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朝雲寸言(2025年6月5日付)

  • 2025年6月5日
  • 読了時間: 2分

更新日:6月8日


4月に死去したリチャード・アーミテージ元米国務副長官は映画「ランボー」のモデルの一人と言われた。アメフトや筋トレで鍛えた分厚い胸板といかつい顔だけでなく、経歴もランボーそのものだ。


アナポリスの海軍兵学校を卒業後、ベトナム戦争に3度従軍。1975年のサイゴン陥落の際には、南ベトナム軍の将兵や家族ら約3万人を国外に脱出させるという困難なミッションを担った。この屈辱的な敗走体験が、日米同盟の強化を繰り返し訴える原点だったという。


生粋の共和党員だが、同盟をないがしろにするトランプ氏嫌いでつとに知られた。「彼は本物のビジネスマンじゃない。ビジネスマンは長期的な戦略を持っているが、彼は目先の利益しか考えていない」と公言し、過去3回の大統領選ではいずれも民主党候補への支持を表明している。


そのアーミテージ氏が晩年、バンス副大統領の自伝『ヒルビリー・エレジー』を熟読するよう周囲に勧めていたと聞き、意外に思った。ラストベルト(さびついた工業地帯)を舞台に、繁栄から取り残された白人労働者がなぜトランプ信奉者になったかを浮かび上がらせたベストセラーである。


バンス氏は言う。「共和党も民主党も数十年にわたって白人労働者の期待に応えなかった。トランプ氏は少なくとも問題の所在や深刻さを理解していた」


国内問題をおろそかにするな――。これが、希代の外交家の遺言だったのかもしれない。


(2025年6月5日付『朝雲』より)

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