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ブックレビュー


60分でわかる! フィジカルAI最前線 頼嘉満 著
生成AIの進化がデジタル領域を越え、現実世界の物理的課題へと踏み込む「フィジカルAI」――。 本書は、その最前線を短時間で理解できるよう、技術の本質と社会実装の現在地をわかりやすく整理した入門書である。 ロボティクスやセンサー、エッジデバイスがAIと結びつくことで、産業・物流・医療・インフラ・宇宙・防衛など多様な領域で自律的な判断と行動が可能になりつつある。こうした変化を支える基盤技術や研究動向について、図解を交えながらコンパクトに解説。 モデルの軽量化、リアルタイム推論、シミュレーション技術、エッジAIの役割など、現場で求められる要素も取り上げている。 さらに、スマートファクトリー、災害対応ドローン、移動ロボットなど、実際の活用事例を通じてフィジカルAIがもたらすインパクトを具体的に描写している。AIが「考える」だけでなく「動く」ことで広がる新たな可能性を60分でつかめる構成となっている。 最新のトレンド、そして生成AIの未来を知る必読書だ。 (技術評論社刊、1650円)


人間が失いかけた ゴリラ・イルカの 仲間を信じる力 山極寿一、田島木綿子 著
高い知性を持つゴリラやイルカは、多様なコミュニケーションを駆使し、群れや家族とともに高度な社会を築いている。本書は、こうした生物の専門家による対談を通じて、疲弊した現代人が失いかけている人間本来の関係性や、豊かな社会を再構築するためのヒントを探る。 SNSの普及や人工知能(AI)の発達により、効率的で多様なコミュニケーションが可能になった一方、常に他者と比較され、相互に監視されているような息苦しさを覚える場面も増えた。 その半面、自然界では、ゴリラが互いの顔を見て感情を読み取り、無用な争いを避ける。イルカやシャチは、経験豊富なメスを中心に統率された狩りを行い、ときに凄惨(せいさん)な手段も含めて子どもに伝え、自立へ導く。 霊長類学者の山極氏は、言葉やテクノロジーに依存する現代社会では勝ち負けを競う構造が強まり、動物たちが示すような「身体的コミュニケーション」がおろそかになっていると指摘する。 野生動物の生態や社会の営みから、現代人が忘れつつある関係性のあり方やコミュニティー再生の示唆を描き出す。 (青春出版社刊、1386円)


葬式坊主なむなむ日記 松谷真純 著
葬式坊主なむなむ日記 「派遣僧侶業界にとどまらず、仏教界や宗門の内情にも触れながら、奇妙でおかしなこの世界の全貌を明らかにしたい」――。 檀家(だんか)の減少による寺院経営の厳しさから、還暦を過ぎて派遣会社に登録し、僧侶として葬儀現場へ赴くことになった著者。日記形式でまとめられた本書には、派遣僧侶として各地の葬儀や法要に携わる日々がつづられている。 檀家制度の変化や少子高齢化、価値観の多様化などにより、寺院を取り巻く環境は大きく変わり、家族葬や直葬の増加、墓じまいの広がりなど、従来の葬送の在り方も様変わりしている。 読経や戒名、法要といった仏教儀礼の実情に加え、遺族とのやり取りや僧侶同士の人間関係など、一般には知る機会の少ない世界についてユーモアを交えながら紹介する。各話には本文の背景や関連事項を補足する解説も添えられている。 軽妙な語り口ながら、地方寺院の現状や宗教の役割、人生の最終段階における「弔い」の意味を考えさせられる。葬儀の現場から社会の変化を見つめた一冊だ。 (発行:三五館シンシャ、発売:フォレスト出版刊、1540円)


成長する防衛産業 基盤強化の施策と課題 土本英樹 著
成長する防衛産業 基盤強化の施策と課題 防衛産業が長年抱えてきた構造的課題を克服し、「青息吐息」から「成長産業」へと転じつつある現在の状況を、政策的・制度的観点から体系的に読み解く。元防衛装備庁長官の著者は「戦略三文書」の調整や防衛生産基盤強化法の策定に深く関わった人物であり、現場と政策の双方を知る立場から、産業基盤強化の実像を立体的に描き出している。 本書はまず、日本の防衛産業が直面してきた構造的な弱点を整理する。企業の参入障壁、利益率の低さ、長期開発に伴う資金負担、国際共同開発への対応力不足など、従来から指摘されてきた課題を網羅的に示し、なぜ産業が疲弊してきたのかを明確にする。 「戦略三文書」に盛り込まれた産業支援策にも言及。政府が「防衛産業を守る」から「成長させる」段階へと政策を転換した背景を、国際情勢や技術革新の潮流とともに解説した。 人材確保の難しさ、利益率算定方式の見直し、装備移転の制度的課題、スタートアップの参入促進など、今後の防衛産業が直面する論点も幅広く取り上げる。 (時事通信社刊、3080円)


日本人とは何か 覚張隆史 著
日本人とは何か 「日本人の起源はどこから来たのか」「私たちは何者なのか」――。アフリカで誕生した人類の祖先がいかにして日本列島へ到達したのかに始まり、縄文人の行方、弥生人の成立、さらに近年その存在が示された「第三の集団」の正体まで、700万年に及ぶ人類史をたどる。 人類学やゲノム(DNA)研究の世界では約30年間、縄文人と大陸から渡来した弥生人が混合して日本列島人を形成したとする「二重構造モデル」が定説とされてきた。 だが、2021年、金沢大学で考古学を研究する著者は国際共同研究チームとともに、この定説を拡張した「日本列島人の三重構造モデル」を国際学術誌で初めて公表し、注目を集めた。 三重構造モデルでは、従来の縄文人、弥生時代の渡来人に加え、古墳時代以降に大陸から流入した「第三の集団」の存在が示され、古代日本人のゲノム研究に新たな転換点をもたらした。 「日本人」とは何者なのか。科学的な視点から起源をたどることで、その出自は想像以上に複雑で、同時にきわめて興味深い姿を浮かび上がらせる。 (SBクリエイティブ刊、1100円)


江戸から見直す民主主義 田中優子、関 良基、橋本真吾 著
江戸から見直す民主主義 「日本人の起源はどこから来たのか」「私たちは何者なのか」――。アフリカで誕生した人類の祖先がいかにして日本列島へ到達したのかに始まり、縄文人の行方、弥生人の成立、さらに近年その存在が示された「第三の集団」の正体まで、700万年に及ぶ人類史をたどる。 人類学やゲノム(DNA)研究の世界では約30年間、縄文人と大陸から渡来した弥生人が混合して日本列島人を形成したとする「二重構造モデル」が定説とされてきた。 だが、2021年、金沢大学で考古学を研究する著者は国際共同研究チームとともに、この定説を拡張した「日本列島人の三重構造モデル」を国際学術誌で初めて公表し、注目を集めた。 三重構造モデルでは、従来の縄文人、弥生時代の渡来人に加え、古墳時代以降に大陸から流入した「第三の集団」の存在が示され、古代日本人のゲノム研究に新たな転換点をもたらした。 「日本人」とは何者なのか。科学的な視点から起源をたどることで、その出自は想像以上に複雑で、同時にきわめて興味深い姿を浮かび上がらせる。 (SBクリエイティブ刊、1100円)


英語史で解く英文法の謎 なぜ「3単現のs」をつけるのか 堀田隆一 著
英語史で解く英文法の謎 なぜ「3単現のs」をつけるのか 英語の文法には、学校で学ぶ規則だけでは説明しきれない「なぜそうなるのか」という疑問が少なくない。本書は、こうした素朴な疑問に対し、英語の歴史的変遷を手がかりに解説する。古英語から中英語、近代英語へと姿を変えてきた過程をたどりながら、現在の英文法がどのように形づくられたのかを丁寧に示す。 たとえば「3単現のs」や不規則動詞の形、語順の固定化など、学習者がつまずきやすい項目を取り上げ、英文法の素朴な「なぜ」について歴史的背景とその面白さを導いてくれる。 文法を「暗記すべき規則」ではなく「言語の進化の結果」として捉えることで、英語の仕組みが立体的に見えてくるのが本書の魅力だ。 著者は英語史を専門とし、最新の研究成果も踏まえながら、学習者にも読みやすい平易な語り口でまとめている。英文法の背景を知ることで、英語を学び直すきっかけにもなるだろう。 (NHK出版刊、1078円)


ドローンを仕事にする 未経験から「空のプロ」へ。30組の実践 名倉真悟 著
ドローンを仕事にする 未経験から「空のプロ」へ。30組の実践 ドローンを「趣味」から「職業」へ発展させたいビギナーに向けた一冊だ。 戦闘機と輸送機のパイロットとして航空自衛隊で勤務した2人が、ドローンに携わる第2のキャリアや現場での経験を語るほか、ドローンビジネススクール修了生30組の試行錯誤と挑戦のエピソードを紹介。 ビジネス運用に必要な技術、資格、機材選び、事業化のポイントまで、実践的にまとめた内容となっている。 測量・点検・空撮・エンタメ・農業・警備・災害対応などの多岐にわたる分野において、法改正による規制緩和や法整備の充実により急速に広がるドローン産業の現場が丁寧に記されている。 ドローンの黎明(れいめい)期から関わってきた著者自身の豊富な経験をもとに、仕事のつくり方や案件獲得のコツ、今後求められる安全管理やチーム運営まで深く踏み込んで紹介している。 本書は、航空法改正の経緯を踏まえて日本政府が掲げる「空の産業革命」という国家戦略を理解したい読者にも最適だ。さらに将来を見据え、ドローンを自らの武器として活用し、望むフィールドでキャリアを築


The Speech 3分で人の心を動かす話し方 小田 全宏、永松茂久 著
The Speech 3分で人の心を動かす話し方 人前で話すことに苦手意識を持つ人は少なくない。本書は、短い時間でも相手に思いを届けるための要点を、具体例を交えて示した一冊だ。 著者の永松氏は『人は話し方が9割』で知られ、小田氏は長年にわたりスピーチ教育に携わってきた。 2人の経験をもとに、話の構成、聞き手との共鳴、声や視線の使い方など、スピーチの基本から実践までを分かりやすく解説。日常の会話や職場での報告などで応用できる工夫が盛り込まれている。 特に、テクニックよりも「誰に何を伝えたいのか」という思いを軸に据える姿勢を重視。3分という短い時間でも、言葉に心が宿れば相手の心は動くと説き、話し手が自分の言葉を整える大切さを示している。 スピーチに自信のない人はもちろん、より伝わる話し方を身につけたい人にも役立つ、実践的な入門書だ。日々のコミュニケーションを見直すきっかけにもなる。 (きずな出版刊、2200円)


中国人は日本で 何をしているのか 中島恵 著
中国人は日本で 何をしているのか 中国人は日本で何をしているのか――。ありふれた問いのようでいて、実は私たちが十分に理解してこなかったテーマに、著者は真正面から切り込む。 取材対象は、中国の企業経営者、留学生、技能実習生、富裕層、観光客、そして日本に根を下ろした家族まで多岐にわたる。彼らの素顔に迫るため、何度も足を運び、丁寧に耳を傾ける。その積み重ねが本書の最大の魅力だ。 インタビューしてきた人たちの具体的な証言を通じて、在日中国人は決して一括りにできないことが浮き彫りになる。彼らの中には、ビジネスの成功を夢見る若者がいれば、日本社会の中で静かに暮らす人もいる。時の政治情勢の影響を受けつつも、日常の悩みは私たち日本人と何ら変わらない。 解説は平易で、複雑な背景を抱えるテーマにも関わらず、読者を置き去りにしない。中国社会の変化、日本との距離感、移民のリアル――それらが一本の線でつながり、読み進めるほど視界が開けていく。 日本で暮らす中国人の姿を知ることは、現代日本を理解することに直結する。本書は、その入口として最適の一冊である。 (日経BP刊、99


世界を解き明かす 地政学 田中孝幸 著
世界を解き明かす 地政学 戦争が外交の手段ならば、国益にならない戦闘はしないはずだ。ところが、経済合理性に欠けた戦争は起きる。そもそも損益分岐点できっぱりと終戦できたためしがない。 政治家や軍人がコストパフォーマンスをはじいて開戦を決めているかのように見えても、意思決定というものはそんな単純ではない。 家族も会社もサークルも政治も打算と愛憎を小出しにしながらねちっこい交渉を重ねて合意がなされる。 相手の立場をおもんぱかること。文字通り「立地」から考えるのが地政学だ。 中国・ロシア艦がなぜ日本近海をうろつくのか。モンゴルはなぜ両国の板挟みに耐えられるのか。朝鮮やクリミアなどの半島が持つ宿命。広大な平地・欧州を守るために欧州連合(EU)が取る大立ち回り――。 そもそも、国際連合の正式名称は「United Nations(連合国)」。追求するのは連合国の利益であって、世界平和ではない。 いわば無政府状態にある国際社会はさまざまなパワーバランスで動いている。地政学はその機微を読み解く大前提だ。 (日経BP刊、1980円)


ことばの壁 この日本語、この言葉。 生活情報研究会「ことば探索研究G」編著
ことばの壁 この日本語、この言葉。 私たちが普段何気なく使っている日本語。中には時間の経過によって乱れてしまった言葉や「死語」となり使われなくなった言葉も多い。 本書では、そんな「正しいつもりで使われている日本語」「知っているようで知らない日本語」「普段使われている言葉の知られざる語源」などを誤用の例や解説と共に紹介している。 著者は、編集者を中心にライター、塾講師、ビジネスパーソン、現役大学生、主婦など、さまざまな経歴をもつメンバーによって構成された生活情報研究会。その中でも日本語や言葉に一家言持ったメンバーが「ことば探索研究G」として集結し、元NHKアナウンサー・村上信夫氏の協力のもとに執筆している。 「濡れ手に泡」「かけがいのない人」「藁にもすがる思い」――。すべて誤用の例だが、気が付かずに使ってしまってはいないだろうか。 「厚顔無知」「短刀直入」「時期早尚」――。よく見かける四字熟語だが、どこか違和感を覚えないだろうか。「へこたれる」「几帳面」「さばを読む」の語源とは――。 知っているようで知らなかった言葉たちに改めて触れることで、日本語


地獄の中国 最後の皇帝・習近平の黄昏 宮崎正弘 著
地獄の中国 最後の皇帝・習近平の黄昏 中国情勢の分析で知られる評論家である著者が、習近平政権下の中国の現状と行方を読み解いた一冊である。経済減速、社会統制の強化、外交的孤立の兆候など、近年顕在化した課題を多角的に取り上げ、国内資料や国際報道をもとに統治構造の変質を描く。


精神科医おどおど日記 駒木爽 著
精神科医おどおど日記 かつて外科医を志していた著者が、外科での自信喪失と同期の医者がうつ病を発症したのをきっかけに精神科医の道へ進むこととなった。こうした経験を持つ著者が精神科で担当した患者との間で行った数々のドタバタ劇をリアルにつづった。 他の診療科や職業では経験し得ない数々の出来事を医師の守秘義務である「業務上知り得た情報を口外してはならない」という原則を守りつつ、生々しい医療現場を伝えている。 登場人物の名前には、それぞれの容姿や性格が自然と想像できるような工夫が施されており、読み手が情景を思い描きやすい。 統合失調症、認知症、アルコール依存症、双極性障害、うつ病など、精神科医としての視点だけでなく、一人の人間として患者の方々にどう接するか、また病院スタッフとどう向き合うか。平時から極限の状況へ変化していく様子を、専門医の目線で丁寧に表現している。 著者は、この本を手にされた方に、「本書を医学書の代わりにしないように」と語り、不安がある場合は病院を受診して欲しいと呼び掛けている。 (発売:フォレスト出版/発行:三五館シンシャ刊、1540円)


ポストトゥルース時代の哲学 ニーチェ『愉しい学問』を読み直す 竹内綱史 著
ポストトゥルース時代の哲学 ニーチェ『愉しい学問』を読み直す 現代社会は真偽の境界が曖昧になり、SNSではフェイクニュースや偽情報が瞬時に拡散する。こうした「真実なき世界」をどう生きるかを問い、「いま読む! 名著」シリーズとして、ニーチェの『愉しい学問』を現代的に読み直す試みとなっている。 本書には「謎に囲まれ、愉しく、生きる」と書かれており、著者は直面する情報の混沌を「謎」と捉え、そこに秩序や唯一の真実を求める態度こそが思考を硬直させると説く。ニーチェが提示した「生への肯定」を手がかりに、むしろ不確実性の中で柔軟に世界を受け止める姿勢を示す。 フェイクニュースを単なる社会問題として捉えるのではなく、なぜ人は偽情報に惹かれるのか、真実への欲望はどこから来るのか、といった哲学的な問いへと踏み込む。情報の洪水に疲弊しがちな時代の中で、「真実を捨てる」ことが思考停止ではなく、新たな自由をもたらすという視点は示唆に富む。 ポストトゥルースの混乱を嘆くのではなく「その世界をどう愉しく生きるのか」。本書は、現代人の不安に静かに寄り添う哲学的入門書といえる。
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