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コラム
第110回 桶狭間の戦いを考える
戦国の風雲児織田信長の名を世間に知らしめることになった戦いと言えば、永禄三年(1560年)5月(旧暦)に行われた桶狭間の戦いです。通説では、この戦いは少数の信長軍が大軍の今川義元軍を破ったことから、信長の隠密行動を伴う“奇襲による勝利”だとされています。信長についてはその家臣であった太田牛一(ぎゅういち)が「信長公記(しんちょうこうき)」という信長の一代記を著しており、この中に桶狭間の戦いについての記述があり、これを藤本正行という研究者が読み込み、桶狭間の戦いについて分析をしていますが、藤本は奇襲説に異論を唱えています。


朝雲寸言(2025年2月27日付)
超絶な能力を付与された主人公が異世界で魔王や世界征服を企(たくら)む悪の帝国を倒すというアニメやゲームが人気であるらしい。 一部を除き多くのゲームは戦いや暴力を前面に押し出している。ゲームのプレイヤーは目的のために戦うか、または戦いそのものが目的である。 ウクライナ戦争で有効性が注目され各国で急速に開発が進むUAVいわゆるドローン兵器の操縦に使われているのは某ゲーム機のコントローラーに酷似した機器である。兵士にとって子供のころから使い慣れている装置であり、戦場はまさにゲームの延長線上にあると言えるのかもしれない。 退役米軍人が著した『戦場の心理学』という本によれば敵と戦う距離や手段によって兵士の心理的ストレスは劇的に変化するという。すなわちナイフで戦う場合と画面越しにミサイルの発射ボタンを押す行為では兵士の心理的な負担は全く異なるというのだ。 将来の戦場ではAIを活用したドローンの映像越しに敵と戦う場面が増える一方で、対人戦闘はより過酷で致命的なものになるだろう。戦場や多くの死傷者が発生する災害救援に任じる兵士はPTSD(心的外傷後ストレス障害)


朝雲寸言(2025年2月20日付)
「豪州は日本の同志国の中で別格の存在だ」。吉田統幕長が今月、ジョンストン豪国防軍司令官を防衛省に招いた席でこう発言した通り、近年の日豪防衛協力の深化は著しい。 中谷防衛相が前回大臣を務めていた2015年6月の日豪防衛相会談には、豪国防省から初の長期実務要員として同年2月から防衛省に派遣中のタラ・ボイド事務官が同席し、中谷大臣から豪国防相に紹介される場面もあった。 遡(さかのぼ)ること05年4月、豪空軍から初めて空幹校の指揮幕僚課程(CS)に入校した女性少佐がいた。一昨年まで約3年半、在日豪州大使館で国防武官を務めていたソニア・ハロラン大佐だ。 高校時代に日本への留学経験があり、豪州きっての日本語達者で親日家。東日本大震災では駐日国防武官補佐官(中佐)として豪空軍のC17輸送機3機の派遣調整で活躍し、豪軍関係者から「経験豊富な連絡将校の存在価値を示す例」と高く評価された。 ハロランさんがCS入校時に『朝雲』に語った言葉は印象的だ。「個人的なネットワークが国家間の平和と信頼醸成という大きな目的を達成する」――。それを見事に体現した。...


朝雲寸言(2025年2月13日付)
米トランプ大統領が就任して早々、その一挙一動に世界の注目が集まっている。返り咲いた大統領は選挙中や就任演説で約束した多くのことを実行に移し始めている。 就任初日に署名した26本にわたる大統領令は移民、エネルギー、貿易、教育、ジェンダー、地名変更などさまざまな分野にわたった。 さらにトランプ大統領は大幅な輸入関税率の引き上げ、世界保健機構からの脱退、中国製動画共有アプリに対する対応、不法移民の排除や送還などの動きを見せている。 2期目の大統領の最大の目的は歴史に名を残すことであるとよく言われる。彼のライバルは歴代の大統領であり残された期間は4年間しかない。 1世紀以上前、第25代大統領マッキンリーは関税率を大幅に引き上げ米国の製造業を保護したことで知られている。さらにスペインとの戦争に勝利してキューバやフィリピンなどの植民地を獲得、ハワイを併合した。西部の開拓が終わり米国の開拓精神は保護貿易と領土拡張主義に移行したのである。 トランプ大統領はアラスカの米国最高峰デナリ山を元の呼び名マッキンリー山に戻した。カナダやグリーンランドに対する発言も過去の大


朝雲寸言(2025年2月6日付)
「裏を取ったのか、裏を!!」――。新人のときにはよくデスクに、こうどやされたものだ。マスメディアにとって、情報の真実性は重要だ。誰もがSNSで情報を発信できるようになった今、情報の真実性は堅守しなければならない。 さまざま事象を多くの人々に伝える報道をなりわいにしている記者だからこそ“裏取り”は呼吸のごとく、当たり前の行為だ。だが、この当たり前が揺らいでいる。 SMAP元メンバーの中居正広氏の女性トラブルを発端に、フジテレビ関係者の関与についての文春砲の訂正。そして、共同通信が報じた生稲晃子参院議員の靖国神社参拝の誤報。いずれも本人、関係者に確認すれば防げたはずだ。 戦争においても情報戦は重要な戦略の一つ。特にロシアのウクライナへの軍事侵攻では、その動きは顕著で、サイバー空間で激しい戦いが繰り広げられている。侵攻が始まって以降、ロシア発とみられる偽情報がSNSに流布。ウクライナの世論を混乱させようとの狙いがある。こうした偽情報はウクライナ兵の士気にも影響する。 さらに戦場でも作戦の偽情報が流れれば前線は混乱し、致命傷となる。科学技術の発展で、AI


第109回 手段に飲み込まれたビスマルク ―ドイツ帝国成立の日、皇帝は不機嫌だった―
「ドイツ帝国の誕生」アントン・フォン・ヴェルナー作(独フリードリヒスルー・ビスマルク博物館収蔵)檀上中央の白い頬髪の人物がドイツ皇帝ヴィルヘルム1世、壇の下、中央白い軍服が宰相ビスマルク、その右で横向きの人物が参謀総長モルトケ イェール大学のジョン・ルイス・ギャディス教授はその著書「歴史としての冷戦」の中で、冷戦の起源とソ連の崩壊の原因について考察しています。この著書で、ギャディス教授は、「仮にルーズベルトやチャーチルがいなかったとしても冷戦は生起したであろうが、スターリンがいなかったとしたら、第2次大戦後の世界は全く違った展開になったであろう」と主張し、「スターリンは家族関係、側近との個人的な関係、党内、国内、同盟関係、国際関係の全ての前線で冷たい戦争を遂行した」「冷たい戦争を戦うことはスターリンの性癖だった」と書いています。冷戦は一人の人物の性格に起因すると主張しているように感じました。


朝雲寸言(2025年1月30日付)
厳しい寒さも和らいできたようだ。冬の終わりと共に花粉症の季節がやってきた。野外で行動することの多い自衛官諸兄・諸姉にとっては厳しい季節の始まりであるのだろう。 近年、花粉症が増加した背景にはスギなど花粉量の増加や地球温暖化、食生活の変化や都市化による花粉の滞留などが関係しているという。 我が国だけの現象かと思い世界の花粉症について調べてみると、地域によって生育する草木が異なるため花粉症を引き起こす原因もさまざまであるものの総じて世界各国で花粉症は増加しており先進国ほど無視できない深刻さにあると指摘されている。 私事ながら自衛官時代には全く無縁であった花粉症を数年前に突然発症した。花粉を吸い込み、体内に生まれる抗体の量が一定の水準を超えると花粉症は突然発症する。症状に至るまでに要する期間は20年以上とも言われ働き盛りの年齢で突然発症するのはそのためだという。 アスファルトに覆われた都会では雨が降らない限り花粉は地面にいつまでも残っている。スギの生えていない都会だからこそ花粉症は増加するのである。 ちなみに海上自衛隊では護衛艦が洋上にある時、乗り組ん


朝雲寸言(2025年1月23日付)
「自衛隊の方へ。掘りおこすとき左記に連絡ください。母がうずまっています」――。「阪神・淡路大震災」の災害派遣で陸自第3特科連隊が、がれきをかき分け遺体の捜索にあたる姿を伝える写真の一部に写っているメモ書きだ。 30年前の1995年1月17日に発生したこの大震災は最大震度7の揺れによって6434人の命と日常を奪った。当日の朝、テレビ・ニュースに流れた映像は衝撃だった。阪神高速道路は横倒しとなり、阪急伊丹駅は3階建ての駅舎が崩壊していた。にわかに現実とは思えない惨状だった。しかし、今になって、最も忘れられないのが、前述したメモ書きの写真なのである。 ひと組の親子に突然襲った悲劇は表象となり、誰にも起こり得ることを否応なく思い起こさせる。社会インフラの機能不全がもたらす弊害は「不便」に集約されるが、家族をはじめ、かけがえのない人を失った悲しみは究極の「不幸」だ。 この都市型の大災害は、地方自治体の自衛隊に対する災害派遣要請の遅れ、関係機関との情報交換の欠如など、さまざまな危機管理上の問題点をさらけ出した。結果として法改正や地方自治体と自衛隊の防災訓練の


朝雲寸言(2025年1月16日付)
令和7年が明けた。世界のさまざまな地域で新年を祝うニュースが流れていた。もっとも世界の全てが新年を迎えたわけではない。月の満ち欠けで月日を定めるイスラム教世界は西暦の新年とは関係がない。 イスラム過激派と対立するイスラエルの新年は秋に訪れる。太陰太陽暦の中国やアジア各国では1月下旬からの春節が新年にあたる。タイやバングラデシュなどでは4月、インドのヒンドゥー暦では11月は新年である。 国連などで西暦が標準的に使用されているのはそれが便利であるからだ。それでも我が国はじめ各国が独自の暦を使用しているのは暦が国家の成り立ちに深く結びついているからである。 合理的な利便性と譲れない固有の文化の狭間の中で世界は協調と対立が混在していると見るべきか。年の初めに多くの研究機関が世界情勢を予測している。中でもその年の世界のリスクを予測し、ランキングする「世界の十大リスク」が先日発表された。 今年のリスクの1番目は「Gゼロ世界の混迷」である。国際秩序を主導する国家が不在で「世界の分裂は深まり危機に陥りやすくなる」と指摘している。その他の十大リスクとして2番目に「


第108回 ビスマルクの手法
オットー・フォン・ビスマルク(1815-1898) ドイツ統一の過程でビスマルクが見せた手腕には驚嘆させられます。


朝雲寸言(2025年1月9日付)
新しい年は「昭和百年」に当たる。百年前の大正14(1925)年は、ドイツで反乱を企てた罪で一時解散に追い込まれていた国民社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)が再結成され、イタリアで国家ファシスト党を率いるムッソリーニ首相が独裁体制を確立するなど、全体主義が勢いを得た年であった。 歴史は必ずしも全てが必然ではなく、さまざまな偶然が重なって形作られる。全体主義台頭の含意を当時の日本人が洞察できていれば、後年、主体性も乏しいまま当時の同盟諸国に盲従する愚行も避けられたかもしれない。百年前のあの年は歴史の分岐点だった。 現在に目を移せば、ロシアはウクライナ侵略を続け、中国共産党政権は周辺諸国を武力で威嚇し続けるなど強権国家の粗暴さが際立つ。「危険が猛スピードで近づいている。戦時思考に切り替えよ」との北大西洋条約機構のルッテ事務総長の警鐘がぐさりとくる。 欧州では防衛費を国内総生産比3パーセントにすべきだとの声も出始めた。一方、わが国では2パーセントにするための財源確保の道も磐石(ばんじゃく)とは言えない。与野党の別なく政治が国民へのバラマキ政策に慣れ過ぎ、国
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