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時の焦点<国外> イランの核

  • 3 日前
  • 読了時間: 3分

戦争は外交に勝るか


米国とイスラエルによるイラン攻撃が始まってまもなく3カ月。この戦争は何のための戦争なのか。世界は今なお当惑と不安の中にいる。


有名なクラウゼヴィッツの「戦争とは他の手段をもってする政治の延長である」という定義に従うなら、外交で達成し得ない政治的成果を軍事力で達成できたのか否かが厳しく問われるはずだ。


トランプ米大統領は訪中に先立つ5月12日、「イランに核兵器を持たせないこと、それが全てだ」と強調したが、クラウゼヴィッツ流に言えば、イランの核保有断念を外交ではなく戦争で実現することが攻撃を始めた目的、ということになる。


イランの核問題は、オバマ米政権当時の2015年にイランが米中露英仏独と欧州連合(EU)の間に締結した合意で、いったん外交解決が図られた。


イランがウラン濃縮度を3.67%以下かつ濃縮期間を15年間に制限する代わり、国際社会が経済制裁を解除するというものだった。


ところがトランプ氏が1期目の18年に「最悪の合意だ」として一方的に離脱。これに反発したイランがウラン濃縮度を高めていった経緯が、今回のイラン攻撃の伏線にある。


この「オバマの外交成果」を上回るため、トランプ氏はイスラエルと共にまず最高指導者の暗殺による体制転換に期待し、挫折した。今後もあくまで戦争でイランのウラン濃縮施設や機能の根絶を図るのなら大規模な地上部隊が不可欠だが、多くの米兵の犠牲というリスクに米国世論は耐えられないだろう。


イランに「核保有はしない」と言わせることを目指すにしても、殺したハメネイ氏が「核兵器は製造・保有しない」と言明してきたことを考えると、攻撃前とどう違うのか説明は困難だ。


となれば、再びウランの濃縮期間や濃縮度が焦点になる。オバマ時代の15年より長く、3.67%より少しでも低い合意をとりつけたら、トランプ氏は「オバマを超えた」と軍事力の成果を喧伝(けんでん)するかもしれない。


すなわちこの戦争は、せいぜいオバマ時代とほぼ同じかよりましな内容のために軍事力を使い、世界に長期にわたるエネルギー危機をもたらしただけ、という結果になりかねないのである。


逆にイランはホルムズ海峡封鎖という大きな「武器」を手にし、イランの体制はより強硬派が占めた。これまでは「核保有能力があると周囲に思わせる」あいまいな戦術を抑止力にしてきたイランが、攻撃されたことによって真剣に核兵器の保有を模索する可能性もある。


バーバラ・W・タックマンの『愚行の世界史』は、ベトナム戦争の教訓として過剰反応による国家の危機の「創作」を挙げ、「国益には全然釣り合わない壮大な愚行のためにアメリカの力と資源を浪費するようになる」と戒めている。戦争は外交に勝るのか。理性的な考え方が軽視される時、歴史は繰り返す。


高旗 良(外交評論家)


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