時の焦点<海外> 米中G2
- 3月19日
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更新日:5月13日

勢力圏分割の危うさ
米国とイスラエルのイラン攻撃が世界を混乱に陥れている中、王毅・中国外相兼共産党政治局員は3月8日の記者会見で「世界は100年に一度の変動にある」と述べ、国際秩序の劇的変化を強調してみせた。米中両国が、新たな時代の主軸となることへの自信をのぞかせながら。
3月末から予定されていたトランプ米大統領の訪中を踏まえた発言だ。中東情勢で米側が一カ月延期を申し出たが、トランプ氏と習近平・中国国家主席の間ではこれを含め年内に4回もの首脳会談が見込まれている。トランプ氏が昨年10月、韓国・釜山の米中首脳会談で「米中G2」と呼んだ関係が本格的に動き出せば、イラン攻撃と併せて今年はまさに歴史の分水嶺(れい)の年となろう。
トランプ政権で対中戦略の中核を担うのはコルビー戦争次官である。対ソ封じ込めを主導したジョージ・ケナンになぞらえ、21世紀のケナンとも呼ばれる若手だ。そのコルビー氏は著書で、中国封じ込めを大前提に、重要なのは「中国への優越ではなく中国とのバランス」と主張している。経済的相互依存の進んだグローバル時代にあって、米中両国が互いの勢力均衡を認め合えれば共存は可能というわけだ。
これが政治学者ウォルツの言う「二極世界がもっとも安定する」勢力圏分割の思想を背景にしたものなら、圏内の地域各国は不安を隠せまい。
例えば台湾問題について、コルビー氏は「派生的な権益」にすぎないとの認識を示し、中国が攻撃してきそうな場合は、半導体製造大手を中国に渡さないために破壊するシナリオについても触れているほどである。大国の「大きな利益」のため周辺地域の「小さな利益」は犠牲にされかねない恐れがあるのだ。米ソ冷戦期も、アジアは朝鮮戦争やベトナム戦争などの代理戦争で「熱戦」の時代だったではないか。
「そうならぬよう」地域各国が軍事力を増強して防衛責任を果たすことを求めるのが、トランプ政権の中国抑止論ではある。とはいえ、あくまで戦略的安定を主眼とする今のトランプ政権は、中国には好ましい対話の相手と映るだろう。復旦大学の呉心伯国際問題研究院長は「フォーリン・アフェアーズ・レポート」最新号に「米中の大いなる取引を」と題した論文を寄せ、米国の重荷を軽くしつつ中国が国際的役割を拡大する共栄の道筋を提唱している。
習氏は「広い太平洋には中米両国を受け入れる十分な空間がある」と呼びかけ、民主党米政権から拒絶されてきた。西半球第一主義のトランプ氏が習氏に同調する可能性は否定できない。
100年前、中国は国共内戦で国家再建への痛みの途上にあり、米国は門戸開放を求めて日本の満州進出に異を唱えるなど、米中には連携の流れがあった。王氏の「100年に一度の変動」発言には、そんな歴史も念頭にあったはずだ。
高旗 良(外交評論家)
(2026年3月19日付『朝雲』より)







