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ブックレビュー


さきがけ女性自衛官 はじめて物語 あまのすみ 著
さきがけ女性自衛官 はじめて物語 舞台は1980年代、昭和の自衛隊。高校卒業後に入隊した著者の体験をもとに描かれたエッセーで、フィクション漫画としてまとめられている。女性自衛官(WAC)が「婦人自衛官」と呼ばれていた時代の空気や、当時の雰囲気が伝わってくる。 新隊員が着隊から入隊式までに覚えること、こなすことは今も昔も変わらない。名前の縫い付けやアイロン掛け、ベッドメーキングに始まり、らっぱで起床し基本教練や座学を重ね、「自衛官としての顔」を形づくっていく。 同年代の女性たちが大学生活や流行の「ハマトラ」ファッションを楽しんでいた時代、著者は男性隊員と同じ訓練に挑み、自衛隊体操の反復練習や匍匐前進、走り込みに汗を流した。 丸6年勤め上げて退官したが、時代が変わっても支えになるのは同期の絆。40年たった今も交流が続くという著者のエピソードには心が温まる。自衛隊を知らない人にも手に取りやすく、WACを志す人や、あの時代を知る世代には当時の流行を思い起こし、自分を重ね合わせて読む楽しさがある一冊だ。 (KADOKAWA刊、1540円)


ソニー神話を壊した男 出井伸之が創った未来 児玉博 著
ソニー神話を壊した男 出井伸之が創った未来 「人を遺すは上とする」とは、かつての名将・野村克也氏が好んだ言葉である。 経済界において後進の育成に尽力したのが元ソニー社長・出井伸之氏の知られざる一面である。 ソニー時代は、輝かしい創業者世代(井深大、盛田昭夫、大賀典雄ら)に続き、「57歳の若さで“ヒラ”の取締役から上席14人を飛び越えての初のサラリーマン社長の誕生」は1995年当時、世間では驚きを持って受け止められた。 これまで革新的な製品(トランジスタラジオ、ウォークマン、CDなど)をカリスマ経営者(創業者世代ら)によって編み出されてきたソニーにとって、出井が示した会社の方向性は「インターネット、デジタル技術、ネットワーク」。 当時、国内製造業のほとんどがまだ「エレクトロニクス一辺倒」だった時代。「ソニー神話」とまでもてはやされたソニーの打ち出した大転換策を前に、出井への風当たりが厳しかったのは言うまでもない。 その後のソニーの躍進ぶりは論を俟たないが、出井がまいた種は今や日本の起業家たちの活躍にも見て取れる。 (小学館刊、2090円)


脳と体を整える 体内時計のトリセツ 遠藤求 著
脳と体を整える 体内時計のトリセツ 「人を遺すは上とする」とは、かつての名将・野村克也氏が好んだ言葉である。 誰もが抱く素朴な疑問を起点に、人間の体内時計の働きを丁寧に解説したのが本書である。著者は、脳を「指揮者」、体の各器官を「演奏者」と位置付け、両者の調和が保たれたときに心身が最良の状態となると説く。 この巧みな比喩によって、体内時計という抽象的な概念が一気に身近なものになる。睡眠リズムの乱れや生活習慣の偏りが、指揮者と演奏者の足並みをどう崩すのか。逆に、整った生活がどのように体のハーモニーを生むのか、丁寧に紹介している。 さらに本書は、光の浴び方や食事のタイミングといった日常の些細(ささい)な行動が変化することで、体内時計にどれほど影響するのかを具体的に示す。自分の体が刻む「時間」を理解することで、生活の質が静かに変わっていく過程が実感できる。 科学的知見を基盤としながらも、語り口は軽やかで読みやすい。不安をあおることなく、日常を少し整えるためのヒントが自然と心に入ってくる。 体内時計の「トリセツ」として、幅広い読者に薦めたい一冊だ。 (築


総力戦研究所と海軍第一委員会 工藤美知尋 著
総力戦研究所と海軍第一委員会 1941年夏、総力戦研究所は机上演習で「長期化したら負ける」と結論づけた。「その警告を軍部が無視した」という歴史は教訓として分かりやすい。 ところが本書は、政治の中枢になかった同所が軍を拘束できなかったことは役所の構造上「当然」と指摘する。 では、中枢で開戦を導いたのは――。 軍令部第一委員会の報告書「現情勢下ニ於テ帝国海軍ノ執ルベキ態度」では、日米の国力差と長期戦の不利を認めながら「現状打開のためにどうすべきか」を主眼に、開戦ありきの短期決戦を検討していた。 勝てなくても戦わなければ状況が悪くなるからとの理由で、「開戦は合理的」と判断していたのだ。 分析と政治の区別がなくなり、前提が固着する中で、組織の決定や暗黙の了解が正当化された歴史をつまびらかにする。 開戦の経緯を「軍部の暴走」「精神論」と一蹴せず、合意形成の構造にあった問題に迫る。 (並木書房刊、1980円)


哲学を「人生の軸」にする本 富増章成 著
哲学を「人生の軸」にする本 AI(人工知能)技術が急速に進化し、AIが単なる操作対象ではなく、悩みや疑問を気軽に相談できる存在へと変わりつつある。 便利さが増す一方で、私たちの思考そのものがAIに委ねられかねない時代に、改めて注目されているのが哲学だ。 予備校講師として教壇に立ちながら哲学研究を続ける著者が、過去の偉人たちの思想を手がかりに、人間が人間らしく生きるための「考える力」を探る入門書である。 「世界はなぜ存在するのか」「何のために生きているのか」「他人の意見に流されてしまう」「他人の目が気になる」――。人生で誰もが抱える問いに対し、ソクラテス、デカルト、釈迦はどのような答えを示したのか。 本書は、その思考の軌跡をたどりながら、自分自身の心で“哲学の旅”を追体験することを促す。 著者は、哲学者の説をうのみにするのではなく、一歩ずつ思考の道筋を踏みしめることが重要だと説く。 難解になりがちな哲学を日常の中で実践し、人生の軸として生かすための一冊だ。 (青春出版社刊、2200円)


軍用ドローンの攻撃 ダリル・ジェンキンス、 デビッド・クライン 著、川岸卓司 訳
軍用ドローンの攻撃 「軍用ドローンの教科書」シリーズを締めくくる第5弾。ドローン戦の全体像を体系的に理解し、現代戦の変化を読み解くための実践的な視座を提供する完結編となっている。 本書は、軍用ドローンに搭載される致死性・非致死性兵器システムを体系的に整理し、その技術的基盤や作動原理、戦術・戦略上の意味を多角的に解説する。訳者は陸上自衛隊8偵察隊長で、現場の知見を踏まえた視点が随所に生かされている。 「兵器統合と戦争変革」をテーマに、ドローンが戦場にもたらした構造的変化を兵器システムの観点から描く。ミサイル、精密誘導兵器、小型化弾薬、電子戦装置、指向性エネルギー兵器など多様な兵器群がどのように統合され、火力・精度・持続力の均衡を再編しているのかを具体的事例と共に示す。 さらに、ドローンが単なる兵器搭載プラットホームを超え、情報収集・指揮統制・攻撃を一体化する「統合システム」として機能する点にも注目。技術革新が戦術・戦略にどう結びつき、運用思想を変えていくのかを立体的に描き出す。 (芙蓉書房出版刊、2750円)


この国は災害から 国民を守れるのか 濱口和久 著
この国は災害から 国民を守れるのか 地震、豪雨、噴火と災害が激甚化する日本で、国や自治体は国民を守り切れるのか――。本書は18世紀のリスボン地震が国家の命運を変えた歴史を踏まえ、首都直下地震や南海トラフ巨大地震といった「国難」級災害の切迫性を正面から直視する。 防災・危機管理の専門家である著者は、能登半島地震などの事例を検証し、初動の遅れや自衛隊への過度な依存といった構造的課題を具体的に指摘。 縦割りを超えて対応を一元化する「防災庁」の創設を提起する。一方で、単なる組織新設にとどまらず、防災を国家の存立に直結する「総合安全保障」や、国を強くする「危機管理投資」へと捉え直すパラダイムシフトの重要性を説く。 また、濱口梧陵の「稲むらの火」の精神に学び、学校や地域が連携した人材育成の必要性を強調する。 東日本大震災で陸上自衛隊を率いた元陸幕長の対応にも触れ、極限状況のリーダーに求められる覚悟と判断力を描く。 「想定外」を言い訳にせず、今そこにある危機に備えるための必読の一冊だ。 (並木書房刊、1650円)


不穏な時代に読む 戦争の常識100 かのよしのり 著
不穏な時代に読む 戦争の常識100 乱世の現実を直視する安全保障の基礎がテーマ別に分かる。 国際秩序が揺らぎ、戦争の影が日常のニュースとして流れてくる今、私たちは基礎知識として国際情勢や戦争について学ぶべきではないだろうか。 本書は、戦争・軍事・安全保障の「常識」を100項目に整理し、複雑化する世界情勢を読み解くための視座を提示する。著者のかのよしのり氏は、銃器関連など軍事の論考で知られ、平時の感覚では理解しにくい戦争の論理や国家の行動原理を、平易な言葉で解説する。 特徴的なのは、国家がなぜ武力を持ち、どのように抑止が成立するのかなど、淡々と示す点だ。ウクライナ戦争や中東情勢、台湾海峡の緊張など、現代の事例を踏まえつつ、禁止されているはずの戦争が「なぜ繰り返されるのか」説明する。 さらに、軍事力の役割、同盟の意味、情報戦の実態など、一般の人々が誤解しがちな領域を丁寧に補い、冷静に再定義する。 著者は日本の安全保障環境にも言及する。近隣諸国の軍事動向や抑止の現実を直視すべきだと説く。ただし感情論に流されず、事実に基づいて理解する姿勢を徹底する。 (


声を上げる自由 ラヴィーシュ・クマール 著、倉田夏樹 訳
声を上げる自由 ラヴィーシュ・クマール インドの著名なジャーナリストである著者が、急速に変質する自国の民主主義の現状を鋭く告発する論考集だ。 2014年のモディ政権発足以降、インドでは権威主義化が進み、フェイクニュースのはん濫や報道機関への圧力によって言論空間が大きく揺らいだと指摘する。 著者はNDTVインディアの看板アンカーとして知られ、現在は登録者数1400万人超のユーチューブチャンネルで発信を続けている。 本書では、政治・社会・文化の各側面から「声を上げる自由」がいかに脅かされているかを具体的な事例を交えて論じ、恐怖と分断が広がる社会の実相を浮き彫りにする。 「恐怖支配の国家プロジェクト」「民主主義を前進させる市民ジャーナリズムの力」など全15章で構成。メディアの沈黙が市民の沈黙を生み、民主主義の基盤が揺らぐ過程を、現場を歩いてきた記者ならではの視点で描く。 「アジアのノーベル賞」といわれるラモン・マグサイサイ賞受賞者でもある著者の言葉は、インドに限らず、世界各地で広がる民主主義の後退を考える上でも示唆に富んでいる。 (作品社刊、3520


合憲自衛隊 新自衛隊法 九条のままでも戦える組織に 小川清史 著
合憲自衛隊 新自衛隊法 九条のままでも戦える組織に 「憲法改正して自衛隊を軍隊に」との意見があるが、著者は「自衛隊法を変えれば事実上の軍隊にできる」と指摘する。さらには「改憲しても法を変えなければ自衛隊も変わらない」という事実を突きつける。 そもそも軍隊は主権の下に海外へ力を向ける武力組織で、原則は法規制を受けない。一方、警察は法を根拠として主権者に対し強制力を発揮できる行政機関だ。 そのため、任務の与え方も異なる。軍隊は、国際法や交戦規定を通じてやってはいけないことを示す「ネガティブリスト」、警察には職務執行法でやっていいことを示す「ポジティブリスト」方式だ。 ところが、自衛隊法の各条には「必要最小限度の」「やむを得ない場合」「承認を求めなければ」と差し込まれた、あいまいな文言が並ぶ。前例のないことをする度に解釈をこねくりまわしているのが実態だ。 本書は現行法の批判に留まらず、弁護士や史学者と協力して、エスカレーションさせない体制を目指した実務に沿った改正法案を示す。 複雑化する安全保障環境に対応するための示唆に富む1冊。 (ワニブックス刊、1


日本人誕生 4万年の物語 神話と科学で読み解く古代史の謎 同前宏 著
日本人誕生 4万年の物語 神話と科学で読み解く古代史の謎 いわゆる「精神世界」の分野で数多くの専門書を世に送り出してきた老舗出版社「たま出版」。 今回、同社が世に送り出した本書は2月の発刊ながら、すでに重版が決定しているという。 神戸市で歯科医院を開業している著者は、これまで延べ2万5000人以上の患者を診察する傍ら、郷土史家として古代史の研究を続けてきた。 本書はその成果をまとめたもので、日本考古学会が軽視してきた「旧石器時代」からの日本人の系譜をたどる意欲作だ。 なかでも歯科医師だからこそ語れる著者の考察は興味深い。 著者自身、過去にさまざまな国籍の患者の口腔(こうくう)内を診察してきた中で、海外の人は国籍によって「歯の形や歯並び、骨格など、口腔内にそれぞれの特徴があるのに、日本人だけはかなり多くのパターンが存在する」と語る。 その上で「日本人は、他の民族に比べて遺伝子の多様性が豊かな集団」であるからして、「『和』を大切にしてきた」というのは大いにうなずける。 (たま出版刊、1540円)


強いトヨタの源流 杉本祥郎 著
強いトヨタの源流 織機の製造による世界的な発明で財を成し、その勢いで自動車産業へ進出し、世界的企業へと成長したトヨタの“強さ”がどこから生まれたのかを、歴史・人物・思想を軸に深く掘り下げた。 創業者・豊田喜一郎の挑戦心から始まったトヨタ。 戦後の混乱期にも国産車づくりを諦めなかった執念が花開き、「現場主義」を軸に独自の企業文化が実を結んだ。こうした系譜が、どのように現在のトヨタを形づくっていったのかを丁寧に描いている。 トヨタ生産方式(TPS)の誕生と進化、カイゼンの精神、現地現物の姿勢など、トヨタを象徴する思想がどのように育まれたのかを、豊富なエピソードと共に紹介している。 また、技術革新への飽くなき探求や、短期利益に左右されない長期視点の経営哲学が、どのように世界の製造業に影響を与え続けているのかにも迫る。 同書では、企業史だけではなく、企業としての強さを、元社長秘書でもある著者が真正面から答える内容だ。 ビジネスパーソンはもちろん、組織づくりやリーダーシップに関心のある方々にも多くのヒントを与えてくれる。 (牧歌舎刊、1980円)


謀略とインテリジェンス 認知戦に無防備な日本 上田篤盛 著
謀略とインテリジェンス 認知戦に無防備な日本 国家の命運を左右する「謀略」と「インテリジェンス」の実像に迫る。古典的な諜報活動から現代の情報戦まで、国家がいかに情報を収集・分析し、時に謀略を用いて戦略的優位を確保してきたのかを体系的に論じた。 防衛省情報分析官を務めた著者が、サイバー攻撃、偽情報の拡散、世論操作、経済的威圧など、近年顕著となった“見えない戦い”の手法を具体的事例と共に解説する。 さらに急速に変化する情報環境の下で、国家が直面する脅威の構造を浮き彫りにする。 同書は、インテリジェンス機関の役割や組織運用の実態、民主主義国家が抱える倫理的課題にも踏み込み、情報が政策決定に与える影響を多角的に示す。 戦争の形態が変容し、軍事力だけでは抑止が成立しない時代において、情報優勢の確保が国家安全保障の基盤となることを強調する。 見えない戦場が広がる現代戦では、認知戦や情報操作が国家を揺さぶる。 誰もが情報を発信できるSNSが浸透する今、真実を見極める力を養うために同書を一読してはどうだろうか。 (並木書房刊、1980円)


国防神社 古代から大東亜戦争、そして現在 久野潤 著
国防神社 古代から大東亜戦争、そして現在 各地に点在する国を守るための祈りの場――国防と神社の知られざる関係を立体的に描いた。 著者は、15年にわたり全国600社以上を巡り、戦争経験者への聞き取りを重ねてきた歴史学者。その圧倒的なフィールドワークが本書の骨格を成している。 引き込まれる点は、神社を単なる宗教施設としてではなく、「国の歴史と精神の連続性を映す鏡」として読み解く視点だ。 旧海軍艦艇に祀(まつ)られた艦内神社や、各地の招魂社、楠木正成や西郷隆盛を祀る社など、歴史の節目に登場する「祈りの場」が、どのように国防意識と結びついてきたのかを丁寧に説明している。 また旧皇族の竹田恒泰氏との対談も収録し、神道と国家観、そして現代の私たちが見落としがちな「祀る」という行為の意味を掘り下げる。 神社といえば「静かな場所」を思い浮かべがちだが、その背後にあるダイナミックな歴史の流れを可視化し、祈りがどのように国を支えてきたのかが見えてくる。読み終えた後、思わずどこかの神社に参拝したくなるだろう。 (ワニブックス刊、1980円)


大人も知らない? 料理と食事のふしぎ事典 星玲奈 著
大人も知らない? 料理と食事のふしぎ事典 日々の食卓には、気づかないまま通り過ぎている小さな疑問がある。本書は料理と食事の身近な“なぞ”にそっと理由を添えてくれる一冊だ。 たとえば、せんべいの定番「サラダ味」。野菜サラダの味ではなく、サラダ油と塩味の組み合わせを指すという。 サラダ油が“生野菜にそのまま使えるさらりとした油”として名付けられたことに由来し、塩味との差別化のために「サラダ味」と表記されるようになった。知っているようで知らなかった背景に、思わずうなずいてしまう。 身近な“なぞ”を、短い読み物として軽やかに解説している。 「野菜や果物」「お米や小麦」「お菓子」「食材」「調理」「生活」の六つの章にわたり、55の“ふしぎ”を紹介。 「大人も知らない?」シリーズは、親子で楽しめる軽快さが魅力だが、世代を問わず会話のきっかけになる。食卓に置いておけば、家族の話題がひとつ増えるかもしれない。 (マイクロマガジン社刊、1210円)
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