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コラム


朝雲寸言(2026年2月26日付)
ロシアがウクライナに軍事侵攻を開始したのは2022年2月24日早朝のことである。戦争は5年目に突入した。侵攻開始当時、戦争がこれほど長期にわたることを予測した専門家は小欄も含め少なかった。ロシアとウクライナの戦力差が歴然であったからである。 戦争の長期化は国力を衰退させる。それが大国の場合、世界に与える影響は甚大である。米国の場合、ベトナム戦争は8年に及んだ。長引く戦争は結果的に米国の絶対的な経済・軍事的優位を低下させ米国衰退の始まりをもたらした転換点となった。 ソ連の場合、1978年のアフガニスタンへの軍事侵攻は11年に及んだ。この戦争がなくともソ連は崩壊したかもしれない。しかし戦争がソ連崩壊を加速させたことは間違いない。 ウクライナ戦争の場合、ロシアにはソ連時代からの装備品・弾薬の大量の備蓄があった。だが、4年が経過しロシアの兵器備蓄は物理的限界に近付いている。何より増え続ける人的損耗はロシアを着実に苦しめているように見える。 そしてウクライナ戦争は我が国の安全保障に多大な影響を及ぼした。ドローン兵器、サイバー、宇宙、電磁波領域などの新しい脅
時の焦点<海外> 苦境のキューバ
「同盟国」はどこへ? 支援が必要なこの時に同盟諸国はどこへ行ったのか? 現在、キューバ政府の胸中はこんな感じだろう。同国に石油を供給しようとする国には関税を発動する(1月29日・トランプ米大統領が大統領令に署名)という圧力など、トランプ政権の対キューバ政策が狙い通りに効いてきたのだ。 同国の石油不足は深刻で、インフラの崩壊も進む。学校の授業も病院の手術もキャンセル。ホテルも閉鎖され、国際ビジネスや大使館は人々に早期出国か電気と水のない生活が長期間続く事態に備えるよう警告している。 しかし、出国についてはそう容易ではないのが現状のようだ。政府は飛行家に対して、国内9カ所の飛行場で航空機の燃料補給はできない旨を公式に通告。その結果、主要航空会社のフライト削減やキャンセルに発展し、旅行客が取り残されるなどの混乱が起きている。 例えば、カナダの航空最大手エア・カナダは2月9日からキューバ便の運航を停止する一方、キューバで立ち往生のカナダ人約3000人の出国のために“カラの便”を飛ばす。また、スペイン第3の航空会社エア・ヨーロッパは、マドリード―ハバナ便の
時の焦点<国内> ミュンヘン会議
米欧の溝埋める役割を果たせ 自国第一を掲げるトランプ米政権と欧州との距離が広がり、ウクライナを巡る和平交渉の行方も不透明な状況だ。日本は米欧との関係を強化し、双方の溝を埋める努力を続けねばならない。多国間の協力体制の構築にも努める必要がある。 ドイツで、世界各国の首脳や外相、国防相らが参加する「ミュンヘン安全保障会議」が開かれた。主要なテーマとなったのは、ロシアのウクライナ侵略である。 ウクライナと米国、ロシアは現在、和平交渉を行っている。安保会議に出席したゼレンスキー大統領は「米国は譲歩をロシアではなく、ウクライナの文脈で語ることが多すぎる」と述べ、和平交渉で譲歩を促す米国へのいらだちを示した。 米国はウクライナに対し、東部ドンバス地方を非武装化するよう求めている。ドンバス地方を「自由経済圏」とする構想も浮上しているが、ウクライナとロシアのどちらの法制度に基づく経済圏なのかは、定かではない。このためウクライナは、領土や主権が脅かされるのではないか、と警戒している。 侵略した側のロシアに「戦果」を与えるようなことがあってはならない。国際社会全体で
防研セミナー 時代を読み解く シリーズ<50> 韓国のWPS政策
今月の講師 小池修氏 防衛研究所 政策研究部 防衛政策研究室 研究員 京都生まれ横浜育ち。東京大学教養学部卒業後、同大学院総合文化研究科地域文化研究専攻修士課程修了、博士後期課程単位取得満期退学。専門分野は韓国の外交・安全保障政策。韓国国防大学校(KNDU)との日韓教官交流や安全保障戦略課程(旧・一般課程)の東アジアの安全保障講座などを担当。 日本に先立つ韓国の取り組み 2000年に女性・平和・安全保障(WPS)に関する国連安全保障理事会決議第1325号(決議1325)が採択されて以来、韓国では14年の第1期に始まり、24年の第4期まで4回にわたって国家行動計画が策定されてきた。 これは15年に第1次政府行動計画を策定した日本に先立つものである。 韓国のWPS政策推進の司令塔は性平等家族部(旧・女性家族部)であり、国家行動計画には国防部のほか外交部、統一部、法務部、行政安全部など11個の部処(省庁)と機関が参加している。 「性暴力の視点」と「4期行動計画」 決議1325に至る動因のうち、大きな一つは1990年代に内戦下の戦時性暴力が世界的な注目を


朝雲寸言(2026年1月29日付)
2023年、国土地理院は日本列島の島の総数は1万4125島であると発表した。小欄の記憶によれば日本の島嶼の数は約6800島だったはずである。領土に大きな変化がない限り倍以上増えることはないはずだ。気になったので調べてみた。 過去の島嶼数は海上保安庁が1987年に調査した時のものだ。当時の海図や地図に基づいて数えたもので自然に形成され満潮時に水面上にある陸地が対象だった。 現在の島嶼数は国土地理院が航空写真や衛星画像を用いて周囲長100メートル以上の自然の陸地を数えた結果で、国土面積や領土・領海に影響を与えるものではなく数え方の精度が上がったことによるものである。 日本が島国であることは理解していたが我が国土がこれほど多くの島々から成り立っていることに改めて気づかされた。しかし海洋国家としてこれらの島々を上手く活用しているかと問われると疑問が残る。 現在、住民が居住する有人島は417島で継続的に減少し続けている。日本全体が人口減少局面に入ってからは減少速度が本土を大きく上回っているという。 離島は我が国の海洋資源確保の観点から重要な価値を有する。さ


防研セミナー 時代を読み解く シリーズ<49> 日本と同志国の防衛協力
――増大する重要性と日本の役割 今月の講師 小熊真也氏 防衛研究所 政策研究部 防衛政策研究室 研究員 1997(平成9)年生まれ、新潟県出身。国際基督教大学教養学部卒業、オーストラリア国立大学大学院修士課程(国際関係学)修了。2021年防衛研究所入所。専門分野は日本の安全保障政策、インド太平洋地域の安全保障、政策決定過程論。主な業績として、「防衛戦略の変化と継続性 ―2022年「国家防衛戦略」と新時代の防衛力―」(『安全保障戦略研究』第5巻第2号、2025年)など。 日本は諸外国と防衛協力を行っているが、特に近年活発になっているのが米国以外の「同志国」と呼ばれる国々との連携である。2022年に策定された国家防衛戦略では、「同志国等との連携」は防衛目標を実現するためのアプローチの一つに位置付けられている。 2つに大別される同志国との連携 防衛省・自衛隊が実施する同志国との協力は、目的の観点から大きく2つに大別することができる。 1つは武力を交えた有事の抑止や対処能力向上、一方的な現状変更を試みる挑戦国の牽制といった効果を期待するものである。...


朝雲寸言(2026年1月22日付)
町の書店が減り続けている。1960年代をピークに漸減し、2000年代に入ってからの落ち込みが激しい。 一時期、2万店以上あったが、全国出版協会や出版科学研究所などの調べでは1万417店(2024年現在)。「書店ゼロ」の自治体数は全国1741市区町村の約27%超を占める(出版文化産業振興財団調べ)という。 そもそも圧倒的にもうからない。書籍の定価に対する利益率(粗利率)は出版社60~70%、取次約7~8%、書店約22%。家賃、人件費など運営経費を差し引いた営業利益率はわずか0~0,5%ともいわれる。 追い打ちをかけているのが、紙媒体離れの風潮だ。アマゾンで本や漫画を買い、スマートフォンで読む。読まないという活字離れも進む。 一方、苦境から新種が生まれている点も見逃せない。棚ごとに個人が店主となる「シェア型書店」、カフェを充実させ雑貨も販売する「ブックカフェ・複合型書店」、アートなどのジャンルを設ける「専門特化型・コンセプト書店」…。「蔦屋書店」や「大垣書店」などを思い浮かべてほしい。 新種の業としての成立を願うのはもちろんである。さらには書籍販売の


朝雲寸言(2026年1月15日付)
米国第5代大統領ジェームズ・モンローが欧州と南北米大陸の相互不干渉政策を打ちだしたのは1823年、今から200年以上前のことである。以来、米国は欧州の紛争に巻き込まれることを回避する一方で欧州各国の米大陸への介入を排除し中南米に対する勢力の拡大を図った。 1902年セオドア・ルーズベルト大統領は英独伊によるベネズエラ干渉を調停し、パナマの独立を支援し、ドミニカ共和国の保護国化など、こん棒外交と呼ばれる一連の外交政策によって南米への拡大関与政策を展開した。 特に大西洋と太平洋を結ぶパナマ運河を開通させ南北米大陸における制海権・通商権を完全に掌握して中南米諸国に対する支配と圧力を高めた。 その後、ウィルソン大統領の宣教師外交、フランクリン・ルーズベルト大統領の善隣外交と名前を変えながらも中南米は米国の裏庭であるという認識は変わることなく今日まで続いている。 新年が明けて3日、トランプ大統領はベネズエラの首都カラカスに対し大規模な軍事作戦を遂行してマドゥロ大統領夫妻を拘束し米国に移送・収容した。実は米国は1989年、パナマ侵攻作戦で同様の軍事作戦を遂行


朝雲寸言(2026年1月8日付)
新春の花の話である。京都・北野天満宮では、まず今月、蝋梅(ろうばい)が見ごろを迎える。花は淡黄色、ロウ細工風の透明感がある。濃密な芳香が特長だ。続いて寒空に凜乎(りんこ)とした紅白梅が咲きそろい、天満宮は3月下旬ごろまで馥郁(ふくいく)たる香りに包まれる。 折しも受験シーズンでもある。北野天満宮は、学問の神様・菅原道真公(天神様)を祀る天神信仰の総本社。合格祈願の絵馬が多数奉納されるだろう。東京・湯島天満宮でも同様の光景が広がる。湯島もまた梅の名所である。梅と道真は切っても切れない。 「東風(こち)吹かば 匂ひおこせよ梅の花 主(あるじ)なしとて春な忘れそ」。よく知られた菅原道真の歌である。左大臣藤原時平の讒言(ざんげん)で右大臣の座を追われ、九州・大宰府に左遷された後、詠んだとされる。 学問と政治に長けた道真は、時平にはさぞかし脅威だったに違いない。政治はしばしば学問を排除するものだ。 人形浄瑠璃文楽や歌舞伎でも採り上げられ、名作「菅原伝授手習鑑」に結実。道真(芝居では菅丞相)の政治的敗北の懊悩(おうのう)をよく描きだしている。それにしても、こ


第120回 相克するナショナリズム
満州事変(1931年)は、政府の統制を無視した関東軍の暴走によって引き起こされたとよく言われます。もちろん、それは事実ですが、政治学者馬場伸也の著書「満州事変への道」を読むと、関東軍の暴走だけを事変の原因だと見なすのは短絡的なようです。


防研セミナー 時代を読み解く シリーズ<48> 「能動的サイバー防御」
今月の講師 山口章浩氏 防衛研究所 政策研究部 サイバー安全保障研究室 研究員 1995(平成7)年生まれ、京都府出身。香川大学法学部法学科卒業、神戸大学大学院国際協力研究科博士後期課程単位取得退学。日本学術振興会特別研究員DC-1などを経て、2024年から防衛研究所。専門は国際法(国家責任法)、サイバー安全保障政策。主な著作として「武力紛争当事者による国際人道法の尊重を確保する第三国の義務」『六甲台論集』(22年)、「『能動的サイバー防御』導入と国際法上の評価――特に『アクセス・無害化措置』について」NIDSコメンタリー(25年)など。 攻撃元アクセスし協働で無害化措置 国家安全保障戦略で示されたサイバー安全保障の強化方針を制度化して、「能動的サイバー防御」関連法が5月に成立した。防衛省・自衛隊についても、今後は政府や重要インフラへのサイバー攻撃に対し、攻撃元のサーバーなどにアクセスし、無害化する措置を警察と協働して実施する役割を担う。
朝雲寸言(2025年12月25日付)
久しぶりに気の置けない仲間と会食する機会があった。いわゆる同期の飲み会というやつである。
朝雲寸言(2025年12月18日付)
映画「国宝」が話題を集めている。歌舞伎界で繰り広げられる才能と血筋の相克、壮絶な野心の様相を描く映画である。
朝雲寸言(2025年12月11日付)
冬の訪れとともに慌ただしい年末がやってきた。1961年のフィラデルフィア、感謝祭の翌日から始まる年末セールで住民が道路にあふれ交通渋滞と混乱が起きた。警察交通係が嘲笑的な意味でブラックフライデーと呼んでいることを地元の新聞が報じた。
第119回 満州事変の背景 ――Even a spark dies without fuel.
幣原喜重郎 田中義一 満州事変(1931年)は、政府の統制を無視した関東軍の暴走によって引き起こされたとよく言われます。もちろん、それは事実ですが、政治学者馬場伸也の著書「満州事変への道」を読むと、関東軍の暴走だけを事変の原因だと見なすのは短絡的なようです。
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