時の焦点<国内> 防衛費概算要求

指揮統制にAI導入
無人機(ドローン)やAI(人工知能)など新たな技術を取得し、事態の長期化にも対応できなければ、日本の平和と安全を守ることは難しくなっている。「新しい戦い方」に向けた防衛予算が求められている。
防衛省が2027年度予算の概算要求で、過去最大となる8兆9000億円を計上した。政府は22年末の防衛力整備計画で、23年度から5年間の防衛費の総額を43兆円とすることを決めた。今回の概算要求では、43兆円の達成に必要な額が計上された。
高市政権は、計画を含む「安保3文書」を年内に改定する。この改定を前提に、概算要求には具体的な金額を明示しない事項要求の項目が多く並んだ。
防衛費は、年末の予算編成の段階では概算要求の8兆9000億円を上回ることが想定される。精緻な査定を重ね、真に必要な内容とすることが求められるだろう。
米軍再編費などを含む防衛関係費は国内総生産比で2%に達したが、米国は同盟国に防衛費のさらなる増額を求めている。
予算編成に当たっては、日本の防衛に必要な観点で吟味しなければならない。赤字国債に頼らない安定財源を示すことも大切だ。
政府は今年7月、5年以内に防衛力を変革する方針を掲げた。
概算要求では、変革の柱として、自衛隊の指揮統制にAIを導入することが明記された。世界最先端の外国製AIで膨大なデータを分析し、反撃能力の実施やミサイル防衛などを判断する。
国内AIの開発も進め、将来的には外国産との連携を目指す。
米軍はすでに、イラン攻撃での意思決定などにAIを使用している。米軍との判断速度に差が生じれば、連携に混乱を来し、日米同盟の抑止力が低下しかねない。
AIの導入を急がねばならないが、一方で意思決定をAIに依存するようなことがあってはならない。
外国製のAI利用を巡っては、日本の機密情報を読み込ませることへの慎重な意見もある。複数社のAIを採用するなどリスクを低減しつつ、段階的に国産AIに置き換える戦略が求められる。
4年を超えるウクライナ戦争は、物資や装備を生産し続けることの重要性を示した。
概算要求では、継戦能力の維持を目的に、弾薬などを製造する施設の取得や建設のための費用を計上した。運営を民間企業に委託する公設民営方式を取り入れる方針だ。
撤退する事業者が相次ぐ防衛産業の基盤強化も図る。事業を統合する中小企業や、防衛部門を再編する事業者に政府が出資する制度を新設するという。
ただ、企業再編のみでは技術力は育たず、出資も単なる延命策になりかねない。政府は装備品の輸出を進めて市場を拡大し、防衛産業の利益が継続する構造を作っていく必要がある。
霜月 荘六(政治評論家)






