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朝雲寸言(2025年12月4日付)

  • 2025年12月4日
  • 読了時間: 2分

更新日:6月8日


最近、西広整輝さんのことが思い出されてならない。1988年に防衛庁生え抜き組で初の事務次官になり、「ミスター防衛庁」と呼ばれた。防衛課長時代の76年、必要最小限の防衛力保有をうたった最初の「防衛計画の大綱」(51大綱)を書いたことでも知られる。


40年ほど前、西広さんを囲む月例の勉強会に参加していた。メンバーは若手研究者やジャーナリストら十数人。議論が深夜に及び、西広さんが「今夜は野宴(やえん)をやろうや」と、大鍋をコンロにかけてスルメ酒をふるまってくれたこともあった。


ある時、日米安保体制以外の選択肢があるか否かでメンバー同士のブレーンストーミングがあった。結論は、理屈の上では(1)通常兵器による自主防衛(2)核武装を伴う自主防衛が考えられるが、前者は装備にカネがかかり過ぎ、後者は国民世論が許さない。「従って日米安保を基軸とする現体制がベスト」というものだった。


すると、それまで黙って聞いていた西広さんが「ソ連との同盟は?」。米ソ冷戦の真っただ中である。冗談でしょうと笑っていると、「じゃあ、米軍がアジアから撤退したら? いまの自衛隊だけでソ連と戦えますか?」と真顔で語ったのを覚えている。


要は、国際社会に絶対はない、何があっても慌てぬよう警戒と備えを怠るな、という戒めだったのだろう。亡くなって今年でまる30年。いま頃は泉下で「ほら、言わんこっちゃない」と舌打ちしているかもしれない。


(2025年12月4日付『朝雲』より)

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