時の焦点<国内> サイバー防御

インフラの停止を防げ
公的機関や企業からの大量の情報流出が、毎日のように報じられ、国民の不安が高まっている。
国民生活の安心や安全の観点からは一刻を争う課題であり、官民を挙げた対応が求められている。重大なサイバー攻撃を未然に防ぐ能動的サイバー防御の関連法が本格的に施行された。
最新の攻撃手法などの機微情報を官民の協議会で共有することに加え、警察と自衛隊が攻撃元サーバーに侵入して相手を無害化する措置が可能になった。
また、電気やガス、鉄道など基幹インフラの15業種258業者に対し、サイバー攻撃があれば報告するよう義務づけた。基幹産業の機能が停止すれば、国民生活に重大な影響が及ぶ。政府が被害を素早く確認し、拡大を防ぐことは重要だ。
サイバー攻撃による被害やリスクは年々増大している。ランサムウエア(身代金要求型ウイルス)の被害報告は、ここ数年200件前後で推移している。
最近も、サイバー攻撃による大規模な情報流出が頻発している。カーシェアリングのタイムズカーや大和証券などが、個人情報の漏えいを公表した。
9月には、政府機関共通の情報システムが攻撃を受け、個人情報約25万件が流出した可能性があることが分かった。警察庁が検知する不審なアクセスは、1日に9500件を超えているという。
従来の受動的な手法で、膨大な攻撃を防ぎきることは難しい。攻撃先のコンピューターに侵入して悪意のあるソフトを消去するなどの措置は、米英でも浸透している。有効な防御策となろう。
侵入や無害化の実施には、専門家で構成する独立機関の承認が必要だ。ただ、サイバー攻撃は高速化しており、対応が後手に回る恐れもある。緊急時に認められる事後通報も、ためらうべきではないだろう。
対策強化のカギを握るのが、攻撃の兆候を把握することだ。来年秋からは、政府が基幹インフラの事業者の通信情報を取得し、分析することが可能になる。
政府による通信の監視に対しては、国会審議でも憲法の「通信の秘密」との整合性が論点になった。プライバシー侵害への懸念を払拭するため、情報管理委員会が政府の運用を監視する方針だ。政府には運用状況の国会報告が義務づけられた。政府としても、サイバー防衛の重要性を丁寧に説明して理解を広げていく必要がある。
人工知能(AI)は、昨年の関連法成立時には想定できなかったほどの進化を遂げている。
米アンソロピックは桁違いの脆弱(ぜいじゃく)性発見能力を持つAIを開発し、オープンAIの「AIエージェント」は、豪政府のウェブサイトに侵入した。
高性能AIによる攻撃への対応策も急がねばならない。AIを活用する際には、人間が制御できる仕組みも欠かせない。
霜月荘六(政治評論家)







