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コラム


時の焦点<海外> 西洋と東洋
アジアは一つなり ニューヨーク・マンハッタンから198キロのロングアイランドの最北端モントークから見える大西洋は限りなく広大で壮観である。この対岸にマサチューセッツ州ボストンがある。 ボストン美術館中国・日本美術部長を務めた岡倉天心もまたこの広大な海を見ていただろう。同時に茨城県五浦の日本美術院の眼下に限りなく広がる荒波の太平洋の壮大さも天心の「アジアは一つなり」の思想を育んだに違いない。 美術家にして偉大な思想家でもある岡倉天心は、アメリカの哲学者アーノルド・フェノロサと共に日本の美術発掘に努めた。さらに中国美術視察やインドの美術品収集のために訪れたインドでは、詩人タゴールとも思想的交流を深めた。 天心は、鹿鳴館外交など行き過ぎた西洋文化至上主義に警鐘を鳴らし、東洋の思想、文化、美術こそが人間の精神の奥深さを示すものとして英文著作三部作『茶の本』『日本の覚醒』『東洋の思想』を著し、日本文化を世界に発信した。 同時代にやはり英文著作として世界的評価を得た内村鑑三の『代表的日本人』と新渡戸稲造の『武士道』もあったが、西洋文明に圧倒されている時代に、


朝雲寸言(2026年1月29日付)
2023年、国土地理院は日本列島の島の総数は1万4125島であると発表した。小欄の記憶によれば日本の島嶼の数は約6800島だったはずである。領土に大きな変化がない限り倍以上増えることはないはずだ。気になったので調べてみた。 過去の島嶼数は海上保安庁が1987年に調査した時のものだ。当時の海図や地図に基づいて数えたもので自然に形成され満潮時に水面上にある陸地が対象だった。 現在の島嶼数は国土地理院が航空写真や衛星画像を用いて周囲長100メートル以上の自然の陸地を数えた結果で、国土面積や領土・領海に影響を与えるものではなく数え方の精度が上がったことによるものである。 日本が島国であることは理解していたが我が国土がこれほど多くの島々から成り立っていることに改めて気づかされた。しかし海洋国家としてこれらの島々を上手く活用しているかと問われると疑問が残る。 現在、住民が居住する有人島は417島で継続的に減少し続けている。日本全体が人口減少局面に入ってからは減少速度が本土を大きく上回っているという。 離島は我が国の海洋資源確保の観点から重要な価値を有する。さ


防研セミナー 時代を読み解く シリーズ<49> 日本と同志国の防衛協力
――増大する重要性と日本の役割 今月の講師 小熊真也氏 防衛研究所 政策研究部 防衛政策研究室 研究員 1997(平成9)年生まれ、新潟県出身。国際基督教大学教養学部卒業、オーストラリア国立大学大学院修士課程(国際関係学)修了。2021年防衛研究所入所。専門分野は日本の安全保障政策、インド太平洋地域の安全保障、政策決定過程論。主な業績として、「防衛戦略の変化と継続性 ―2022年「国家防衛戦略」と新時代の防衛力―」(『安全保障戦略研究』第5巻第2号、2025年)など。 日本は諸外国と防衛協力を行っているが、特に近年活発になっているのが米国以外の「同志国」と呼ばれる国々との連携である。2022年に策定された国家防衛戦略では、「同志国等との連携」は防衛目標を実現するためのアプローチの一つに位置付けられている。 2つに大別される同志国との連携 防衛省・自衛隊が実施する同志国との協力は、目的の観点から大きく2つに大別することができる。 1つは武力を交えた有事の抑止や対処能力向上、一方的な現状変更を試みる挑戦国の牽制といった効果を期待するものである。...


時の焦点<海外> トランプ政権
「イラク症候群」の終焉 米軍のマドゥロ・ベネズエラ大統領拘束で、明確になった点が一つある。過去20年以上も米外交をゆがめてきた考え方「イラク・シンドローム(症候群)」は終わったということだ。 イラク戦争の失敗とその後の長期にわたる大きな損失を出した占領の結果、同症候群は出現した。端的に言うと、海外で軍事力を行使すれば泥沼にはまるのは必然という心理である。 ベトナム戦争当時を想起するとよく分かる。同戦争後、米外交方針は混乱。そして、敗北の理由は戦略の誤りではなく、そもそも戦うべきではなかったのだという論理が主流になる。 これが、米国は世界における役割を根本的に考え直すべきだとの主張に発展した。いわゆる「ベトナム症候群」の世界観で、米国は積極的な外交政策を取らずに、むしろ抑制か撤退すべしとする姿勢だった。 しかし、米のリーダーシップ不在に伴い、世界はとてつもない代償を払った。カンボジアでの大虐殺、ソ連軍のアフガニスタン侵攻、イランのイスラム政権誕生などだ。 1981年にレーガン政権が発足し、83年のグレナダ侵攻で同国に民主主義を復活させた。後継のブッ


時の焦点<国内> 衆院選公示
難局打開へ具体策を競え 国際情勢が激動する中、日本の針路を問われる衆院選が公示された。初の女性宰相を擁する自民党と日本維新の会の連立が、政権基盤を安定させられるのか。あるいは「中道」を掲げる新党が政局の主導権を握ることになるのか。力をつけつつある新興政党も無視できない。 民意が多様化し、多党化時代を迎えている。しかも与野党共に基本的に選挙協力を行っていない。このため衆院選の帰趨(きすう)は見通しにくい。有権者の選択はこれまで以上に重みを増していよう。 高市早苗首相は今回の衆院選について、自らが首相を続投して良いのか、それとも中道改革連合の野田共同代表らに代わるべきかを国民に問う機会と位置付けた。 高市内閣は高い支持率を維持しているが、自民の政党支持率はそれほど伸びていない。今回、首相が「首相選択選挙」の構図を強調しているのは、自らへの支持を自民の得票に結びつける狙いがあるのだろう。 中道改革は、高市政権の発足で日本が右傾化しつつある、と主張し、「右派か中道か」の選択という構図に持ち込もうとしている。党の綱領では「生命・生活・生存を最大に尊重する人


朝雲寸言(2026年1月22日付)
町の書店が減り続けている。1960年代をピークに漸減し、2000年代に入ってからの落ち込みが激しい。 一時期、2万店以上あったが、全国出版協会や出版科学研究所などの調べでは1万417店(2024年現在)。「書店ゼロ」の自治体数は全国1741市区町村の約27%超を占める(出版文化産業振興財団調べ)という。 そもそも圧倒的にもうからない。書籍の定価に対する利益率(粗利率)は出版社60~70%、取次約7~8%、書店約22%。家賃、人件費など運営経費を差し引いた営業利益率はわずか0~0,5%ともいわれる。 追い打ちをかけているのが、紙媒体離れの風潮だ。アマゾンで本や漫画を買い、スマートフォンで読む。読まないという活字離れも進む。 一方、苦境から新種が生まれている点も見逃せない。棚ごとに個人が店主となる「シェア型書店」、カフェを充実させ雑貨も販売する「ブックカフェ・複合型書店」、アートなどのジャンルを設ける「専門特化型・コンセプト書店」…。「蔦屋書店」や「大垣書店」などを思い浮かべてほしい。 新種の業としての成立を願うのはもちろんである。さらには書籍販売の


時の焦点<海外> 中央アジア
カスピ海ルートと一帯一路 昨年12月18~20日、中央アジア5カ国の首脳が来日し、初の日・中央アジア首脳会議が開催された。輸送路整備、気候変動対策、人的交流促進を重点協力分野とする「東京宣言」が採択された。 サプライチェーン(供給網)の強靱化を目指し、中央アジアからロシアを経ずに欧州を結ぶ輸送路「カスピ海ルート」の整備で日本が支援することになった。 しかし、すでに先行し南米にまで「一帯一路」を拡大し、急成長している「中欧班列」との関係に触れておらず、国際物流の要である中欧班列との調整がなければ「カスピ海ルート」の整備実現は困難なのではないか。 「中欧班列(China Railway Express)」とは、アジアと欧州間の国際定期貨物列車のことだ。中国の巨大港湾から陸揚げされたコンテナが、毛細血管のように張り巡らされた中国の鉄道網で天山山脈の北と南の回廊ルートを経て、中央アジアからカスピ海、黒海を通る。そしてイスタンブール、ミラノ、マドリード、デュッセルドルフ、ハンブルクなど欧州主要都市を横断する鉄道「ユーラシア・ランドブリッジ」の巨大なサプライ


時の焦点<国内> 日韓首脳会談
安保協力の進展に期待 韓国の李在明(イジェミョン)大統領が来日し、高市早苗首相の地元・奈良で日韓首脳会談が行われた。会談は日韓首脳が形式にとらわれず、両国を行き来する「シャトル外交」の一環。昨年8月に李氏が東京を、9月に石破茂前首相が釜山を、それぞれ訪問した。奈良での会談は、韓国側が提案したという。首脳間の個人的な信頼関係を築く狙いがあるとみられる。 今回の会談では、未来志向の日韓関係を目指すことをあらためて確認したほか、レアアース(希土類)など重要物資のサプライチェーン(供給網)に関する協力について意見を交わした。 台湾有事を巡る首相の国会答弁に反発している中国は、日本へのレアアースの輸出規制に踏み切った。 日本は韓国とも協力し、中国に依存せずに重要物資を確保できる多様な枠組みを広げようとしている。 日本を貶(おとし)めるため、中国は執拗に宣伝戦を繰り返している。中国の習近平国家主席は、訪日直前の李氏を急きょ国賓として招き、北京で首脳会談を行った。韓国と共闘することで、日本を孤立させる狙いが透けて見える。 実際、中国側は会談終了後に、習氏が「中


朝雲寸言(2026年1月15日付)
米国第5代大統領ジェームズ・モンローが欧州と南北米大陸の相互不干渉政策を打ちだしたのは1823年、今から200年以上前のことである。以来、米国は欧州の紛争に巻き込まれることを回避する一方で欧州各国の米大陸への介入を排除し中南米に対する勢力の拡大を図った。 1902年セオドア・ルーズベルト大統領は英独伊によるベネズエラ干渉を調停し、パナマの独立を支援し、ドミニカ共和国の保護国化など、こん棒外交と呼ばれる一連の外交政策によって南米への拡大関与政策を展開した。 特に大西洋と太平洋を結ぶパナマ運河を開通させ南北米大陸における制海権・通商権を完全に掌握して中南米諸国に対する支配と圧力を高めた。 その後、ウィルソン大統領の宣教師外交、フランクリン・ルーズベルト大統領の善隣外交と名前を変えながらも中南米は米国の裏庭であるという認識は変わることなく今日まで続いている。 新年が明けて3日、トランプ大統領はベネズエラの首都カラカスに対し大規模な軍事作戦を遂行してマドゥロ大統領夫妻を拘束し米国に移送・収容した。実は米国は1989年、パナマ侵攻作戦で同様の軍事作戦を遂行


朝雲寸言(2026年1月8日付)
新春の花の話である。京都・北野天満宮では、まず今月、蝋梅(ろうばい)が見ごろを迎える。花は淡黄色、ロウ細工風の透明感がある。濃密な芳香が特長だ。続いて寒空に凜乎(りんこ)とした紅白梅が咲きそろい、天満宮は3月下旬ごろまで馥郁(ふくいく)たる香りに包まれる。 折しも受験シーズンでもある。北野天満宮は、学問の神様・菅原道真公(天神様)を祀る天神信仰の総本社。合格祈願の絵馬が多数奉納されるだろう。東京・湯島天満宮でも同様の光景が広がる。湯島もまた梅の名所である。梅と道真は切っても切れない。 「東風(こち)吹かば 匂ひおこせよ梅の花 主(あるじ)なしとて春な忘れそ」。よく知られた菅原道真の歌である。左大臣藤原時平の讒言(ざんげん)で右大臣の座を追われ、九州・大宰府に左遷された後、詠んだとされる。 学問と政治に長けた道真は、時平にはさぞかし脅威だったに違いない。政治はしばしば学問を排除するものだ。 人形浄瑠璃文楽や歌舞伎でも採り上げられ、名作「菅原伝授手習鑑」に結実。道真(芝居では菅丞相)の政治的敗北の懊悩(おうのう)をよく描きだしている。それにしても、こ


第120回 相克するナショナリズム
満州事変(1931年)は、政府の統制を無視した関東軍の暴走によって引き起こされたとよく言われます。もちろん、それは事実ですが、政治学者馬場伸也の著書「満州事変への道」を読むと、関東軍の暴走だけを事変の原因だと見なすのは短絡的なようです。


防研セミナー 時代を読み解く シリーズ<48> 「能動的サイバー防御」
今月の講師 山口章浩氏 防衛研究所 政策研究部 サイバー安全保障研究室 研究員 1995(平成7)年生まれ、京都府出身。香川大学法学部法学科卒業、神戸大学大学院国際協力研究科博士後期課程単位取得退学。日本学術振興会特別研究員DC-1などを経て、2024年から防衛研究所。専門は国際法(国家責任法)、サイバー安全保障政策。主な著作として「武力紛争当事者による国際人道法の尊重を確保する第三国の義務」『六甲台論集』(22年)、「『能動的サイバー防御』導入と国際法上の評価――特に『アクセス・無害化措置』について」NIDSコメンタリー(25年)など。 攻撃元アクセスし協働で無害化措置 国家安全保障戦略で示されたサイバー安全保障の強化方針を制度化して、「能動的サイバー防御」関連法が5月に成立した。防衛省・自衛隊についても、今後は政府や重要インフラへのサイバー攻撃に対し、攻撃元のサーバーなどにアクセスし、無害化する措置を警察と協働して実施する役割を担う。


朝雲寸言(2025年12月25日付)
久しぶりに気の置けない仲間と会食する機会があった。いわゆる同期の飲み会というやつである。 参集の目的は参加者の快気祝いであった。二度の手術を経て退院を果たし、ようやく会合に出席できるほどに回復した友人を見て話題は必然的に健康に関することに集中した。 若いときは相当にむちゃをした仲間たちではあるが高齢者予備軍ともなれば身体のどこかに問題を抱えているのは当然のことだ。経験した病気や手術のことを忌憚(きたん)なく話せるのも濃密な青春時代を共有した仲間ならではのことである。 話題はすでに鬼籍に入った同期の話にも及んだ。先だった同期の数は年を追うごとに増える一方である。それでも多くの同期が現役を退いてもそれぞれの分野で活躍していることは同慶の至りというべきか。 若いときに集団生活の中でスポーツや訓練で身体を鍛え、勉学に励み、同期で切磋(せっさ)琢磨(たくま)した年月は確実にしぶとく元気な老人たちを生み出しているように思える。 すでに死語となった「若い時の苦労は買ってでもしろ」という格言は厳しい冷戦下を生き延びた仲間たちを見る限り的を射ているようだ。...


朝雲寸言(2025年12月18日付)
映画「国宝」が話題を集めている。歌舞伎界で繰り広げられる才能と血筋の相克、壮絶な野心の様相を描く映画である。 興行収入は177億円超(興行通信社調べ、12月7日現在)。日本の歴代興行収入ランキングで実写邦画のトップに輝いた。「国宝(観た)」は流行語に。社会現象化したと言っていい。 一般の男性俳優が歌舞伎を演じるという大奮闘が、若い女性を中心に人々の琴線に触れたのだろう。「京鹿子娘二人道成寺」「鷺娘」「曽根崎心中」など歌舞伎の名作の映像美も、目を引きつける。 映画館で女性客がこう言うのを聞いた。「歌舞伎って美しいものだったんだね」。日本人の歌舞伎再発見である。松竹関係者によると、東京・東銀座の歌舞伎座に若者客が増えているのだそうだ。 日本の伝統芸能・文化は世界的にも特殊だ。時代に寵愛(ちょうあい)され、様式を築いたジャンルは、おおむね時を超えて継承される。 先発は後発を否定しない。後発も先発を批判しつつも否定しきれず、共存する。貴族の雅楽は武家の能に否定されず、武家の能は庶民の歌舞伎に否定されない。いずれも現代まで続く。政治学者の丸山真男が語った「


朝雲寸言(2025年12月11日付)
冬の訪れとともに慌ただしい年末がやってきた。1961年のフィラデルフィア、感謝祭の翌日から始まる年末セールで住民が道路にあふれ交通渋滞と混乱が起きた。警察交通係が嘲笑的な意味でブラックフライデーと呼んでいることを地元の新聞が報じた。 以来、北米、欧州などで年末の在庫一斉セールをブラックフライデーと呼ぶようになった。我が国において大々的にブラックフライデーが始まったのは2022年のことである。 宅配サービスが一般化した我が国ではお歳暮商戦と相まって1年で宅配需要がもっとも急増する時期である。 国会では新内閣が打ち出す補正予算案の総額が18兆3034億円となり新型コロナ禍以降で最大の規模となった。特徴的であるのは8472億円を計上した防衛予算が結果として政府が掲げた防衛費の対GDP比2%を2年前倒しで達成したことだ。 有体に言えば冷戦時代、防衛費は常に叩かれ政争の具となってきた。年末、人件費が増加したため防衛費がGNP1%を超えそうになった時、止む無く導入予定の装備品を諦めたことさえあったと聞く。 時代の変化とはいえばそれまでだが過去を知る者から見れ
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