朝雲寸言(2025年6月19日付)
- 2025年6月19日
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更新日:6月8日

広島県福山市の山中で、住民が大規模な石積みの構造物を見つけたのは2009年のこと。専門家に調べてもらうと、江戸時代に造られた砂留(すなどめ)、つまり砂防ダムだと分かった。約1キロの谷沿いに大小36基が確認され、高さ18メートル弱、長さ約32メートルという巨大なものも。土木遺産「別所砂留」である。
岡山大の樋口輝久准教授(土木史)によると、一帯は今でこそ緑に覆われているが、江戸期は人口増加に伴う森林の乱開発ではげ山だった。大雨による土砂災害が頻発し、備後福山藩が集落や農地を守るために築いたという。「近世最大の砂防事業と言っていいでしょう」。
同様の土砂災害は全国的な問題だったらしく、幕府は早くも1666年に「諸国山川(さんせん)掟(おきて)」を発布し、草木の根の採取を禁止し、苗木の植え付けを奨励している。
別所砂留の状態は良好で、現在も砂防の役割を十分に果たしている。幾世代にもわたって維持・管理してきたのは住民たちだった。ところが近年は山林が放置され、その存在さえ忘れられていた。
再発見後、地元の人々は「別所砂留を守る会」を立ち上げ、ボランティアで保全活動に取り組んでいる。崩れた石積みの修復や草取り、市民向け見学会、小学校での出前授業。年9回の作業には毎回20~30人が参加する。
「自分たちの暮らしを守ってくれるものは自分たちで直す。市民普請(ぶしん)こそ本来の姿です」と樋口さん。雨音に身構える季節が、今年もやってきた。
(2025年6月19日付『朝雲』より)







