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時の焦点<海外> 米とイラン戦争

  • 3月26日
  • 読了時間: 3分

更新日:5月13日


3つの「地政学的勝利」


トランプ米大統領は3月11日、ケンタッキー州ヘブロンにおいて開かれた集会で、イランとの戦争に「我々は勝利した」と宣言した。


ホワイトハウスも同日、戦果の情報を更新し、▽イランの弾道ミサイルによる攻撃は90%減少▽5500以上の標的を除去▽制空権も確保▽イラン艦船60隻以上を沈没か破壊▽革命防衛隊海軍のソレイマニ級軍艦全4隻を破壊――と発表。


2月28日に開始した攻撃は最初の1週間で中東の再編だけでなく、世界のバランス・オブ・パワーを作り変えつつある。いわば「3つの地政学的勝利」である。第一には、イラン政権首脳部の殺害=トランプ米大統領は3月3日、米・イスラエル両国軍の攻撃で、イランの最高指導者ハメネイ師ら49人の指導者が死亡したと発表した。49人だけではない。ナシルザデ国防相、パクプール革命防衛隊総司令官、ムサビ総参謀長らも殺害された。


マドゥロ大統領拘束後のベネズエラ情勢で明らかなとおり、多数の政権主要幹部を消し去っても即座に新たな形での政府の誕生は保証されないが、イランの激震は事実だ。


イランは米国やイスラエルを標的にミサイル攻撃しただけではない。バーレーンやクウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)も攻撃し、隣国アゼルバイジャンをもドローンで攻撃。


今後、イラン革命政権がどうなろうとも、残るのは弱体化したイランであり、戦争が終わる頃の中東は今より安全だろう。


第二は、シーア派イスラム武装組織ヒズボラ=イランは長い間、イラクのシーア派民兵組織、イエメンの反政府武装組織フーシ派、ガザのイスラム過激派ハマス、レバノンのシーア派武装組織ヒズボラを資金・装備で支援してきた。


ヒズボラはレバノンの国軍より大きな部隊を有し、事実上、国家の中の国家として活動した。


イスラエル軍は9日、レバノンの首都ベイルート南郊にあるヒズボラの金融部門の事務所ビルを攻撃し、10日には同地のヒズボラ拠点を空爆した。


並行して注目すべき動きが起きた。レバノン政府が「ヒズボラの治安・軍事活動の即時全面禁止」を発表し、武装解除を要求したのだ。これには「どの程度本気か」との見方もあるが、大変化には変わりない。


第三はロシアと中国=中露両国はイラン支援を表明したが、実際の関与からは距離を置いている。ベネズエラ、イランと続いた米の攻勢で、主要石油生産国とのパイプを断たれた衝撃の方が関心事だろう。


ロシアとイランは2025年、包括的戦略協力条約に調印。だが、相互防衛の条項はなく、イランが今回のように攻撃されても、ロシアには軍事的に関与する義務はない。


中国はイランと21年、25年間の協力協定を結んだが、湾岸諸国との関係発展にも努めてきた。中国が輸入する石油の約50%がサウジなどアラブ諸国から供給されており、イランは17%を占める。


イラン指導部の壊滅、レバノンの反ヒズボラへの変化、中国の石油外交の苦境。イランとの戦争は短期間で歴史的成功を収めた。


草野 徹(外交評論家)


(2026年3月26日付『朝雲』より)

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