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コラム


時の焦点<海外> イランの経済
深い死のスパイラルに 米・イスラエルが2月28日に対イラン戦争を開始してから、約2カ月半。米海軍によるイラン港湾に対する海上封鎖と相まって、イランは重大な危機に陥っている。 米の制裁の影響ですでに崩壊状態だった経済情勢はさらに悪化し、通貨イランリアルは4月29日に1ドル=181万リアルと過去最安値まで下落した。今戦争中に外貨需要が積み上がり、停戦合意後に外貨が買われている。 米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」は4月29日、イラン経済の現状を“死のスパイラル”と評し、「国民は自国経済が死のスパイラルにはまった痛みをもろに感じている」と伝えた。確かに、経済の暴落は目を覆うほどで、ウィーン国際経済研究所のマーディ・ゴドシ研究員は同紙に「もはや生活は不可能。イランの現状はもっとも弱い状態にある」と語っている。 同氏の指摘通りで、「戦争開始以来、100万人以上が職を失った。製造業、小売業、鉄鋼や輸入原材料に依存する業種は全て、全土でビジネスは閉鎖された。エレクトロニクスは供給が乏しく、購入できない。食糧や医療品は一般家庭には手が届かなくなった。市民は


時の焦点<国内> 米比合同演習
本格参加を抑止力向上に 「海洋強国」を掲げる中国は軍の近代化を進め、東・南シナ海や西太平洋で挑発行為を繰り返している。アジアの安全を守るには、日米同盟を強化し、同志国との協力を深めることが重要だ。 米国とフィリピン両軍が主催する多国間の合同軍事演習「バリカタン」が、南シナ海などで4月20日~5月8日に行われた。豪州やフランス、カナダなども加わったこの演習に、自衛隊が初めて本格的に参加した。 陸海空の3自衛隊は、離島への上陸阻止を念頭に置いた訓練に加わった。陸自は、地対艦誘導弾の実弾射撃も行い、米比両軍などとの連携を確認した。サイバー防衛隊は、各国のサイバー部隊と図上訓練などを行ったという。参加した自衛隊員数は計1400人にのぼる。 実戦的な訓練を通じ、各国の装備品の運用状況や、指揮命令系統を確認できれば、有事の即応能力は高まるだろう。 イランを攻撃した米国は、アジアの戦力を中東に割いている。このためアジアに「力の空白」が生じかねないと懸念する声は多い。 日本は、アジアの安定に米国の抑止力が欠かせないことを粘り強く米国に説かなければならない。同時に


朝雲寸言(2026年5月14日付)
陸上自衛隊の装備品に84ミリ無反動砲という火砲がある。別名カール・グスタフ、スウェーデンが開発した肩撃ち式の無反動砲である。主として普通科部隊などが対戦車火器として使用するほか、地域目標の制圧、照明および発煙など軽量で操作容易な火砲である。 スウェーデンは1814年のナポレオン戦争終結後、国家の政策として中立を維持してきた。一方でスウェーデンは武器輸出国としても知られている。独自の運用構想に基づくグリペンと呼ばれる戦闘機や対空機関砲・無反動砲や哨戒艇などが有名で多くの国で使用されている。 平和的な中立国家でありながら積極的に武器を輸出するという政策は大いなる矛盾ともいえる。2024年のスウェーデンの1人当たりの武器輸出額は過去最高を記録し世界第3位となった。武器輸出は国際紛争を助長するという主張がある半面、自国の国防費を抑制し地域の抑止力を向上させるという側面がある。 それでもスウェーデンはロシアのウクライナ侵攻を受けてNATOへの加盟を決定した。200年間続いた中立政策の大転換である。中立を維持するのも他国と同盟を結ぶのも国家にとっては相応の覚
<春夏秋冬> アニメで士気高揚? 酒井 啓子
2月末に始まった米・イスラエルによるイラン攻撃は、ホルムズ海峡封鎖で世界経済に深刻な影響を与えている。戦争は予想に反して長期化しているが、この間イランが流している戦時広報ビデオがよくできている、と話題だ。


前事不忘 後事之師 第124回 バルト三国訪問記(3)
―リトアニアの防衛産業戦略 (主権的能力の確保)から学ぶ― 今年1月のバルト三国視察の目的は三国の防衛産業を調査することでした。リトアニアでは、国防省において防衛産業政策についての説明を受けました。国防省で受けたブリーフィングの冒頭で、「国防省の防衛産業政策の主目的は、軍の近代化とSovereignty Capability(主権的能力)の確保である」との説明がありました。


時の焦点<海外> イラン攻撃と核
瀬戸際に立つNPT 「核拡散防止条約(NPT)に加盟していて何かいいことがあるのか、というシニシズムが非核保有国に広がっている」。国連本部で4月末から始まったNPT再検討会議。それを前に日本記者クラブで会見した中満泉・国連事務次長はこう率直に語った。 ロシアのウクライナ侵攻や米国とイスラエルのイラン攻撃で、核を巡る状況は悪化の一途をたどっている。2015年、22年と過去2回の会議は核大国の対立で合意文書を採択できなかった。5月下旬までの今回会期でも不採択となれば、NPTは空洞化する。 1970年発効のNPT(加盟191カ国・地域)は、67年までに核を開発していた米露中英仏の5カ国のみに核保有を認めている。加盟国に原子力平和利用の権利を保障する一方、核保有国には「誠実に核軍縮交渉を行う義務」(第6条)を課すことで、5カ国の特権に不満を持つ非核保有国をなだめてきた。 ちなみに非加盟国のインド、パキスタン、イスラエルはNPTの枠外で核を開発し、北朝鮮は途中脱退して核保有国となった。NPTの限界が言われるゆえんだ。 今回のイラン攻撃はそのNPTの課題をあ


時の焦点<国内> 日本とNATO
装備品での相互協力を 北大西洋条約機構(NATO)に加盟する32カ国のうち、30カ国の大使らが韓国と日本を相次いで訪れた。NATOの訪問団としては異例の規模だ。 欧州各国のイラン軍事作戦への関与が不足しているとして、トランプ米大統領がNATO脱退を示唆する中での訪問でもあった。欧州各国は米国頼みを脱するため、米国以外との協力を模索している。 軍事分野で高い開発・生産能力を持つNATOとの連携は、日本にとっても安全保障に限らず、経済成長の後押しにもなるだろう。 日本への訪問では、茂木敏充外相と面会した。茂木氏が「欧州・大西洋とインド太平洋の安保は不可分だ」として、同盟国や同志国との連携の重要性を強調した。NATO側も「日本との協力関係を一層発展させたい」と応じた。 訪問団は小泉進次郎防衛相、赤沢亮正経済産業相らとも面会したほか、装備品を製造している大手電機メーカーの神奈川県内の工場や、米軍横須賀基地を視察した。韓国でも防衛産業の現場を視察したという。 ロシアによるウクライナ侵略以降、NATOは日本や韓国、豪州など、インド太平洋の国々との協力を進める


朝雲寸言(2026年5月7日付)
まぶしい青葉、道行く半袖姿の人々、入社したての新入社員。街にフレッシュな風が吹いている。だが、足元には不穏な動きも見える。 本人に代わって辞意を伝える「退職代行サービス」である。サービスが入社当日に始動した例もある。中には弁護士法に抵触する「非弁行為」の疑いがもたれる業者もいるという。便利で効率的なサービスの落とし穴だ。 もちろん、心身を病むような職場からは一も二もなく離れる必要がある。辞めさせない企業も厄介だ。サービスが力を発揮する場面かもしれない。 そもそも転職自体に非はない。充実した人生のための転職は、自己決定権の範疇(はんちゅう)にある。より高いポストや収入を求めて古巣から旅立つ層は、むしろ頼もしい。 だが、「思っていた仕事と違った」「なんとなく上司がうざい」という程度の所感からであれば、立ち止まるべきだ。そんな時、代行サービスを使おうものなら、どこかこそこそとした退職にならないか。その後の人生にプラスとは言えまい。 サービス利用で晴れて退職できたとして、次の会社は本当に好きな仕事をさせてくれるのか。結局、何度も利用する羽目にならないか。


防研セミナー 時代を読み解く シリーズ<52> 「東昇西降」をめざす 中国外交とその限界
今月の講師 増田雅之氏 防衛省 防衛研究所 中国研究室長 慶應義塾大学大学院博士課程単位取得後、2003年防衛研究所入所。政治・法制研究室長、アジア・アフリカ研究室長などを経て24年から中国研究室長。これまでアジア太平洋安全保障研究センター客員教授、イースト・ウェスト・センター訪問学者等を歴任。専門は現代中国の外交と安全保障。編著書に『大国間競争の新常態』や『ウクライナ戦争の衝撃』など。『不均衡なパートナーシップ―中国、ロシア、北朝鮮』(中国安全保障レポート2026)の執筆責任者。 グローバルサウスへの関与強化 2020年以降、習近平は中国共産党内において「東昇西降」(東側のパワーが上昇する一方で西側のパワーが衰退する)との認識に繰り返し言及してきた。20年10月や21年1月の党内会議で習近平は「東昇西降」に言及したが、これらの発言は公表されなかった。また国家安全部長の陳一新によれば、それらは将来の趨(すう)勢(せい)の見通しとして示されたものであった。 23年初め習近平は、改めて「東昇西降」に言及した。この際、習は将来の趨勢ではなく現状認識とし


時の焦点<海外> イスラエル
中東で唯一の米同盟国 イランとの戦争は、米国にとってイスラエルが中東で唯一の真の同盟国という現実をあらためて鮮明にした。 トルコ、サウジアラビア、クウェート、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)といった他の同盟国は、自国内の米軍基地の使用や領空の飛行も拒否。サウジが後に自国の空軍基地1カ所の使用を許可しただけだった。 米国は、原油・天然ガスの輸入でホルムズ海峡に大きく依存している欧州、アジアの同盟国が同海峡の開放に協力すると思っていたら、返事は「ノー!」。これに対しトランプ大統領は「ショックだ」「臆病だ」と反応した。 マクロン仏大統領は「現在の状況では、フランスは同海峡の開放作戦に参加しない」と宣言。そしてスペインと同様、仏の基地使用やイスラエル機への燃料補給のために仏領空を飛行することも拒否した。 トランプ氏は「協力的でない」と批判し、イスラエルも米に歩調を合わせ、国防省が3月31日、仏との軍事契約をすべて終了すると発表した。 スターマー英首相は「自国と同盟国の防衛のため必要な行動を取るが、広範に及ぶ戦争には引き込まれない」と言明。だが、在キプ


時の焦点<国内> NATO大使来日
防衛協力深めたい 北大西洋条約機構(NATO)に加盟する32カ国中、30カ国の大使らが来日し、茂木外相や小泉防衛相らと会談した。来日前には、韓国も訪問したという。NATOの訪問団としては異例の規模だ。 米国が国際秩序に背を向け、世界中に動揺が広がっている。トランプ米大統領は、イランに対する軍事作戦を巡り、欧州各国が非協力的なことに不満を示し、NATO脱退までちらつかせた。米国をもはや予測不能な「Rogue State」(ならず者国家)と呼ぶ日本の外交官もいる。 欧州各国は、これまでのように米国を頼った安全保障は成り立たないと考えているという。アジアを含めて国際社会の安定を図るには、日韓両国との協力が不可欠だとみているようだ。 日本にとっても軍事分野で高い開発・生産能力を持つNATOとの連携は、抑止力を高めることにつながる。 日本は多国間協調の枠組みとの協力を深め、紛争防止に努めなければならない。自由貿易や法の支配といった秩序の回復に努めることが大切だ。 茂木敏充外相はNATO大使らとの会談で、「欧州・大西洋とインド・太平洋の安全保障は不可分だ」と
<春夏秋冬> アメリカよ、 どこにいく 前嶋和弘
はじめまして。今回から「春夏秋冬」を担当させていただく前嶋と申します。アメリカの政治外交を専門とする政治学者です。 そのアメリカ。皆さんにおそらく共通するのが次のご意見ではないでしょうか。「アメリカよ、どうなってしまったのだろう」


朝雲寸言(2026年4月23日付)
2016年4月、熊本県で地震が発生した際に動物園からライオンが逃げ出したという情報が画像付きでSNSに投稿された。投稿は1万回以上リポストされ、動物園には問い合わせの電話が殺到した。 24年8月、水平に広がる「地震雲」と呼ばれる雲の画像と共に「巨大地震が来る」と発信された偽情報が拡散した。南海トラフ地震の臨時情報が発表された直後のことだった。 雲が地震の前兆となることはない。しかし偽情報は瞬く間に日本各地に広まった。まさにSNSの広がりの凄さを認識させられた出来事だった。 ユネスコは偽・誤情報を三つに区分している。(1)偽情報:個人、社会、組織または国に危害を与えるため、虚偽かつ故意に作成された情報(2)誤情報:虚偽の情報であるが危害を引き起こす意図で作成されたものでないこと(3)悪意ある情報:事実に基づく情報を個人、組織または国に危害を加えるために使用すること。 認知戦とはSNSやAI技術を駆使して敵対国や世論の「認識・心理・感情」に働きかけ、物理的な戦闘なしに相手の意思決定や行動を自分に有利な方向へ誘導する戦略的な情報戦をいう。現代の戦争は私


時の焦点<海外> 米国の戦争
チャーチル不在の悲劇 まるでジャズの即興演奏のように、先が読めないトランプ米大統領の言動。イランとの停戦の行方もなお霧の中だ。 トランプ氏の頭にあるのは、政治日程だろう。5月の米中首脳会談、7月の建国250年、11月の中間選挙。直近には4月27日のチャールズ英国王の国賓訪問が控えている。英国王とのツーショットは「私たちに国王はいらない」デモへのあてこすりとなる、トランプ氏の晴れ舞台だ。 米英両国は第2次大戦後、長く「特別な関係」と呼ばれてきた。「血は海水より濃い」と語り、ルーズベルト米大統領との友情を育んだチャーチル英首相が源流だ。 人種・言語・文化を同じくするアングロサクソン同盟は、戦後世界の自由と秩序の支柱となってきた。ジョン・ミーチャム元ニューズウィーク誌編集長は、著書「フランクリンとウィンストン」で「米国の大統領と英国の首相がキャンプデービッドの森を散策し、大西洋を挟んで電話で話す時、2人はルーズベルトとチャーチルのスタイルと影の中でそうしているのだ」と指摘する。 その米英関係はいま、大きな岐路にある。 軍事経済両面で米英の格差が拡大し、


時の焦点<国内> 即応体制の強化
抑止力の確立を急げ 周辺国の軍拡が進む中で国民の命と暮らしを守り抜くためにはミサイルによる迎撃に加え、相手の拠点を無力化する反撃能力を備える必要がある。自衛隊が有事に即応できるよう体制の整備を急がねばならない。 陸上自衛隊が、敵の射程範囲外から攻撃できる国産の「スタンド・オフ・ミサイル」を、熊本県の健軍駐屯地と静岡県の富士駐屯地に配備した。 熊本には、「12式地対艦誘導弾能力向上型」から名称変更された「25式地対艦誘導弾」が配備された。 射程は1000キロメートルを超え、中国沿岸部や北朝鮮にも到達するとみられる。この誘導弾の配備により、日本を狙って弾道ミサイルなどが発射された場合、その拠点を叩くことが可能になる。 一方、静岡に配備した「25式高速滑空弾」は、迎撃されにくい高高度を超音速で飛ぶ点が特徴だ。射程は数百キロメートルだという。主に離島防衛に活用する方針だ。 今回の配備により、自衛隊は初めて反撃能力を持つことになった。ミサイルを発射する敵基地を、直接破壊することが可能になる。 ミサイルは今後、北海道や宮崎県の陸自駐屯地にも配備される。海自の
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