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コラム


防研セミナー 時代を読み解く シリーズ<55> DICASの安全保障上の含意
今月の講師 神宮司覚氏 防衛研究所 政策研究部 グローバル安全保障研究室 室長 1996年千葉大学卒、2003年東京大学大学院博士課程中退(経済学修士)。同年防衛研究所に入所。主任研究官、社会・経済研究室長を経て2026年より現職。その間、防衛省防衛政策局防衛政策課、内閣官房副長官補付に出向、豪国防大学、英国シェフィールド大学東アジア研究科に留学(東アジア修士)。専門は防衛産業の国際政治経済、経済と安全保障、東南アジアの軍近代化等。 2026年4月、青柳防衛装備庁長官とダフィー米国戦争次官は米国内で第4回「日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議(DICAS)」を開催した。両国は取り組みが具体的な実行段階に移ったとして同協議を「DICAS2・0」と位置付け、関係が新たなフェーズを迎えたことを印象付けた。本稿ではこのうち迎撃ミサイルと艦船維持整備に焦点を当て、その国際的な背景と含意について解説する。 迎撃ミサイル 長距離打撃能力が世界的に拡散する中、米国製迎撃ミサイルへの国際的な需要は急増している。ウクライナ支援や中東配備部隊での使用、湾岸諸国への


時の焦点<海外> 対イラン戦争
米、全面攻勢の方向か 米・イラン戦争は2026年2月28日の開戦以来、およそ150日が経過した。このうち、実際に爆撃による攻撃の応酬が展開されたのは実質的に40日間。あとの110日間は停戦・和平交渉で、この間にミサイル発射やドローンによる攻撃もあったが、大部分は交渉に費やされた。 トランプ大統領の政治戦略は、与党・共和党が両院で多数を占める現状の維持だ。11月の中間選挙で民主党が下院で多数派になれば、政権のイニシアチブは“化石化”され、自身の「弾劾」も確実となる。 そのため、同大統領のポイントは、(1)イランは核兵器製造能力を持たない(2)湾岸全域にミサイルを発射する能力を持たない(3)ホルムズ海峡を封鎖する能力を持たない――を確認することだった。 しかし、交渉を重ねるうち、イラン側の引き延ばし戦略も明確に…。 ―この戦争を長引かせ、ミサイル発射で交渉を何度も中断させ、米の報復を乗り切れば、米中間選挙まで持ちこたえられる。 ―そうなれば、米民主党が下院で優位を奪還し、議会はトランプ政権のイラン戦争継続に必要な資金を配分しないだろう。もっと重要なの


<春夏秋冬> 「NATO3.0」と日米同盟 前嶋和弘
月上旬に開かれた北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議は集団防衛義務を再確認する首脳宣言を採択し、結束を演出しました。ただ、NATO脱退を持論とするトランプ大統領の脱退宣言が現実にならなかったことが各国にとっての「最大の成果」だったように思えます。 この会議を規定したともいえる「NATO3.0」という言葉があります。米国防総省のコルビー国防次官(政策担当)が今年2月、NATO国防相会合で唱えた概念です。 「1.0」は東西冷戦期に旧ソ連の脅威に備えるために米国が欧州防衛の中核を担った時代。「2.0」が冷戦後にNATOが加盟国以外も含めた対テロや平和維持活動に従事した時代。そして、「3.0」とは米国が中国との覇権争いのためにインド太平洋など他地域に政治・軍事資源を移す時代です。昨年末に公表した国家安全保障戦略の本土防衛と西半球重視の方針と一致します。 コルビー次官は「1.0」の時代が理想的だったと。加盟国は率先して行動し、米国の過度な負担とならなかったためです。 ウクライナ侵攻の次のロシアの動きを警戒する欧州諸国にとっては、トランプを怒らせて、NAT


時の焦点<国内> 日・ASEAN
対中抑止へ連携深めたい 東・南シナ海での中国の威圧的な行動が、アジアの安全を脅かしているのは明らかだ。高市内閣を「新型軍国主義」と批判しているのも的外れで、到底看過できない。日本は、米国やアジアの同志国などと連携を深め、中国に対処する必要がある。 東南アジア諸国連合(ASEAN)関連外相会議がマニラで開かれ、日本や米国、中国などの関係国も出席した。 一連の会議では、強引な海洋進出を続ける中国に対し、日米両国やフィリピンなどから懸念が示された。 中国は今回の会議直前にも、スプラトリー(南沙)諸島で比軍と衝突し、比側に負傷者が出た。ルビオ米国務長官が中国の王毅外相に冷静な対応を求めたのは当然だ。 南シナ海のほぼ全域に権益が及ぶなどとする中国の主張は、2016年にオランダ・ハーグの仲裁裁判所が退けている。 日米比などの14カ国は今月、判決から10年となることを踏まえ、判決を支持する共同声明を発表した。だが、中国はこれまで通り、判決を「紙くず」と呼び、受け入れを拒否している。 南シナ海は重要な海上交通路(シーレーン)だ。偶発的な衝突が起きて自由な航行に障


<春夏秋冬> 韓国人の矜持としての サッカーW杯 平岩俊司
朝から晩までサッカーである。世界中がワールドカップに熱狂しているのだろう。私のような関心のない人間でさえ、白熱したゴールシーンに思わず声が出る。そんな魅力がサッカーにはある。だからナショナリズムを刺激し、時に過度な反応が出てしまう。大統領が代表監督を批判し、サッカー協会会長と監督の国会公聴会まで行われる韓国がまさにそうだ。 韓国人の誇りは2002年ワールドカップでベスト4となったことだ。意外かも知れないが、それまでアジア最高位は北朝鮮だった。参加国数も制度も違うが、1966年のロンドン大会で北朝鮮はベスト8となり、奇跡と称された。 だからこそ韓国は北朝鮮を超えたかったはずだ。それが2002年のベスト4だ。友人の何人かが「北朝鮮を超えた」と興奮していた。すべての韓国人がそれを意識したとは思わないが、多くの韓国人にとっては南北関係の文脈でもサッカーは格別なのだろう。 サッカーを通した南北交流もあった。世界的冷戦終結の潮流のなかで、1990年にソウルと平壌でサッカー親善試合が行われた。結果は1勝1敗。そして91年ワールドユース選手権(現U―20W杯)で


時の焦点<海外> 北朝鮮の核
宙に浮く非核化の道 イラン戦争が世界の耳目を集める陰で、北朝鮮による核戦力増強が着々と進んでいる。「イランの核開発阻止」だけに焦点があたり「北朝鮮の核開発阻止」が声高に叫ばれない状況は、看過するにはあまりに危険すぎるのではないか。 6月の主要7カ国首脳会議(G7サミット)の首脳声明は北朝鮮の核に「深い懸念」を表明し、北朝鮮に対して「完全な非核化」へのコミットメントを求めた。 だが米国はイラン戦争の後始末に精一杯で、欧州はウクライナ情勢とロシアの脅威への対応に神経を注がざるを得ない。かつては米中露日韓に北朝鮮を加えた6カ国協議が外交解決を目指したが、北朝鮮の核実験や弾道ミサイル発射を受けて20年近くも休眠状態にある。言葉だけ「非核化」を求めたところで担保する枠組みもないのが現実だ。 憂慮すべきは、周辺大国に北朝鮮の非核化実現への強い意欲が見られないことである。 中国の習近平国家主席がG7サミットの直前に北朝鮮を訪問。金正恩朝鮮労働党総書記との会談発表に「非核化」への言及はなく、黙認したかのような印象を与えた。ロシアは北朝鮮と事実上の同盟条約を結び、


朝雲寸言(2026年7月16日付)
「ネガティブ・ケイパビリティー」という言葉がある。「消極的能力」とでもいうのだろうか。もともと、はかなくもみずみずしい名作を繰り出した英ロマン派の夭折詩人ジョン・キーツが提唱した。キーツの代表作の1つ「ナイチンゲールに寄せる」には、この考え方が如実に反映されている。 不確実な問題に直面した時、性急な解決を避け、判断留保のまま、宙に浮いたまま、その不気味な重みに耐える能力のことをいう。VUCA(ブーカ)と呼ばれる先行き不透明で正解のない現代、ビジネスリーダーシップ分野や医療・教育の現場で注目されている概念だ。判断ミスや思考停止を防ぎ、粘り強く考える力として評価されている。 面の皮の厚い「鈍感力」とは違う。審議を不毛な議論で空転させる引き延ばし術とも違う。「そのうち別の事件や事故が起きて、うやむやになる」など時の経過頼みの姿勢とも大いに異なる。 例えば、この能力は、組織の危機管理などで問われる。不祥事に際し、すぐに「犯人捜し」をして原因を特定するのは一見、リーダーシップの発揮に見える。が、そこに落とし穴が潜む。複雑な事情を踏まえずに即断すると、致命的


時の焦点<国内> 日印首脳会談
相互協力さらに深めよ 新興・途上国の盟主として台頭するインドとの関係を深めていくことは、日本が提唱する「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を実現する上でも重要だ。 日印の相互協力をさらに深め、地域の安定につなげていく必要がある。 高市早苗首相がニューデリーを訪問し、インドのモディ首相と約1時間半、会談した。 会談後の共同記者発表で、高市首相は「(インドは)信頼のパートナー。隣人関係を新たな高みへと引き上げていく」と語り、モディ首相は「両国の取り組みがインド太平洋地域全体の平和、安定、そして進歩への道を切り開く」と応じた。 高市首相は、日本企業が総額2兆円の事業を実施する考えを表明した。環境負荷が小さいバイオガスのプラント1000基を整備する枠組みの創設などが含まれている。 両国は、昨年8月のモディ首相訪日時、10年間で10兆円というインドへの投資目標を定めた。高市氏は今回の訪印に際しても約80企業を同行させるなど、積極的な投資姿勢をアピールした。 14億超の人口を擁し、経済成長も著しいインドは、日本にとって魅力的な市場だ。IT技術の水準も高


朝雲寸言(2026年7月9日付)
「ヤルタからマルタまで」という成句は冷戦の始まりと終わりを表している。ヤルタ会談は1945年2月、マルタ会談は89年12月、冷戦の期間はほぼ半世紀である。 振り返れば米ソが対立していた戦後の半世紀は比較的安定した時代であったと言える。この冷戦間に我が国は戦後復興を成し遂げ世界第2位の経済大国に成長した。世界が混乱していれば我が国の高度成長は違ったものになっていただろう。 明治維新以降、軍拡と領土拡張を通じて世界の列強に肩を並べようとしていた我が国は敗戦後、国家の姿勢を180度変換した。日米同盟の下で平和で豊かな国家を目指したのである。 しかし今、時代は大きく変わった。冷戦という大きな枠組みは崩壊し多様で不安定な対立と混乱の時代に我々は生きている。 それでもいまだに時代の変化を認識しない人々が多くいる。安定した過去に固執し厳しい現実を見ようとせず変化を拒絶する人々がいる。 人の意識が変わることは難しい。企業や組織が衰退する最大の要因は過去の成功に溺れ変化を受け入れ ようとしない人々がいるからだと言われている。環境の変化に適応するためには世代交代とい


時の焦点<海外> 交渉パターン
米「合意」、イラン否定 米・イラン交渉を眺めていると、確たるパターンの存在に気付く。米側が「合意」と発表すると、イランは否定。あまりに頻繁なので、米国が意図的にミスリードしているのか、抵抗を続ければ強さの証明になるとイランが勘違いしているのか。 最新例その1―。バンス米副大統領は6月24日、プレス向け声明で「米国は、交渉に進展があればイランの凍結資産の一部解除に同意した。資金は米農産物の購入に充てられる」と確認。トランプ大統領が23日、自身のSNSで、解除された資金は米国産物資の購入に使用されると発表していた。 しかし、イランのガリバフ国会議長とヘンマティー中央銀行総裁は23日、直ちに「イランは米国産品を購入する義務はない」と合意を否定し、トランプ氏に反論した。 その2―。両国は21日にスイスで交渉を開始。しかし、イランはトランプ氏が同国を威嚇したとして協議を離脱したとの一部報道。バンス氏はフェイクニュースと説明したが、イラン代表団は自国メディアに「威嚇は覚書の第1項目に違反」とし、協議離脱をPR。 その3―。「イランは核査察の受け入れに同意した


時の焦点<国内> 国会空転
重要法案を蔑ろにするな 国会が空転していたら、象徴天皇制の根本に関わる法改正や、民主主義の土台に影響を与える議員定数の削減案など、重要法案の審議がないがしろにされかねない。与野党は、国民の負託に応えることを最優先に事態を打開すべきだ。 7月17日の今国会の会期末に向けて、与野党の駆け引きが激化している。与党は皇室典範改正案のほか、衆院議員定数削減法案、副首都構想の関連法案を成立させたい考えだが、野党は定数削減や副首都構想に反発し、審議を拒否した。 いずれの案件も丁寧な審議が欠かせない。十分な審議時間を確保するため、国会を延長するのは一案だろう。 政府・与党が最も重視しているのは、皇室典範改正案だ。改正案は、戦後に皇籍を離れた旧11宮家の男系子孫である一般男性を皇族の養子に迎えて皇族とする仕組みと、女性皇族が結婚後も皇室に残る制度が柱だ。ただ、いずれも問題を抱えている。 改正案では、養子本人には皇位継承資格を認めない一方、養子が皇族となった後に生まれた子が男子なら継承資格を持つ、という規定を設けた。政府内では旧宮家の男性が皇族の養子となった後、一般


<春夏秋冬> ワシントンDC(その一) 鈴木敦夫
1989年7月、1年間を条件に防衛庁から留学させてもらえるという幸運を得た。行き先は米国ワシントンDCにあるジョージタウン大学。その後出張で何十回と訪れるDCであるが、この時が初めてであった。 当時は、日米貿易摩擦の真っただ中、日本企業によるロックフェラー・センター買収、防衛面ではFSX(次期支援戦闘機)を巡る日米交渉など、良きにつけ悪しきにつけ、日本・日本人が米国で大変注目されていた。当時の私でも入学が許可されたのはこうした背景があると思う。 大学では国家安全保障学修士を取得できたが、国際関係論や外交史だけでなく、防衛に関する講座の充実ぶりも私には極めて新鮮であった。ただし、末期とは言え冷戦中である。米国以外の地域研究は、少数の中南米の講義を除けば、ほぼソ連に関するものばかり。ソ連軍の軍事ドクトリン、ソ連の対東欧外交政策、WTO(世界貿易機関ではなくワルシャワ条約機構である)。まだ、少なくとも安全保障面では、中国も北朝鮮も登場していなかった。中国は同年6月に天安門事件を起こしたばかりである。当時のジョージタウン大学の名物教授の一人に、後に国務長


朝雲寸言(2026年7月2日付)
「だって言うじゃない、被害者にも非があるって。だまされる側も悪いということよ」。何げない日常、公然と大声でなされた喫茶店での会話である。筆者は発言の主である50代女性の顔をまじまじと見てしまった。 これから詐欺まがいのことでもしでかすのかという勢いがあった。事後に起きる非難の声を予防しようとしているかのようだった。 では、問いたい。例えば北海道旭川市で起きた女子高校生殺害事件について、被害者の女子高校生にも非はあったと思うのか。いじめを受ける小学生、ドメスティックバイオレンスを受ける妻、子ども、夫らに落ち度を勘ぐるのか。自死に追い詰められる多額詐欺の被害者を自業自得と白眼視するのか。殺害されたり心身を害されたりだまされたりするべき理由のある人間は誰一人いない。 心理学の「公正世界仮説」によれば、人は「世界は安全・公正だから被害者にも何か原因があったはずだ」と無意識に捉えてしまうのだそうだ。被害者非難を助長する陥穽(かんせい)である。 おぞましい心理的バイアスはSNSで異常に肥大化し、普通の倫理感覚を駆逐しがちである。いつの間にか加害行為の可罰性は


前事不忘 後事之師 第126回 中国人民解放軍
今から20年以上前のことですが、当時の石破茂防衛庁長官が訪中し、曹剛川国防部長と会談されました。防衛庁の広報課長だった私も随行しましたが、とても興味深いことがありました。 中国側の接遇によって、人民解放軍の陸、海、空の部隊を視察する機会があり、北京近郊の陸軍部隊を訪れた時のことです。解放軍が保有している装備品を見せるのだろうと想像していたところ、旧式の戦車を見せたのは視察の最後で、冒頭に見せたのはなんと解放軍が経営している養豚場とハム工場でした。 中国側の説明によれば、人民解放軍はその創設以来、「民衆から略奪しない、民衆から借りたものは返す、農作物は傷つけない」という「三大規律」を定め、この規律を実践するため、解放軍は軍隊であると同時に生産組織とのことです。 実際、解放軍は農業、畜産、衣料生産、兵器の簡易製造や修理、医療などを自ら行っています。私は建軍以来の伝統を維持していることに感心しましたが、歴史は、良き動機から始められたことがしばしば時代の経過と共に悪弊に変わることを教えています。 人民解放軍もこの教えに従ったようです。1980年代の鄧小平


時の焦点<国内> 宇宙政策と防衛
監視機能を強化せよ 航空自衛隊を航空宇宙自衛隊に改編するための改正防衛省設置法が成立した。 防衛省は速やかに新組織を発足させる。自衛隊の名称が変更されるのは、1954年の陸海空3自衛隊の発足以来、初めてのことだ。 2020年の発足当初約20人だった宇宙領域の専門部隊の名称は、今年度中に「宇宙作戦集団」となり、880人に増員される。 空自が任務を宇宙に広げるのは、中国やロシアが他国の宇宙システムを妨害する「キラー衛星」などの能力を高めているためだ。キラー衛星は相手国の衛星をロボットアームで妨害したり、電磁波などで無力化したりする。 中露両国はキラー衛星の開発を進め、衛星同士を近づける実験を繰り返している。中露はまた、それぞれ自国の衛星を他国のものに見立ててミサイルで破壊する実験を行い、攻撃の有効性を確認したようだ。 日本の衛星が攻撃されれば、国民生活の機能が損なわれるだけでなく、衛星による監視・偵察を通じた自国の防衛もおぼつかなくなる。キラー衛星などへの抑止力を高めることは不可欠だ。 自衛隊は23年から、宇宙領域把握(SDA)と呼ばれる任務を実施し
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