではない。ロシアもまたウクライナの反転攻勢によって劣勢を強いられ、プーチン大統領の目算は大幅に狂っている。 5000発もの核弾頭を保有する米露両軍事大国が、イラン、ウクライナという核を持たない中規模国家を力では屈服させることがで


時の焦点<国内> 中露の挑発活動
太平洋の警戒強化を 中国とロシアの軍が連携し、日本周辺で挑発行動を繰り返している。日本は警戒・監視能力を高めていく必要がある。 中露両国の海軍艦艇4隻が7月19日に沖ノ鳥島(東京都)付近の日本の排他的経済水域(EEZ)内を航行し、中国のミサイル駆逐艦が機関銃の射撃訓練を行った。防衛省が21日に発表した。 EEZにおける軍事活動は国際法上違法ではない。だが、4隻の艦艇は10日ほどかけて日本の周辺を航行し、潜水艦やミサイルによる攻撃に対処するような高度な訓練も実施した。日本を威圧する意図があったのは明らかだ。 中国からの事前通告は訓練の直前で、船舶の航行にも影響を及ぼす可能性があった。危険な行動である。 看過できないのは、日本が外交ルートで懸念を伝えたのに対し、中国が「沖ノ鳥島は岩礁であり、EEZを設定できない」などと主張したことだ。訓練は、島に対する日本の主権を否定するための示威行動でもあったようだ。 沖ノ鳥島周辺の海底には、豊富な鉱物資源が存在するとされる。海洋権益を守る必要があるが、広大な太平洋を監視する自衛隊の能力は十分とは言えない。レーダー


時の焦点<海外> 対イラン戦争
米、全面攻勢の方向か 米・イラン戦争は2026年2月28日の開戦以来、およそ150日が経過した。このうち、実際に爆撃による攻撃の応酬が展開されたのは実質的に40日間。あとの110日間は停戦・和平交渉で、この間にミサイル発射やドローンによる攻撃もあったが、大部分は交渉に費やされた。 トランプ大統領の政治戦略は、与党・共和党が両院で多数を占める現状の維持だ。11月の中間選挙で民主党が下院で多数派になれば、政権のイニシアチブは“化石化”され、自身の「弾劾」も確実となる。 そのため、同大統領のポイントは、(1)イランは核兵器製造能力を持たない(2)湾岸全域にミサイルを発射する能力を持たない(3)ホルムズ海峡を封鎖する能力を持たない――を確認することだった。 しかし、交渉を重ねるうち、イラン側の引き延ばし戦略も明確に…。 ―この戦争を長引かせ、ミサイル発射で交渉を何度も中断させ、米の報復を乗り切れば、米中間選挙まで持ちこたえられる。 ―そうなれば、米民主党が下院で優位を奪還し、議会はトランプ政権のイラン戦争継続に必要な資金を配分しないだろう。もっと重要なの


時の焦点<国内> 日・ASEAN
対中抑止へ連携深めたい 東・南シナ海での中国の威圧的な行動が、アジアの安全を脅かしているのは明らかだ。高市内閣を「新型軍国主義」と批判しているのも的外れで、到底看過できない。日本は、米国やアジアの同志国などと連携を深め、中国に対処する必要がある。 東南アジア諸国連合(ASEAN)関連外相会議がマニラで開かれ、日本や米国、中国などの関係国も出席した。 一連の会議では、強引な海洋進出を続ける中国に対し、日米両国やフィリピンなどから懸念が示された。 中国は今回の会議直前にも、スプラトリー(南沙)諸島で比軍と衝突し、比側に負傷者が出た。ルビオ米国務長官が中国の王毅外相に冷静な対応を求めたのは当然だ。 南シナ海のほぼ全域に権益が及ぶなどとする中国の主張は、2016年にオランダ・ハーグの仲裁裁判所が退けている。 日米比などの14カ国は今月、判決から10年となることを踏まえ、判決を支持する共同声明を発表した。だが、中国はこれまで通り、判決を「紙くず」と呼び、受け入れを拒否している。 南シナ海は重要な海上交通路(シーレーン)だ。偶発的な衝突が起きて自由な航行に障


時の焦点<海外> 北朝鮮の核
宙に浮く非核化の道 イラン戦争が世界の耳目を集める陰で、北朝鮮による核戦力増強が着々と進んでいる。「イランの核開発阻止」だけに焦点があたり「北朝鮮の核開発阻止」が声高に叫ばれない状況は、看過するにはあまりに危険すぎるのではないか。 6月の主要7カ国首脳会議(G7サミット)の首脳声明は北朝鮮の核に「深い懸念」を表明し、北朝鮮に対して「完全な非核化」へのコミットメントを求めた。 だが米国はイラン戦争の後始末に精一杯で、欧州はウクライナ情勢とロシアの脅威への対応に神経を注がざるを得ない。かつては米中露日韓に北朝鮮を加えた6カ国協議が外交解決を目指したが、北朝鮮の核実験や弾道ミサイル発射を受けて20年近くも休眠状態にある。言葉だけ「非核化」を求めたところで担保する枠組みもないのが現実だ。 憂慮すべきは、周辺大国に北朝鮮の非核化実現への強い意欲が見られないことである。 中国の習近平国家主席がG7サミットの直前に北朝鮮を訪問。金正恩朝鮮労働党総書記との会談発表に「非核化」への言及はなく、黙認したかのような印象を与えた。ロシアは北朝鮮と事実上の同盟条約を結び、


時の焦点<国内> 日印首脳会談
相互協力さらに深めよ 新興・途上国の盟主として台頭するインドとの関係を深めていくことは、日本が提唱する「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を実現する上でも重要だ。 日印の相互協力をさらに深め、地域の安定につなげていく必要がある。 高市早苗首相がニューデリーを訪問し、インドのモディ首相と約1時間半、会談した。 会談後の共同記者発表で、高市首相は「(インドは)信頼のパートナー。隣人関係を新たな高みへと引き上げていく」と語り、モディ首相は「両国の取り組みがインド太平洋地域全体の平和、安定、そして進歩への道を切り開く」と応じた。 高市首相は、日本企業が総額2兆円の事業を実施する考えを表明した。環境負荷が小さいバイオガスのプラント1000基を整備する枠組みの創設などが含まれている。 両国は、昨年8月のモディ首相訪日時、10年間で10兆円というインドへの投資目標を定めた。高市氏は今回の訪印に際しても約80企業を同行させるなど、積極的な投資姿勢をアピールした。 14億超の人口を擁し、経済成長も著しいインドは、日本にとって魅力的な市場だ。IT技術の水準も高


時の焦点<海外> 交渉パターン
米「合意」、イラン否定 米・イラン交渉を眺めていると、確たるパターンの存在に気付く。米側が「合意」と発表すると、イランは否定。あまりに頻繁なので、米国が意図的にミスリードしているのか、抵抗を続ければ強さの証明になるとイランが勘違いしているのか。 最新例その1―。バンス米副大統領は6月24日、プレス向け声明で「米国は、交渉に進展があればイランの凍結資産の一部解除に同意した。資金は米農産物の購入に充てられる」と確認。トランプ大統領が23日、自身のSNSで、解除された資金は米国産物資の購入に使用されると発表していた。 しかし、イランのガリバフ国会議長とヘンマティー中央銀行総裁は23日、直ちに「イランは米国産品を購入する義務はない」と合意を否定し、トランプ氏に反論した。 その2―。両国は21日にスイスで交渉を開始。しかし、イランはトランプ氏が同国を威嚇したとして協議を離脱したとの一部報道。バンス氏はフェイクニュースと説明したが、イラン代表団は自国メディアに「威嚇は覚書の第1項目に違反」とし、協議離脱をPR。 その3―。「イランは核査察の受け入れに同意した


時の焦点<国内> 国会空転
重要法案を蔑ろにするな 国会が空転していたら、象徴天皇制の根本に関わる法改正や、民主主義の土台に影響を与える議員定数の削減案など、重要法案の審議がないがしろにされかねない。与野党は、国民の負託に応えることを最優先に事態を打開すべきだ。 7月17日の今国会の会期末に向けて、与野党の駆け引きが激化している。与党は皇室典範改正案のほか、衆院議員定数削減法案、副首都構想の関連法案を成立させたい考えだが、野党は定数削減や副首都構想に反発し、審議を拒否した。 いずれの案件も丁寧な審議が欠かせない。十分な審議時間を確保するため、国会を延長するのは一案だろう。 政府・与党が最も重視しているのは、皇室典範改正案だ。改正案は、戦後に皇籍を離れた旧11宮家の男系子孫である一般男性を皇族の養子に迎えて皇族とする仕組みと、女性皇族が結婚後も皇室に残る制度が柱だ。ただ、いずれも問題を抱えている。 改正案では、養子本人には皇位継承資格を認めない一方、養子が皇族となった後に生まれた子が男子なら継承資格を持つ、という規定を設けた。政府内では旧宮家の男性が皇族の養子となった後、一般


時の焦点<国内> 宇宙政策と防衛
監視機能を強化せよ 航空自衛隊を航空宇宙自衛隊に改編するための改正防衛省設置法が成立した。 防衛省は速やかに新組織を発足させる。自衛隊の名称が変更されるのは、1954年の陸海空3自衛隊の発足以来、初めてのことだ。 2020年の発足当初約20人だった宇宙領域の専門部隊の名称は、今年度中に「宇宙作戦集団」となり、880人に増員される。 空自が任務を宇宙に広げるのは、中国やロシアが他国の宇宙システムを妨害する「キラー衛星」などの能力を高めているためだ。キラー衛星は相手国の衛星をロボットアームで妨害したり、電磁波などで無力化したりする。 中露両国はキラー衛星の開発を進め、衛星同士を近づける実験を繰り返している。中露はまた、それぞれ自国の衛星を他国のものに見立ててミサイルで破壊する実験を行い、攻撃の有効性を確認したようだ。 日本の衛星が攻撃されれば、国民生活の機能が損なわれるだけでなく、衛星による監視・偵察を通じた自国の防衛もおぼつかなくなる。キラー衛星などへの抑止力を高めることは不可欠だ。 自衛隊は23年から、宇宙領域把握(SDA)と呼ばれる任務を実施し


時の焦点<海外> 米イラン合意
中東「Gゼロ」の世界 今年初め、国際政治学者のイアン・ブレマー氏率いる「ユーラシア・グループ」が世界10大リスクのトップに掲げたのは「米国の政治革命」だった。トランプ米政権による制度や秩序の破壊のことである。一年の半ばを過ぎ、それは想定を超えて世界中を侵食しつつあるように思える。 冷戦期の米露のような国際秩序を担う中核国家の不在を「Gゼロ」の世界と呼ぶブレマー氏は、トランプ米大統領のイラン攻撃が「中東を明白にGゼロへと突入させた。残りの世界も同じ道をたどるだろう」と予測する。 米イラン合意を受け、6月17日付の外交問題評議会ウェブサイトに寄稿し、米国がこれまで中東秩序で果たしてきた役割として (1)石油の安定的な流通 (2)イランと中国の影響力排除 (3)地域安保における欠かせない仲介者 の3つを挙げた上で、イラン戦争はそれらの破壊を加速させたと述べた。 同氏の見立て通りGゼロは現実化しつつあり、今の世界には国際的な安全保障を主導する国家も枠組みも見当たらない。米イラン合意と同じタイミングで開かれたG7サミット(主要7カ国首脳会議)は首脳宣言を出


時の焦点<国内> G7サミット
「成果」の実現を主導せよ 米国とイランが戦闘終結で合意した。多くの犠牲者を出し、世界経済を混乱させた戦闘を、ひとまず終わらせることを両国首脳が文書で確認した意義は大きい。今後は、核開発問題などの最終合意を締結できるかどうかに焦点が移る。エネルギーを中東に依存する日本は、中東の安定に向けて最終合意の実現を後押ししていきたい。 一方、仏東部エビアンで開催された先進7カ国首脳会議(G7サミット)では、昨年同様、包括的な首脳宣言の発出は見送られたものの、ウクライナ支援やエネルギーの安定供給などさまざまな分野で協力していく方針を各国首脳が確認した。 例えば、地域情勢に関する共同声明では、ウクライナへの「揺るぎない支持」を表明し、ロシアへの経済制裁を強化する方針が盛り込まれた。ウクライナに防空システムや長距離ミサイルを継続して供給していくことも明記された。 昨年のサミットでは、ウクライナ情勢に関する声明を出せなかった。当時、トランプ米大統領がロシア寄りの姿勢を示していたことが影響した。今回、あらためてウクライナを支える点でG7が足並みをそろえたことは評価でき


時の焦点<海外> 停戦60日間延長
米、「検証」を最重要視 トランプ米大統領は6月14日、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で、「イランとのディール(取引)が完了した」と発表した。 米軍によるイラン港湾の海上封鎖は既に解除され、ホルムズ海峡も開放されたと述べた上、「世界の船舶よ、エンジンを始動せよ、石油の供給だ!」と、いつものトランプ流儀で付け加えた。結果はすぐに現れた。石油の価格は下落し、株価は上昇した。 しかし、何より重要なのは、イランの核兵器保有は永久に交渉対象にはならないという実際の枠組みが初めて存在する点だろう。 現在はまだ覚書の形でまとめられており、米・イランの停戦を60日間延長し、その間に両国が包括的な恒久的合意を目指す。合意の正式調印は19日にスイス・ジュネーブで予定されていたが、延期された。 イランのガリババディ外務次官は、軍事作戦を14日から停止したことを確認し、同時に(1)米が合意に違反すれば、イランも対抗措置を取る(2)交渉の次の局面はイランの凍結資産の扱い次第――などの姿勢を明確にした。 はっきり言って、イランは今回の合意の限度を試そうとしている。それ
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