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コラム
<春夏秋冬> 侮れぬ北朝鮮の強靱性 平岩俊司
ベネズエラの大統領拘束、イランの最高指導部への空爆を見るとき、北朝鮮に対する「斬首作戦」なるものが実際にあるのか、と思わされる。 この2つの事例に金正恩総書記が強い警戒感を持ったことは間違いないだろう。 その一方、アメリカにとって思惑通りの展開だったのだろうか。たしかに、ベネズエラについては電撃的に大統領を拘束してアメリカの司法に委ねることができ、体制については「民主化」ではないものの実質的な体制転換が起きた。


朝雲寸言(2026年4月16日付)
「散る桜 残る桜も 散る桜」(良寛)。桜が散り始めている。日本人は平安期ごろから桜を愛(め)でて盛んに和歌を詠み、咲く姿、散る姿に無常観も投影してきた。 中世の鴨長明「方丈記」や「平家物語」、それ以降の多くの作品にも無常観が底流している。▽西洋の「石の文化」に対し、東洋は「木の文化」といわれる。ギリシャのパルテノン神殿は残りやすく、日本の神社仏閣はそのままでは残りにくい。 松浦晃一郎氏が第8代ユネスコ事務局長だった2006年から、ユネスコの「無形文化遺産」制度が始まった。アジア初の事務局長という意気込みもあったのだろう。有形の「世界遺産」だけでなく、世界の伝統芸能や祭、技術といった無形の文化財に光を当てようとした。慧眼(けいがん)である。 松浦氏がこの制度を主導した内心には、無常観に裏打ちされた日本人的心性が宿っていたはずだ、とみるのは穿(うが)ち過ぎだろうか。同氏と直接言葉を交わした際、この点については明言を避けていた。が、無常を肯定的にとらえる姿勢は否定しなかった。世は常ならず。無常は希望の母ともなり、絶望の母ともなる。対立するものが、あざな


時の焦点<海外> 対イラン攻撃
曖昧さを心理的武器に イランの最高指導者ハメネイ師の殺害で、同師と他の指導者との秘密会合の日時、場所をピンポイントで突き止めた功をめぐって、米、イスラエルの両説がある。どちらにせよ、米中央情報局(CIA)・米軍・イスラエル対外諜報機関モサド・イスラエル軍のチームワークは、イラン現体制を大混乱に陥れた。 実際、米紙「ウォールストリート・ジャーナル」(3月18日)によると、モサド工作員はイラン警察高官に高飛車な物言いをしている。同紙が調べた両者の会話(ペルシャ語)の内容。 モサド「聞こえるか?あなたのことは何でも知っている。我々のブラックリストに載っているのだ」 イラン高官「分かった」 モサド「警告しておく。あなたは国民の側に立つべきだ。そうでないと、指導者と同じ運命になるぞ」 同高官「コーランにかけて誓う。私はあなたの敵ではない。我々を助けに来てくれ」 まだ存命の一部指導者の心理状態を想像すると――。仲間が日ごとに消えていく。モサドが2024年にレバノンのシーア派武装組織ヒズボラに仕掛けた数千個のポケベル爆発作戦で、戦闘員約40人が死亡、3000人


時の焦点<国内> 日仏首脳会談
秩序回復へ欧州と連携を 国際秩序を主導してきた米国が「法の支配」を軽視するようになり、世界は、「力の支配」が横行する弱肉強食の時代に変わりつつある。 危機時に米国の軍事力を頼れないとなれば、ミドルパワーの国や新興国は自衛のための軍拡を急ぎ、核への依存を高める可能性もある。人道危機への関心も薄れ、貧困が広がりかねない。 日本は、自由貿易などの秩序の受益者の立場にとどまっていてはならない。国際秩序の立て直しに向けて、積極的に役割を果たすべきだ。 フランスのマクロン大統領が来日し、高市早苗首相と会談した。両首脳は、米国とイスラエルによるイラン攻撃がきっかけで高騰した原油などの安定供給や、ホルムズ海峡の航行の安全確保などの重要性を確認した。 フランスは今年、先進7カ国(G7)の議長国を務めている。マクロン氏の来日は、6月のG7首脳会議を前に、中東やウクライナ情勢に関する意見をすり合わせておく狙いがあったのだろう。 米国のトランプ大統領は国民向けの記者会見で、イランへの軍事行動について、「終結は近い」と述べた。だが、具体的な時期は示さなかった。記者会見前の


朝雲寸言(2026年4月9日付)
陸上自衛隊が所在する場所を「駐屯地」と呼ぶ。一方で海上自衛隊や航空自衛隊が所在する場所は「基地」である。なぜ呼び方が違うのか疑問を持つ方も少なくない。 両者を英語にするとわかりやすい。駐屯地とはCAMP(キャンプ)であり、一時的な場所を表している。基地とはBASE(ベース)であり、平素から有事を通じて永続的に所在する場所を表す。 陸上自衛隊の部隊配置は、災害派遣への対応や平素の教育訓練、隊務運営を考慮して我が国の行政区に応じて配置されている。いったんことが起これば、陸上自衛隊の部隊は駐屯地を離れ、作戦目的に応じて機動的に運用される。師団や連隊は一定期間、野外で独立的に行動することが基本なのである。 しかし、港湾や飛行場などの特別な機能が必要な海上・航空自衛隊の所在地は、平時から有事を通じて戦力発揮の基盤であり、継続的に所在部隊や来援する艦艇や航空機を支援する。 先日、陸上自衛隊健軍駐屯地に25式地対艦誘導弾が、また富士駐屯地に25式高速滑空弾が配備された。射程1000キロ超と言われる誘導弾は、いわゆる反撃能力を具体化する装備品で我が国の抑止力向上
<春夏秋冬> 4月 若者と安全保障 鈴木敦夫
新聞を読んでいると、内閣支持率をはじめ各種の世論調査関連の記事が目にとまります。自衛隊に関するものも数多くあります。 その中でも、内閣府による「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」は1969年からおおむね3年ごとに実施されていて、定点観測という視点からも興味深いものです。「自衛隊に良い印象を持っている人が9割を超えた」「自衛隊への関心が過去最高となった」と報じられる、あの世論調査です。過去の調査結果の推移も記述されているので、過去との比較も可能です。


前事不忘 後事之師 第123回 バルト三国訪問記(2)
国防を同盟に頼ることの意味を考える 前回の連載で書きましたが、1月にバルト三国を訪れ、国防省や防衛産業などで防衛関係者と議論してきました。そのうち何人かから発せられた言葉の一つが「私の国は小国ですから」というものでした。私は、当初、この言葉に、三国が抱える戦略上の課題に対する“諦観(ていかん)の響き”を感じましたが、その後、よく三国の状況について調べてみると、私のこの感想はあやまりであることに気づきました。


時の焦点<海外> 米のイラン攻撃
「死に体」のNATO 「イランの軍事施設を破壊した」と強調するトランプ米大統領だが、破壊したのはそれだけではない。戦後の自由世界を支えてきた北大西洋条約機構(NATO)もまたトランプ氏によって破壊され、いまや「死に体」の感すらある。 根回しもなく始めたイラン攻撃に非協力的なNATOにいら立つトランプ氏は、米国抜きのNATOは「張り子の虎」だ、と皮肉った。「張り子の虎」とは、トランプ氏がロシアやイランに対して使ってきた侮蔑の言葉だ。 侮蔑といえば、アフガニスタンにともに派兵したNATO同盟国を「彼らは前方から少し離れたところにいた」と揶揄(やゆ)する発言もあった。現実にはアフガンで英国は457人、フランスは90人以上、ドイツも59人の戦死者を出している。 米国に加担を迫るトランプ氏に対し、同盟国としての犠牲をこけにされた欧州側が「これは我々の戦争ではない」(メルツ独首相)と一線を引くのは当然だろう。 イラン情勢で小休止となった感のあるグリーンランド領有問題でも、デンマークが米国の軍事侵攻に備えて自ら滑走路爆破を計画していたと報じられるなど、NATO


時の焦点<国内> G7外相会合
役割は依然重い 戦後の国際秩序を主導してきた主要7カ国(G7)の姿は変わりつつある。米国は国際法違反の可能性が高いイラン攻撃に踏み切り、フランスは核軍縮に取り組む義務を放棄するかのような戦略を打ち出した。 世界の6割を占めていたG7全体の国内総生産(GDP)は4割にまで減った。とはいえ、G7が国際平和に負う役割は依然として重い。 アジア唯一のメンバーである日本には、G7の場を通じて法の支配の重要性を訴えつつ、国際世論にも賛同を広げていく役割が求められている。G7の外相会合が議長国のフランスで開かれた。イラン情勢に関する共同声明では、民間人や民間施設に対する「攻撃の即時停止」を求めた。 また、イランが事実上封鎖しているホルムズ海峡について、航行の自由を恒久的に回復する必要性を確認した。イランは石油の重要な輸送ルートであるホルムズ海峡を封鎖し、ペルシャ湾岸の国のエネルギー関連施設も攻撃した。 原油価格を高騰させて米国に攻撃をやめさせる狙いがあるのだろうが、世界経済を混乱させるだけの行為だ。イランの攻撃を受ける湾岸諸国の国々からは、イランの行動に理解を


朝雲寸言(2026年4月2日付)
「推し活」という言葉を聞いたことがあるだろうか。アイドルやアニメのキャラなど「推し」と呼ばれる存在を応援し、お金や時間、感情を投じる行為だ。 財務省広報誌「ファイナンス」によると、昨年時点で15~79歳の3人に1人が推しを持つらしい。民間の調査・研究機関「推し活総研」のデータでは年間4兆円規模の市場に急成長している。選挙すら推し活の構図に取り込まれているともいう。 打ち込む対象があるのは悪くない。知人の60代女性も最近アイドルの推し活に目覚めた。推しの話に目を輝かせているから、一種の若返り効果があるのかもしれない。 しかし、推しが人の場合、引退やスキャンダルなどの否定的変化が生じると、尋常ではない落胆につながる。別の推しに転戦できればよいが、そうできないこともよくある。すると、情熱が燃え尽き、自己が空洞化してしまうとの精神医学上の指摘も出ている。 推しのコミュニティーの同調圧力で、楽しみが義務となって疲弊するケースもある。推しに恋人ができようものなら喪失感は容易に攻撃性に転じ、SNSで誹謗(ひぼう)を垂れ流すことになりかねない。...
<春夏秋冬> どの戦争に 似ているか 酒井啓子
米・イスラエルによるイラン攻撃開始から、1カ月が経つ。1991年の湾岸戦争、2003年のイラク戦争に続くペルシャ湾岸地域での戦争なので「第3次湾岸戦争」と呼ばれることもあるし、1980―88年のイラン・イラク戦争を第1次として「第4次湾岸戦争」と呼ぶ者もいる。ホルムズ海峡の封鎖、カーグ島への攻撃などの展開を見ると、イラン・イラク戦争のデジャブか、とも思う。


防研セミナー 時代を読み解く シリーズ<51> 満州にみる東アジアの戦後秩序の原点
今月の講師 藤井元博氏 戦史研究センター 主任研究官 1986年5月生まれ、神奈川県出身。慶應義塾大学文学部卒業、同大学院文学研究科後期博士課程(史学)単位取得退学。2017年防衛研究所入所。専門分野は近現代中国の軍事史、政治外交史。主な業績に「中国国民党軍の終戦処理:対日反攻から接収へ」(『安全保障戦略研究』第1巻第1号、2020年8月)、「日中戦争期の華中・華南地域をめぐる中国国民政府の軍事体制:政治工作と軍事作戦の関係を中心に1938-1941」(『安全保障戦略研究』第2巻第2号、2022年3月) 満州の勢力圏化争う日・ソ・中 近年、国際秩序の不安定化とともに勢力圏をキーワードに国際情勢を語る議論が散見される。しかし東アジアに目を向ければ、戦後秩序の形成そのものが、勢力圏的発想と切り離せない形で進んできた。その縮図ともいえるのが満洲(中国東北地域)である。満洲は華北地域・シベリア・朝鮮半島・モンゴルと接続する多民族的な辺境地域であり、それゆえに近代以降の東アジアにおける角逐の舞台となってきた。そこで、終戦前後にさかのぼり、満洲から戦後東アジ


朝雲寸言(2026年3月26日付)
南北朝時代の若き公家武将北畠顕家の戦いを描いた小説がある。その冒頭近く主人公が陸奥守任官として東北に赴く場面に以下の文章がある。「(任地に赴く指揮官が)最初に戦わなければならない相手は配下につけられた諸将である」。 新任地に赴任する指揮官には克服しなければならない相手が三つあるという。一つ目はいつか戦うであろう敵である。二つ目は任地とその地域に生きる人々である。そして三つ目が指揮する部隊の隷下部隊長である。 今年も年度末の人事異動で多くの部隊長が着任された。初級幹部時代から自己研鑽(けんさん)を積み、要職を経て勇躍新任地に赴任された指揮官の方も多いであろう。新指揮官を迎える部隊も今度の指揮官がどんな人物なのか期待と不安を抱いていることだろう。 実力集団を任された指揮官に与えられた期間はおよそ2年、決して充分な時間ではない。その短い在任期間で部隊を鍛え、地域との連携を深め、有事即応の態勢を維持する責任が指揮官にはある。 ナポレオンの格言として知られる狼と羊の例え話は部隊が指揮官次第で良くも悪くもなるという組織運営の大原則である。...


時の焦点<国内> 日米首脳会談
停戦実現へ役割果たせ 中東の戦火はいつ収まるのか。日本は米国に何を言うのか。世界中が注目する中で行われた日米首脳会談において、両首脳はひとまずイラン情勢の安定に協調して取り組むことで一致した。国際法を軽視するトランプ米大統領との難しい会談を、高市早苗首相は無難にこなしたと言えるのではないか。 紛争の収束に向けたハードルは依然高い。日本は、停戦の実現に向けて米国と意思疎通を続けねばならない。平和の回復へ国際世論を喚起していくことも重要だ。 日米首脳会談がワシントンで約1時間半行われた。その後の夕食会も含め、計3時間、両首脳は中東情勢や対中国政策、日米同盟などについて協議した。 首相は会談の冒頭で、「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけだ」と述べ、トランプ氏をファーストネームで呼んだ。「諸外国に働きかけてしっかりと応援したい」とも語った。 首相としては、トランプ氏に寄り添う姿勢を示しつつ、停戦に関心が向くようにする狙いがあったようだ。これに対しトランプ氏は、「日本は責任を果たそうとしている。NATO(北大西洋条約機構)とは違う」と述べ、ホル


時の焦点<海外> 米とイラン戦争
3つの「地政学的勝利」 トランプ米大統領は3月11日、ケンタッキー州ヘブロンにおいて開かれた集会で、イランとの戦争に「我々は勝利した」と宣言した。 ホワイトハウスも同日、戦果の情報を更新し、▽イランの弾道ミサイルによる攻撃は90%減少▽5500以上の標的を除去▽制空権も確保▽イラン艦船60隻以上を沈没か破壊▽革命防衛隊海軍のソレイマニ級軍艦全4隻を破壊――と発表。 2月28日に開始した攻撃は最初の1週間で中東の再編だけでなく、世界のバランス・オブ・パワーを作り変えつつある。いわば「3つの地政学的勝利」である。第一には、イラン政権首脳部の殺害=トランプ米大統領は3月3日、米・イスラエル両国軍の攻撃で、イランの最高指導者ハメネイ師ら49人の指導者が死亡したと発表した。49人だけではない。ナシルザデ国防相、パクプール革命防衛隊総司令官、ムサビ総参謀長らも殺害された。 マドゥロ大統領拘束後のベネズエラ情勢で明らかなとおり、多数の政権主要幹部を消し去っても即座に新たな形での政府の誕生は保証されないが、イランの激震は事実だ。 イランは米国やイスラエルを標的に
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