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コラム


朝雲寸言(2026年6月11日付)
6月の声を聞いて暑い長い夏がまた来るのだといささか憂鬱(ゆううつ)になるこの頃である。5月末から各地で30度を超える真夏日が続いた。これは異常気象ではない。この10年ほどで定着した長く暑い夏の始まりである。 暑い夏に辟易(へきえき)しているのは我が国ばかりではない。世界各地で熱波と豪雨のため災害が多発している。スペインでは連日40度を超える日が続いて暑さと乾燥に起因する大規模な山林火災が起きている。英国・仏国でも5月の最高気温を更新したという。 有史以来、地球は何度も氷河期に見舞われてきた。現在は約1万年前に終わった氷河期の間氷期にあたるのだという。地球温暖化は人類共通の課題なのか。さにあらず密(ひそ)かに歓迎していると思われる国がある。それがロシアである。 地球温暖化が進むとシベリアの永久凍土が耕作可能な土地となり、氷に閉ざされた北極海に通年航行可能な航路が開通されることになる。中国が極寒のアイスランドに立派な大使館を建てたのは北極を経由する通商航路の開設を見越してのことだと言われている。 46億年に及ぶ地球の時の流れに比べてイラク・中東・ウク


時の焦点<国内> 中国の海洋進出
西太平洋の守り堅めよ 中国が西太平洋で軍事行動を活発化させている。放置していたら、日本の領土・領海や国益を奪われかねない。自衛隊の拠点である硫黄島を中心に、防衛体制を強化することが急務だ。 防衛省によると、中国海軍の空母「遼寧」が沖ノ鳥島の南西海域で、戦闘機やヘリコプターを発着艦させるなど軍事訓練を行ったという。ミサイル駆逐艦やフリゲートも、遼寧と行動を共にしたという。ミサイル駆逐艦は、沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡を通過していたことも分かった。 軍事訓練は公海上で行われた。また、宮古海峡は、艦艇が自由に通航できる海域だ。今回の中国軍の訓練は、国際法上、問題があるとは言えない。 だが、中国の空母はここ数年、西太平洋での訓練を繰り返している。昨年5月末から6月にかけては、空母2隻が初めて太平洋に同時に展開し、艦載機の発着艦訓練を約1千回行った。昨年12月には、艦載機が自衛隊機に対して、攻撃を意図するレーダー照射した。 中国が西太平洋を自らの管理下に置こうとしているのは明らかだ。 一方、西太平洋は、日本の経済安全保障にとって重要な海域である。...


時の焦点<海外> イランの攻撃
つじつまが合わない戦術 米・イランの和平交渉が膠着状態にある中、イランは各地で攻撃を激化させている。大きな見せ場を狙うかのようなイランと比べ、米国は成果を上げている観がある。 英ロイター通信は6月3日、カイロとワシントン発で、「米とイラン、新たな攻撃の応酬――交渉は行き詰まり」と簡潔に伝えた。 「米中央軍の発表によると、イラン軍は2日夜、クウェートに向け2発のミサイルを発射したが、目標に届かなかったか、もしくは空中で分解した。域内の別の標的への複数の弾道ミサイル攻撃も失敗した。バーレーンに発射された3発のミサイルは米軍とバーレーン軍に迎撃された。2月に米・イスラエルとイランの戦争が始まって以来、イランは米軍基地のあるバーレーンとクウェート内の標的を再三攻撃してきた」 「中央軍によると、米軍は域内海域で民間船舶を狙ったイランのドローンを撃墜した。また、ホルムズ海峡近くのケシム島にあるイラン軍地上管制基地も攻撃した」 「国営イラン通信(IRNA)が伝えたイスラム革命防衛隊(IRGC)の声明は、ケシム島に対する攻撃への報復として、IRGCはバーレーンに


<春夏秋冬> 1976年から50年 鈴木敦夫
50年前の1976年は、その後長く日本の安保防衛政策に大きな影響を与えた重要な決定がなされた年であったことはよく知られている。「基盤的防衛力構想」「防衛費GNP(国民総生産)1%枠」「武器輸出禁止」の三つである。 余談ではあるが、防衛白書が現在のように毎年発行されるようになったのもこの年である。 76年2月の衆議院予算委員会で当時の三木武夫首相から「武器輸出に関する政府統一見解」が表明され、「慎むものとする」がその後の武器輸出全面禁止につながっていく。 10月には最初の「防衛計画の大綱」が閣議決定され、「基盤的防衛力構想」が採り入れられる。11月にはいわゆる「GNP1%枠」が閣議決定された。 この1%枠は87年に廃止の閣議決定がなされているのだが、防衛費はその後もほぼ1%を超えることがなかったので、多くの人々はこの1%枠閣議決定が引き続き維持されているものと誤解していたほどであった。これが2022年の国家安全保障戦略の中で国内総生産(GDP)2%という新たな指標が示された。 「基盤的防衛力構想」については、09年に閣議決定された「大綱」でこれには


前事不忘 後事之師 第124回 バルト三国訪問記(4)
NATOの研究センターを訪れて 北大西洋条約機構(NATO)という組織が大西洋にまたがる欧米の軍事同盟であることは知っていましたが、それが30にもおよぶCOE(Center Of Excellence)と呼ばれる各種の研究センターを有していることを1月にバルト三国を訪れて初めて知りました。


<春夏秋冬> 王国と首長国の差 酒井啓子
UAE(アラブ首長国連邦)は、その名の通り7つの首長国の連邦である。なぜ首長国なのか、というと、元首の称号がアミール(首長)だからで、国名もエマラート(アミールの統治する国)となる。ドバイの航空会社「エミレーツ」は、ここに由来する。 他方、隣国のサウジアラビアは国王のいる「王国」である。どう違うのか。サウジは18世紀以降、サウド一族を中心にアラビア半島の諸部族を平定し、1932年に王国として独立した。一方でUAEの諸首長は、湾岸地域の諸部族の長が19世紀にアジア進出を図るイギリスと協定を結び、その庇護(ひご)下で権力を確立した。


時の焦点<国内> 国家情報会議
体制整え危機の芽摘め 外国勢力による偽情報の拡散や影響工作、先端技術の窃取といった事例は後を絶たない。 情報収集の司令塔として新設される組織は、脅威の兆候を把握し、危機を未然に防ぐよう努めねばならない。政府のインテリジェンス(情報収集、分析)に関わる司令塔を創設するための国家情報会議設置法が成立した。 新たな会議は、首相を議長に外相、防衛相、国家公安委員長ら関係閣僚で構成する。現在の内閣情報調査室を国家情報局に改組し、会議の事務局とする。 国家情報局には、外交・安全保障政策の判断のための重要情報を各省庁から収集する権限を持たせる。情報局は7月に設置される見通しだ。収集する情報は、サイバー攻撃やテロといった直接的な脅威に限らない。外国勢力による影響工作も対象になる。 高市早苗首相は設置法の審議で、外国のものと疑われる不審アカウントが、2月の衆院選で不審な内容を投稿していたと明らかにした。新設する会議で、手口や実態を解明する考えも示した。選挙介入の疑いのある不自然な投稿の拡散は、昨年の参院選でも確認されている。政府に批判的な投稿に大量の「いいね」が押


朝雲寸言(2026年6月4日付)
歌舞伎の大名跡、尾上菊五郎(音羽屋)の襲名披露興行が続いている。今襲名で八代目尾上菊五郎が誕生したのだが、実父の七代目尾上菊五郎も並び立つ。父子並立の「ダブル菊五郎」のような形態は史上初ともいわれる。話題を呼ぶわけだ。 歴史を遡(さかのぼ)る。歌舞伎は江戸時代の1603年、出雲阿国なる男装の麗人が京都で「かぶき踊り」を見せたのが嚆矢(こうし)とされる。 「遊女歌舞伎」「若衆歌舞伎」と推移するが、その理由は風紀(ふうき)紊乱(びんらん)を憂えた江戸幕府の禁圧だった。結果、成人男子のみによる「野郎歌舞伎」につながり、歌舞伎の特質を語る上で欠かせない女形が登場。為政者の弾圧が皮肉なことに、世界が賛美する女形を生んだともいえる。八代目菊五郎も清冽な女形を真摯に演じる。 さて、歌舞伎はその後も、幕府による改革で頻繁に指弾された。そこでどうしたか。家督継承、封建的主従関係、上意下達、型の重視などを浸透させ、生き残りをかけて武家を模した組織を構築したともいえるのだ。 相似形の組織が一種の防衛策として、度重なる弾圧への耐性を歌舞伎に付与した側面は否定できない。歌


時の焦点<海外> 東アジア安保
地殻変動の音がする 5月14、15日に北京で行われたトランプ米大統領と習近平・中国国家主席の会談は、米国が台湾問題を中国との外交交渉カードにする姿勢を隠そうともしなくなった意味で、東アジア安保の歴史的な転換点として記憶されることだろう。 首脳会談で最も耳目をひいたのは、習氏が台湾問題で「処理を誤れば両国は対立・衝突し、危険な状況に陥る」とトランプ氏に露骨に警告したことだった。ある外交関係者は「通常の首脳会談では考えられない脅しだ」と驚きを隠さない。 会談で中国側は、500機との事前報道もあったボーイング社の航空機受注を200機に抑え、レアアース輸出規制も米国の懸念に「対処する」との抽象的な表現にとどめた。トランプ氏が習氏を9月24日にワシントンに招待すると発表したことにも、中国側は受諾を即答しなかった。 中国は中間選挙前の習氏招請を是が非でも成功させたいトランプ氏の心理を見透かし、経済での譲歩と引き換えに、台湾問題で米側から一層の妥協を引き出す取引を目論んでいるはずだ。 「外交は大きなディール」と考えるトランプ氏が、こうした誘惑に乗る懸念は消えな


防研セミナー 時代を読み解く シリーズ<53> サイバー時代の抑止を再考する ~「攻撃ゼロ」を超えた評価軸へ~
今月の講師 金子怜斗氏 防衛研究所 先進領域研究部 サイバー安全保障研究室 1994(平成6)年生まれ、ロンドン出身。法政大学グローバル教養学部卒業、ロンドン大学大学院キングス・カレッジ修士課程修了(戦争学修士)。2016~25年(社)共同通信社記者、25年防衛研究所入所。専門分野は、戦争学、サイバー・認知領域の安全保障、抑止論。最近の業績として、「サイバー時代の抑止は何が変わったのか―伝統的理論の限界と新たな抑止の考え方」(NIDSコメンタリー、26年3月)。 出来事中心に依拠した評価軸 国家間競争がサイバー空間へと深く浸透し、武力行使に至らないサイバー活動が常態化する中、伝統的な抑止理論をサイバー空間に応用する試みは根底から問い直されつつある。サイバー攻撃が日常化する今日、「抑止」という古典的概念はなお有効なのか。従来の抑止理論は、核抑止時代に確立された「重大な攻撃が起きたか否か」という出来事中心の評価軸に依拠してきた。一般に抑止の3つの成立要件とされる能力、信頼性、伝達は、明確な戦争と平和の境界と明示的なシグナルを伝える前提によって成立する


朝雲寸言(2026年5月28日付)
スポーツは時に戦争に例えられる。人間同士あるいはチームが国別に競うオリンピックなどはその典型である。 そもそも格闘系のスポーツは戦いそのものであるし、チームスポーツは攻撃と防御などで得点を競う構造が戦争と酷似している。そのためスポーツは古くから戦争の隠喩として語られてきた。 同時にスポーツはルールによって戦いをゲームへと昇華し、実際の戦争を平和的なイベントへと変えるという側面があることは否めない。 歴史上、現実の紛争や政治的対立がスポーツの試合に直接持ち込まれた事例は少なくない。フォークランド紛争後のイングランド対アルゼンチン、冷戦時代の米国対ソ連の金メダルの争いなどマスメディアもそれを大々的に取り上げてきた。 スポーツの国際大会における参加国の多い団体競技は何といってもサッカーである。国際サッカー連盟には211の国と地域が加盟しており、世界中で最も多くのナショナルチームがワールドカップの予選に参加している。 戦後、長きにわたって予選を突破できなかった我が国も1998年以降本選に出場し、今では決勝トーナメントの常連となった。東南アジアの国々が日本


<春夏秋冬> 潮目が変わったように みえる米中関係 前嶋和弘
読者のみなさんは、ここ半年くらいのトランプ政権の中国への対応について、首をかしげることが多いのではないでしょうか。 アメリカにとって外交・安全保障上の最大の課題であるはずの中国に対して、トランプ政権がだいぶ宥和(ゆうわ)的になっているようにみえるためです。トランプ第1次政権が中国に厳しい態度をとっていたのとは対照的です。


時の焦点<国内> 日韓首脳会談
ホルムズ海峡が封鎖され、日韓両国とも原油などエネルギーの確保が喫緊の課題となっている。イランを攻撃した米国が、在日・在韓米軍の一部戦力を中東に移したことで、力の空白がアジアに生まれかねないことも懸念材料だ。日韓両政府は、首脳間の頻繁な往来を具体的な協力につなげていくべきだ。 高市早苗首相が韓国南東部の安東(アンドン)を訪れ、李(イ)在(ジェ)明(ミョン)大統領と会談。日韓首脳会談は1月、首相の地元奈良で行われた。今回の開催地の安東は、李氏の故郷である。両首脳が短期間で互いの故郷を訪問したことは、日韓のシャトル外交が定着しつつあることを示す。 首脳会談では、イラン情勢への対応が主な議題となった。会談後に発表された、日韓両国のエネルギー安全保障を強化するための共同文書には、どちらか一方の国で原油や石油製品が不足した際、相互に融通することを検討するため、官民対話を進める方針が盛り込まれた。供給が滞った時に備え、平時から協議しておく意義は大きい。 高市首相は先月、アジア全体でエネルギーを確保するための枠組み「パワー・アジア」を設けると表明。具体的には、主


時の焦点<海外> トランプ訪中
米国依存狙う石油外交 トランプ米大統領が5月13日から3日間、中国を訪問。習近平国家主席との首脳会談が行われた14日、FOXニュースは「中国はアラスカを調査しようと努めている」と報じた。イラン情勢、台湾問題への関心が突出する中、不安定な湾岸地域への石油依存を減らそうとする中国の内情に関する視点は興味深い。 中国はイランの原油輸出の約90%を消費し、石油全体の約50%が中東地域からの輸入だが、そのうち約90%がホルムズ海峡を通過する。今後数十年間に中東のどこかで戦争が起きたらどうなるか。 石油依存国家の中国は消費の70%以上を外国からの輸入に頼り、世界最大の石油輸入国だ。生存のためには化石燃料が必要で、電力の58%が石炭に依存している。中国は脆弱性を抱えており、トランプ氏は政権1期目から、その脆弱性に着目し、利用した。 米CNBCテレビは「米石油の対中輸出が急増、世界のオイル・ゲームが変貌」(2018年2月)と伝えた。「米国の中国向け石油の出荷が急増し、16年までは存在しなかった米中間の貿易が創出された。巨大な対中貿易赤字の削減に貢献している。米原


時の焦点<国外> イランの核
戦争は外交に勝るか 米国とイスラエルによるイラン攻撃が始まってまもなく3カ月。この戦争は何のための戦争なのか。世界は今なお当惑と不安の中にいる。 有名なクラウゼヴィッツの「戦争とは他の手段をもってする政治の延長である」という定義に従うなら、外交で達成し得ない政治的成果を軍事力で達成できたのか否かが厳しく問われるはずだ。 トランプ米大統領は訪中に先立つ5月12日、「イランに核兵器を持たせないこと、それが全てだ」と強調したが、クラウゼヴィッツ流に言えば、イランの核保有断念を外交ではなく戦争で実現することが攻撃を始めた目的、ということになる。 イランの核問題は、オバマ米政権当時の2015年にイランが米中露英仏独と欧州連合(EU)の間に締結した合意で、いったん外交解決が図られた。 イランがウラン濃縮度を3.67%以下かつ濃縮期間を15年間に制限する代わり、国際社会が経済制裁を解除するというものだった。 ところがトランプ氏が1期目の18年に「最悪の合意だ」として一方的に離脱。これに反発したイランがウラン濃縮度を高めていった経緯が、今回のイラン攻撃の伏線にあ
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