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コラム


<春夏秋冬> 中国にとって北朝鮮軍 ロシア派兵の意味 平岩俊司
ウクライナのゼレンスキー大統領は、北朝鮮が5万人のロシアへの派兵を予定していると警告した。実際の規模、目的などはまだ明らかではないが、ロ朝関係の緊密化が進んでいる。 ロシアとの緊密化で北朝鮮は、武器弾薬や派兵への経済的見返り、兵器の実戦データ、軍事技術支援、さらにはドローンに象徴される現代戦の経験など莫大なものを得たとされる。 一方、ロシアは、不足する武器弾薬、兵力の補給はもちろん、外交カードとしての北朝鮮を手に入れたと言ってよい。とくにロ朝接近を警戒する中国に対するカードとしても使えることを理解したとされる。いずれにせよロ朝双方とも緊密化を短期的な動きにとどめるつもりはなさそうだ。 では中国はどう見ているのか。2024年9月、中国で半島専門家と意見交換する機会を得たが、中国側は間違いなくロ朝接近を気にしていた。 ただ、警戒しているといった感じはなく、「われわれが与えない軍事技術をロシアからもらうためでしょ」と冷ややかであった。北朝鮮の対外貿易の90%以上を占める中国にロシアが代われるはずはない、軍事技術は提供できても民生品、食料など北朝鮮経済を


朝雲寸言(2026年8月20日付)
熊本地震が起きて間もなく1カ月だ。避難所には今も3000人以上が身を寄せている。プライバシーの確保、トイレの衛生面はどうか。段ボールのベッドで雑魚寝なのか。食事はどうか。避難者が改善を求めるニュース映像は後を絶たない。 待てよ。我々は、震災のたびにこうしたニュースに接してはいないだろうか。1995年の阪神・淡路大震災、2011年の東日本大震災、24年の能登半島地震、10年前の熊本地震でも、そうだった。世界有数の災害大国として恥ずべき状況ではないか。 「防災先進国」のイタリアは、国主導で発災48時間以内にトイレ、キッチン、ベッドと充分な生活環境を提供するシステムを持つ。米国でも避難所をホテルや民間施設に分散させる方式が稼働する。スウェーデンなどでは完全個室化を重視した措置を取る。 日本では能登半島地震を受け、24年に避難所運営のガイドラインを改定。国際的人道基準「スフィア基準」を導入した。物資の備蓄や迅速な調達を自治体へ強く促した。1947年成立の「災害救助法」は25年、改正された。 災害大国である。対策実行者は自治体ではなく、国であるべきだろう。


時の焦点<国内> 防衛白書
「新しい戦い方」を分析 世界各地で戦争が繰り広げられ、その領域は陸海空から宇宙やサイバー、電磁波へと広がっている。特に、無人機(ドローン)の登場は戦場の光景を変えた。 新たな危機の時代に日本の平和と安全を守るには、「新しい戦い」を視野に入れた対応策を練っていく必要がある。 2026年版の防衛白書が公表され、中国の軍事動向について、25年版と同様に「わが国と国際社会の深刻な懸念事項」だと指摘した。また、ウクライナ戦争以降の新しい戦い方について、初めて本格的に分析した。 戦火が続くウクライナでは、安価なドローンが大量に投入され、長射程ミサイルによる大規模攻撃も頻発している。 白書では、ドローンや衛星をネットワークでつないで情報収集することにも触れ、「技術と情報の使い方が大きな意味を持つ」と指摘している。 日本も4月、射程1000キロメートルを超える地上発射型のミサイルを陸上自衛隊の駐屯地に配備した。無人機を島嶼防衛に活用する防衛構想にも着手している。これら装備品の運用は、通信衛星による迅速な情報共有が前提となる。だが、日本の衛星打ち上げ数は依然少ない


時の焦点<海外> 苦悩する欧州
移民危機で亀裂露呈 日欧の国際報道における最大の違いは、中東やアフリカのニュースが欧州では質量とも圧倒的なことだろう。中東とアフリカは、欧州とは地中海を挟んで一つの歴史文化圏内にある。日本で言えば朝鮮半島や中国のように、安全保障上も社会経済上も無関心・無関係ではいられないのだ。 7月末、北アフリカ・モロッコに接しているスペイン領セウタに7万人を超す移民が一気に押し寄せた問題は、その欧州の最も敏感な部分を大いに刺激した。各国は中東・北アフリカから100万人以上の難民が流入した2015年の政治危機を想起し、EU(欧州連合)に不協和音が響いた。 イタリアは、EU域内を自由に移動できるシェンゲン協定をスペインとの間で1カ月停止。フィンランド、デンマーク、チェコが支持に回った。 怒ったスペインは9月7日まで伊からの国境審査を厳格にする対抗措置をとる。セウタの移民はほとんどがモロッコに戻って事態は沈静化したにもかかわらず、欧州の亀裂は露呈したままだ。 本来はドイツやフランスという中心国家がまとめ役になるところ、独は9月の地方選で反移民の極右政党「ドイツのため


時の焦点<国内> 消費税減税
懸念の払拭へ全力を 政府が食料品の消費税率を2027年4月から2年間、8%から1%に引き下げる方針を決定した。秋の臨時国会で関連法案の成立を目指す。 食料品の消費税率1%分の税収にあたる年6000億円分の給付も合わせて、消費税率を「実質ゼロ」にするという。 総額5兆円に上るとされる減税・給付の財源をどう確保するのか。財政や、為替・金利への悪影響はないのか。2年後に確実に税率を戻せるのか。高市首相は、様々な指摘を真摯に受け止め、懸念の払拭に努める必要がある。 首相は、英国の付加価値税など欧州の仕組みを参考にしているようだ。 英国の付加価値税率は20%(標準税率)だが、食料品の税率は原則としてゼロだ。金融危機の際には、付加価値税率を引き下げたこともある。欧州では英国に限らず、柔軟に税率を変更できる国が多い。 日本では物価の高騰が続いている。首相としては、国民生活に寄り添う姿勢をアピールしたいのだろう。 ただ、消費税は社会保障を支える安定財源だ。その減税には不安が付きまとう。 首相は税収減となることについて、「さらなる歳入確保の取り組みを進める」と語っ


朝雲寸言(2026年8月13日付)
1989年ベルリンの壁の崩壊、同年マルタ会談で冷戦の終結宣言、90年東西ドイツ統一、91年ソビエト連邦が崩壊する。わずか数年で冷戦は崩れ落ちた。 冷戦崩壊後の欧州各国の対応は素早かった。冷戦期に前方配置されていた主力軍団などの撤退、大規模な軍備縮小や防衛費の大幅削減、欧州諸国は「平和の配当」を求めたのである。結果としてNATOが東方に拡大した。 国際社会における急激な力の変化は反動を生み、その反動が力の空白や不均衡を生む。その延長線上に現在のウクライナや中東情勢があるのではないか。 一方アジアでは冷戦構造に大きな変化がなかった。旧ソ連の航空機に対する対領空侵犯措置が激減した一方で中国と北朝鮮の脅威が高まった。議論となったものの我が国において平和の配当は行われなかった。 今年も8月15日を迎え「先の大戦」が終結して81年が経過する。この敗戦こそが我が国の歴史の大転換であった。大きな反省と共に我が国は一貫して平和を希求する国家として歩んできた。その一貫性が我が国の平和と独立に寄与していると言える。 時と共に戦争の記憶は薄れつつある。しかし戦争を忘れな


時の焦点<海外> 対イラン戦争
「決着」時期と中間選挙 2026年2月28日に始まった米・イラン戦争は6カ月目に入った。トランプ大統領の強固な支持層でも、作戦の戦果・コストに疑問を抱き始めても不思議はない長さだ。 経済政策では成果を上げてきた一方、国軍最高司令官としてイランに対するアプローチは再三、危険な壁に直面。 同大統領は「イランや他の中東諸国から、ホルムズ海峡の再開放とイランの核問題解決への合意をまとめるための猶予を求められたので、計画していた大規模攻撃は見送る」と表明(8月1日)し、「イランと3日に協議」(2日)とも明かした。 しかし、イランは「米の敵対的行動が続く限り同海峡再開放はない」(2日・同国ファルス通信)、「米との交渉は行われていない。計画もない」(3日・外務省報道官)との対応だ。 トランプ氏は「イラン指導者は二枚舌」と怒り心頭だが、その二枚舌に踊らされる不明への猛省も必要なときだろう。 開戦時、外交政策の目的は明確だった―。(1)イランの核兵器保有阻止(2)長距離ミサイルの脅威除去(3)国際テロ活動の代理人ハマス、ヒズボラ、フーシ派への資金供与切断。...


<春夏秋冬> ワシントンDC (その二) 鈴木 敦夫
二度目のワシントン長期滞在は米国防大学の国家戦略研究所(INSS)客員研究員として2000年8月からの1年間弱であった。冷戦後の同盟漂流の危機感を経て、1996年の日米安全保障共同宣言、97年の日米ガイドラインの改定、99年の周辺事態法の成立などにより、日米同盟は再定義された。そして、アジア・太平洋地域の平和と安定のための日米防衛協力が強化された。 この時期、防衛庁では、米国とのコミュニケーション強化を図るために、ワシントンの体制を若干変更した。 もちろん、米政府との公式ルートは在米大使館であり、防衛駐在官チームや文官の1等書記官(当時)がその任にあたった。 一方、米国の政策決定プロセスでシンクタンクの役割も小さくなかった。その関係者との交流の一翼を担うのが、防衛庁から派遣されたINSS客員研究員の仕事でもあった。 私がこのポストについた00年夏は、8年間のクリントン政権の後継を決める大統領選挙を11月に控えた時期でもあった。政権が民主党から共和党に交代すれば、それまでシンクタンクなど政府の外にいた共和党関係者が大挙政権入りすることになる。ここに


前事不忘 後事之師 第127回 サッカーワールドカップでの日本対ブラジル戦を考える
―土俵を変えて主導権を握る― 中学時代にサッカー部に入って以来、半世紀を超えてサッカー日本代表を応援する私は、今回のワールドカップ決勝トーナメント1回戦で日本代表が本気モードのサッカー王国ブラジル代表とほぼ互角の戦いを演じたことに驚きを感じています。 日本は佐野選手の素晴らしいシュートで先制しましたが、後半にブラジルに2得点され、逆転負け。敗戦は本当に残念ですが、私は監督の采配に注目しました。 森保一監督は、素晴らしい監督で、選手の能力を伸ばす手腕に長(た)けていると同時に試合での采配も巧みです。森保監督の戦術の基本は、本人がインタビューで述べているように「後出しジャンケン」です。試合のなかで、相手チームの出方や流れに応じて、選手交代や陣形の変更を行い、戦い方を柔軟に変化させます。攻撃型メンバー(ジョーカー)を温存し、相手チームが疲れてきた後半にそうした選手を投入する戦い方で、これまで多くのジャイアント・キリングを成し遂げました。 野球などと異なり、サッカーというスポーツは守備と攻撃が瞬時に入れ替わる点で、戦争に類似していると思います。...


時の焦点<海外> トランプの戦争
プーチンの二の舞か イランの核開発を阻止して中東の核拡散を防ぐという大義名分はどこへ行ったのか。トランプ米政権は対イラン交渉期限の8月中旬を控え、サウジアラビアと将来のウラン濃縮を可能にする原子力協定に署名した。イランにとって中東の覇権を争うライバルであるサウジへの「核拡散」は、自らの核保有への意思を揺るぎないものにする材料となりかねない。 トランプ政権のイラン攻撃は戦略も戦術も曖昧なまま、迷走を続けている。米ニューヨーク・タイムズ紙コラムニストのニコラス・クリストフ氏は7月末、「トランプの『パーフェクトな』戦争の袋小路」と皮肉った記事でイラン空爆の限界を指摘。地上部隊を派遣しようとすれば1年間にわたって60万人の兵士が必要で、当然それには犠牲が伴うとの退役将校の見立てを紹介した。 戦争が袋小路に入り込んでいるのは米国だけではない。ロシアもまたウクライナの反転攻勢によって劣勢を強いられ、プーチン大統領の目算は大幅に狂っている。 5000発もの核弾頭を保有する米露両軍事大国が、イラン、ウクライナという核を持たない中規模国家を力では屈服させることがで


時の焦点<国内> 中露の挑発活動
太平洋の警戒強化を 中国とロシアの軍が連携し、日本周辺で挑発行動を繰り返している。日本は警戒・監視能力を高めていく必要がある。 中露両国の海軍艦艇4隻が7月19日に沖ノ鳥島(東京都)付近の日本の排他的経済水域(EEZ)内を航行し、中国のミサイル駆逐艦が機関銃の射撃訓練を行った。防衛省が21日に発表した。 EEZにおける軍事活動は国際法上違法ではない。だが、4隻の艦艇は10日ほどかけて日本の周辺を航行し、潜水艦やミサイルによる攻撃に対処するような高度な訓練も実施した。日本を威圧する意図があったのは明らかだ。 中国からの事前通告は訓練の直前で、船舶の航行にも影響を及ぼす可能性があった。危険な行動である。 看過できないのは、日本が外交ルートで懸念を伝えたのに対し、中国が「沖ノ鳥島は岩礁であり、EEZを設定できない」などと主張したことだ。訓練は、島に対する日本の主権を否定するための示威行動でもあったようだ。 沖ノ鳥島周辺の海底には、豊富な鉱物資源が存在するとされる。海洋権益を守る必要があるが、広大な太平洋を監視する自衛隊の能力は十分とは言えない。レーダー


<春夏秋冬> スペインとパレスチナ 酒井啓子
ワールドカップが終了して3週間。その熱狂も静まりつつあるが、スペインの優勝には中東、イスラム諸国が熱狂した。 中世スペインがイスラム王朝のもとで栄え、アンダルシアに数多くのイスラム遺跡が残されていることは、よく知られている。 また、スペイン・チームの神童と言われ、優勝の立役者であるヤマル選手は、父方がモロッコ系で本人もイスラム教徒であることも、人気の理由のひとつだ。ラミン・ヤマルという名前は、アルアミーン・ジャマルというアラビア語名が語源である。 それだけではない。彼はしばしばパレスチナ国旗を手にしている姿が報じられており、同じムスリム、アラブ系としてパレスチナへの連帯を隠さない。その姿を見たイスラエル占領下のパレスチナ人は大喜び。ヨルダン川西岸に張り巡らされたイスラエルによる分離壁には、パレスチナ旗を掲げたヤマルの巨大な壁画があちこちに描かれた。 瓦礫のなかでもガザの人々は空き地に集まり、決勝戦にくぎ付けだった。アルゼンチンとエジプトの試合でも、ガザの屋外でテレビ放映され、敗退したエジプト・チームの監督がパレスチナ国旗を振ると歓喜の声が上がった


朝雲寸言(2026年8月6日付)
ツキノワグマによる被害や目撃のニュースが絶えない。ヒグマならまだしも、ツキノワグマがこれほど怖いものだと痛感したことはない。 環境省のまとめ(2025年度)によると、クマ出没件数は全国で約5万件。記録が残る09年度以降、最多を記録した。前年度の約2.5倍という。人的被害は全国で216件発生、被害者数は238人(うち13人が死亡)といずれも過去最悪となった。東北各県に被害が集中。兵庫県神戸市での目撃情報も出てきた。いわゆるアーバンベアである。 スプレーや鈴などのクマ撃退ツールにも慣れ、効果が薄れてきている。個人での対策ではおぼつかない。あとは猟銃などによる駆除しかないのだろうが、これも人手不足という。 原因は気候変動などによるエサのドングリの凶作、クマの生息域の拡大、人への慣れ、残飯類の味への執着などと分析されている。もっと探ると、高齢化・過疎化によって人とクマの生活圏の緩衝地帯だった「里山」が荒廃したところに行きつくのだろう。 高度経済成長期にも、被害はあった。だが、現場は住宅・市街地域ではなく奥山だった。それでも新聞のコラムは問題を指摘した。.


朝雲寸言(2026年7月30日付)
毎日の散歩コースは少し足を延ばすと運河の先に海につながる人工の砂浜があり休日は多くの人でにぎわう。 宮沢賢治は旧制盛岡中学時代、修学旅行で訪れた石巻の日和山から初めて海を見てその広大な水平線に圧倒された。 賢治の感動は多くの日本人にとって無条件に共感できるものである。陸地に生きる人間種にとって海はいまだに神秘の世界であるのだ。 四面環海、貿易のほとんど全てを海上輸送に依存する我が国は海の恵みによって発展してきた。しかし現在、海を間近に感じながら生きている日本人は少ない。我が国の漁業就業者は労働人口の約0・17%、船員はわずか0・04%に過ぎない。 海運業ではグローバル化が進み、外国人船員が日本の海上輸送を支えている。しかし国の領海を守りシーレーンを確保する海上自衛隊や海上保安庁の人材に外国人を期待することはできない。 海洋国家である米国も海離れが進んでいると聞く。米海軍の人員は現役約33万、予備役約10万で合計約43万人。世界最大かつ最強の海軍の屋台骨を支えているのは実は「人」である。 資料によれば2025会計年度の米海軍の募集広告費は2億800


防研セミナー 時代を読み解く シリーズ<55> DICASの安全保障上の含意
今月の講師 神宮司覚氏 防衛研究所 政策研究部 グローバル安全保障研究室 室長 1996年千葉大学卒、2003年東京大学大学院博士課程中退(経済学修士)。同年防衛研究所に入所。主任研究官、社会・経済研究室長を経て2026年より現職。その間、防衛省防衛政策局防衛政策課、内閣官房副長官補付に出向、豪国防大学、英国シェフィールド大学東アジア研究科に留学(東アジア修士)。専門は防衛産業の国際政治経済、経済と安全保障、東南アジアの軍近代化等。 2026年4月、青柳防衛装備庁長官とダフィー米国戦争次官は米国内で第4回「日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議(DICAS)」を開催した。両国は取り組みが具体的な実行段階に移ったとして同協議を「DICAS2・0」と位置付け、関係が新たなフェーズを迎えたことを印象付けた。本稿ではこのうち迎撃ミサイルと艦船維持整備に焦点を当て、その国際的な背景と含意について解説する。 迎撃ミサイル 長距離打撃能力が世界的に拡散する中、米国製迎撃ミサイルへの国際的な需要は急増している。ウクライナ支援や中東配備部隊での使用、湾岸諸国への
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