朝雲寸言(2026年4月2日付)
- 4月2日
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更新日:2 日前

「推し活」という言葉を聞いたことがあるだろうか。アイドルやアニメのキャラなど「推し」と呼ばれる存在を応援し、お金や時間、感情を投じる行為だ。
財務省広報誌「ファイナンス」によると、昨年時点で15~79歳の3人に1人が推しを持つらしい。民間の調査・研究機関「推し活総研」のデータでは年間4兆円規模の市場に急成長している。選挙すら推し活の構図に取り込まれているともいう。
打ち込む対象があるのは悪くない。知人の60代女性も最近アイドルの推し活に目覚めた。推しの話に目を輝かせているから、一種の若返り効果があるのかもしれない。
しかし、推しが人の場合、引退やスキャンダルなどの否定的変化が生じると、尋常ではない落胆につながる。別の推しに転戦できればよいが、そうできないこともよくある。すると、情熱が燃え尽き、自己が空洞化してしまうとの精神医学上の指摘も出ている。
推しのコミュニティーの同調圧力で、楽しみが義務となって疲弊するケースもある。推しに恋人ができようものなら喪失感は容易に攻撃性に転じ、SNSで誹謗(ひぼう)を垂れ流すことになりかねない。
この際、推し活の対象を自分にしてみてはどうだろう。英語力を上げる。筋肉を鍛えてもいい。知力、体力、胆力、理性、感性などを磨くのである。
人は生きる意志があれば、決して自分を見放さない。セルフ推し活には、自らの人生をこの上なく大切にするためのヒントがある。
(2026年4月2日付『朝雲』より)






