時の焦点<海外> イラン情勢

同盟も代理勢力も衰退
イランは対イスラエル攻撃に関して卓越したアイデアを示してきた。自国の「代理勢力」がイスラエルにテロを行っても、イランに説明責任の追及は及ばないのだから。
レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラ、パレスチナ自治区ガザのイスラム・テロ組織ハマス、イエメンの親イラン武装組織フーシ派に加え、イラク、シリアにいるシーア派イスラム教徒の民兵組織などだ。イランは長年、これらの組織に大規模な軍事援助、資金供与を続け、それを通じて、中東の地域覇権を主張してきた。
しかし、最近になって、米とイスラエルによる攻撃、ベッセント米財務長官が主導する対イラン「エコノミックDデー」(8月24日発表)の結果、イランが満喫してきた幸せな時代はほぼ終わりつつある。
イランは破綻国家になった。ホルムズ海峡の封鎖では原油輸出で収入を得る道がない。超インフレで、通貨リヤルの価値を問うこと自体が今やジョーク。9月30日には1米ドル=250万リヤルと歴史的安値を更新。
政権指導部の大半は殺害された。トランプ米大統領が国連演説(9月22日)で明かした通り、海軍の全艦船が海底で眠っている。空軍も事実上なくなった。かつては「同盟国」だった国々も後退し、「代理勢力」も多くが炎上中だ。
開戦当初、CNNテレビなどに出ていた軍事アナリストは、ロシア・中国・北朝鮮・イランの同盟は重要で、イラン防衛に駆け付けるだろうと述べていた。しかし、そんなことは起きなかった。
中国は自らの主義を捨てて、イランの仇敵(きゅうてき)サウジアラビアなど他の湾岸諸国との取引に忙しい。イランの重要性は日ごとに急降下している。
ロシアも逃走した。ビジネスジェットを運航する同国民間のデクスター・エアータクシーは9月初旬、イラン南部のブシェール原発や、最大のガス田「サウスパールス・ガス田」に関連する港湾都市アサルーイエの陸上ガス施設に残っていたロシア人技術者全員を帰還させた。
中露ともイランとのパートナーシップよりも、エネルギー供給、貿易における自国の利益、米国との対決回避を優先させた。
ハマスはイスラエル軍に打ちのめされ、シリアの陸橋も破壊された。ヒズボラも9月中旬、レバノン南部ナバティエの要衝アリタヘル高地にあった全長約2キロの地下施設がイスラエル軍に破壊された。イランが年に7億―10億ドルを提供し、20年以上かけて構築したテロ・インフラだった。
イエメン暫定政権は10月5日、サウジの支援の下、フーシ派に対する大規模攻勢を実施、紅海の要衝バベルマンデブ海峡周辺の拠点を奪還した。
「イランの資金洗浄を手助けする組織はドル決済システムから排除する」(ベッセント長官)。イランの生命線は“風前の灯”ということである。
草野徹(外交評論家)







