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時の焦点


時の焦点<国外> イランの核
戦争は外交に勝るか 米国とイスラエルによるイラン攻撃が始まってまもなく3カ月。この戦争は何のための戦争なのか。世界は今なお当惑と不安の中にいる。 有名なクラウゼヴィッツの「戦争とは他の手段をもってする政治の延長である」という定義に従うなら、外交で達成し得ない政治的成果を軍事力で達成できたのか否かが厳しく問われるはずだ。 トランプ米大統領は訪中に先立つ5月12日、「イランに核兵器を持たせないこと、それが全てだ」と強調したが、クラウゼヴィッツ流に言えば、イランの核保有断念を外交ではなく戦争で実現することが攻撃を始めた目的、ということになる。 イランの核問題は、オバマ米政権当時の2015年にイランが米中露英仏独と欧州連合(EU)の間に締結した合意で、いったん外交解決が図られた。 イランがウラン濃縮度を3.67%以下かつ濃縮期間を15年間に制限する代わり、国際社会が経済制裁を解除するというものだった。 ところがトランプ氏が1期目の18年に「最悪の合意だ」として一方的に離脱。これに反発したイランがウラン濃縮度を高めていった経緯が、今回のイラン攻撃の伏線にあ


時の焦点<国内> 拠出金の運用
疑念招く ずさんな運用 会計検査院が、省庁などが2018~21年度に国際機関に任意で拠出した426件について、運用状況を検査した。その結果、3割超にあたる145件で支出の妥当性が疑われるなど、管理のずさんさが判明した。 具体的には、44件で会計報告を定期的に受領していなかったほか、58件で繰越額を定期的に把握せず、43件では余剰資金を確認していなかった。 国が負担している拠出金には、条約などに基づく義務的拠出金や、事業が有益だとして省庁などの判断で行う任意拠出金などがある。 18~23年度の日本の拠出は総額5兆237億円だった。このうち任意拠出金は3兆292億円で、拠出金全体の6割を占めた。 検査院の報告によると、経済産業省は、東アジアの経済統合を研究している「東アジア・アセアン経済研究センター」に対し、23年度までの6年間で計258億円を支出した。ところが、会計報告は一部しか受け取っていなかった。 検査院の指摘を受けて経産省がセンターに確認したところ、拠出総額の4割近い96億円が、23年度末時点で繰り越されていた。巨額の資金投入が適切だったのか


時の焦点<海外> イランの経済
深い死のスパイラルに 米・イスラエルが2月28日に対イラン戦争を開始してから、約2カ月半。米海軍によるイラン港湾に対する海上封鎖と相まって、イランは重大な危機に陥っている。 米の制裁の影響ですでに崩壊状態だった経済情勢はさらに悪化し、通貨イランリアルは4月29日に1ドル=181万リアルと過去最安値まで下落した。今戦争中に外貨需要が積み上がり、停戦合意後に外貨が買われている。 米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」は4月29日、イラン経済の現状を“死のスパイラル”と評し、「国民は自国経済が死のスパイラルにはまった痛みをもろに感じている」と伝えた。確かに、経済の暴落は目を覆うほどで、ウィーン国際経済研究所のマーディ・ゴドシ研究員は同紙に「もはや生活は不可能。イランの現状はもっとも弱い状態にある」と語っている。 同氏の指摘通りで、「戦争開始以来、100万人以上が職を失った。製造業、小売業、鉄鋼や輸入原材料に依存する業種は全て、全土でビジネスは閉鎖された。エレクトロニクスは供給が乏しく、購入できない。食糧や医療品は一般家庭には手が届かなくなった。市民は


時の焦点<国内> 米比合同演習
本格参加を抑止力向上に 「海洋強国」を掲げる中国は軍の近代化を進め、東・南シナ海や西太平洋で挑発行為を繰り返している。アジアの安全を守るには、日米同盟を強化し、同志国との協力を深めることが重要だ。 米国とフィリピン両軍が主催する多国間の合同軍事演習「バリカタン」が、南シナ海などで4月20日~5月8日に行われた。豪州やフランス、カナダなども加わったこの演習に、自衛隊が初めて本格的に参加した。 陸海空の3自衛隊は、離島への上陸阻止を念頭に置いた訓練に加わった。陸自は、地対艦誘導弾の実弾射撃も行い、米比両軍などとの連携を確認した。サイバー防衛隊は、各国のサイバー部隊と図上訓練などを行ったという。参加した自衛隊員数は計1400人にのぼる。 実戦的な訓練を通じ、各国の装備品の運用状況や、指揮命令系統を確認できれば、有事の即応能力は高まるだろう。 イランを攻撃した米国は、アジアの戦力を中東に割いている。このためアジアに「力の空白」が生じかねないと懸念する声は多い。 日本は、アジアの安定に米国の抑止力が欠かせないことを粘り強く米国に説かなければならない。同時に


時の焦点<海外> イラン攻撃と核
瀬戸際に立つNPT 「核拡散防止条約(NPT)に加盟していて何かいいことがあるのか、というシニシズムが非核保有国に広がっている」。国連本部で4月末から始まったNPT再検討会議。それを前に日本記者クラブで会見した中満泉・国連事務次長はこう率直に語った。 ロシアのウクライナ侵攻や米国とイスラエルのイラン攻撃で、核を巡る状況は悪化の一途をたどっている。2015年、22年と過去2回の会議は核大国の対立で合意文書を採択できなかった。5月下旬までの今回会期でも不採択となれば、NPTは空洞化する。 1970年発効のNPT(加盟191カ国・地域)は、67年までに核を開発していた米露中英仏の5カ国のみに核保有を認めている。加盟国に原子力平和利用の権利を保障する一方、核保有国には「誠実に核軍縮交渉を行う義務」(第6条)を課すことで、5カ国の特権に不満を持つ非核保有国をなだめてきた。 ちなみに非加盟国のインド、パキスタン、イスラエルはNPTの枠外で核を開発し、北朝鮮は途中脱退して核保有国となった。NPTの限界が言われるゆえんだ。 今回のイラン攻撃はそのNPTの課題をあ


時の焦点<国内> 日本とNATO
装備品での相互協力を 北大西洋条約機構(NATO)に加盟する32カ国のうち、30カ国の大使らが韓国と日本を相次いで訪れた。NATOの訪問団としては異例の規模だ。 欧州各国のイラン軍事作戦への関与が不足しているとして、トランプ米大統領がNATO脱退を示唆する中での訪問でもあった。欧州各国は米国頼みを脱するため、米国以外との協力を模索している。 軍事分野で高い開発・生産能力を持つNATOとの連携は、日本にとっても安全保障に限らず、経済成長の後押しにもなるだろう。 日本への訪問では、茂木敏充外相と面会した。茂木氏が「欧州・大西洋とインド太平洋の安保は不可分だ」として、同盟国や同志国との連携の重要性を強調した。NATO側も「日本との協力関係を一層発展させたい」と応じた。 訪問団は小泉進次郎防衛相、赤沢亮正経済産業相らとも面会したほか、装備品を製造している大手電機メーカーの神奈川県内の工場や、米軍横須賀基地を視察した。韓国でも防衛産業の現場を視察したという。 ロシアによるウクライナ侵略以降、NATOは日本や韓国、豪州など、インド太平洋の国々との協力を進める


時の焦点<海外> イスラエル
中東で唯一の米同盟国 イランとの戦争は、米国にとってイスラエルが中東で唯一の真の同盟国という現実をあらためて鮮明にした。 トルコ、サウジアラビア、クウェート、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)といった他の同盟国は、自国内の米軍基地の使用や領空の飛行も拒否。サウジが後に自国の空軍基地1カ所の使用を許可しただけだった。 米国は、原油・天然ガスの輸入でホルムズ海峡に大きく依存している欧州、アジアの同盟国が同海峡の開放に協力すると思っていたら、返事は「ノー!」。これに対しトランプ大統領は「ショックだ」「臆病だ」と反応した。 マクロン仏大統領は「現在の状況では、フランスは同海峡の開放作戦に参加しない」と宣言。そしてスペインと同様、仏の基地使用やイスラエル機への燃料補給のために仏領空を飛行することも拒否した。 トランプ氏は「協力的でない」と批判し、イスラエルも米に歩調を合わせ、国防省が3月31日、仏との軍事契約をすべて終了すると発表した。 スターマー英首相は「自国と同盟国の防衛のため必要な行動を取るが、広範に及ぶ戦争には引き込まれない」と言明。だが、在キプ


時の焦点<国内> NATO大使来日
防衛協力深めたい 北大西洋条約機構(NATO)に加盟する32カ国中、30カ国の大使らが来日し、茂木外相や小泉防衛相らと会談した。来日前には、韓国も訪問したという。NATOの訪問団としては異例の規模だ。 米国が国際秩序に背を向け、世界中に動揺が広がっている。トランプ米大統領は、イランに対する軍事作戦を巡り、欧州各国が非協力的なことに不満を示し、NATO脱退までちらつかせた。米国をもはや予測不能な「Rogue State」(ならず者国家)と呼ぶ日本の外交官もいる。 欧州各国は、これまでのように米国を頼った安全保障は成り立たないと考えているという。アジアを含めて国際社会の安定を図るには、日韓両国との協力が不可欠だとみているようだ。 日本にとっても軍事分野で高い開発・生産能力を持つNATOとの連携は、抑止力を高めることにつながる。 日本は多国間協調の枠組みとの協力を深め、紛争防止に努めなければならない。自由貿易や法の支配といった秩序の回復に努めることが大切だ。 茂木敏充外相はNATO大使らとの会談で、「欧州・大西洋とインド・太平洋の安全保障は不可分だ」と


時の焦点<国外> 米国の戦争
チャーチル不在の悲劇 まるでジャズの即興演奏のように、先が読めないトランプ米大統領の言動。イランとの停戦の行方もなお霧の中だ。 トランプ氏の頭にあるのは、政治日程だろう。5月の米中首脳会談、7月の建国250年、11月の中間選挙。直近には4月27日のチャールズ英国王の国賓訪問が控えている。英国王とのツーショットは「私たちに国王はいらない」デモへのあてこすりとなる、トランプ氏の晴れ舞台だ。 米英両国は第2次大戦後、長く「特別な関係」と呼ばれてきた。「血は海水より濃い」と語り、ルーズベルト米大統領との友情を育んだチャーチル英首相が源流だ。 人種・言語・文化を同じくするアングロサクソン同盟は、戦後世界の自由と秩序の支柱となってきた。ジョン・ミーチャム元ニューズウィーク誌編集長は、著書「フランクリンとウィンストン」で「米国の大統領と英国の首相がキャンプデービッドの森を散策し、大西洋を挟んで電話で話す時、2人はルーズベルトとチャーチルのスタイルと影の中でそうしているのだ」と指摘する。 その米英関係はいま、大きな岐路にある。 軍事経済両面で米英の格差が拡大し、


時の焦点<国内> 即応体制の強化
抑止力の確立を急げ 周辺国の軍拡が進む中で国民の命と暮らしを守り抜くためにはミサイルによる迎撃に加え、相手の拠点を無力化する反撃能力を備える必要がある。自衛隊が有事に即応できるよう体制の整備を急がねばならない。 陸上自衛隊が、敵の射程範囲外から攻撃できる国産の「スタンド・オフ・ミサイル」を、熊本県の健軍駐屯地と静岡県の富士駐屯地に配備した。 熊本には、「12式地対艦誘導弾能力向上型」から名称変更された「25式地対艦誘導弾」が配備された。 射程は1000キロメートルを超え、中国沿岸部や北朝鮮にも到達するとみられる。この誘導弾の配備により、日本を狙って弾道ミサイルなどが発射された場合、その拠点を叩くことが可能になる。 一方、静岡に配備した「25式高速滑空弾」は、迎撃されにくい高高度を超音速で飛ぶ点が特徴だ。射程は数百キロメートルだという。主に離島防衛に活用する方針だ。 今回の配備により、自衛隊は初めて反撃能力を持つことになった。ミサイルを発射する敵基地を、直接破壊することが可能になる。 ミサイルは今後、北海道や宮崎県の陸自駐屯地にも配備される。海自の


時の焦点<海外> 対イラン攻撃
曖昧さを心理的武器に イランの最高指導者ハメネイ師の殺害で、同師と他の指導者との秘密会合の日時、場所をピンポイントで突き止めた功をめぐって、米、イスラエルの両説がある。どちらにせよ、米中央情報局(CIA)・米軍・イスラエル対外諜報機関モサド・イスラエル軍のチームワークは、イラン現体制を大混乱に陥れた。 実際、米紙「ウォールストリート・ジャーナル」(3月18日)によると、モサド工作員はイラン警察高官に高飛車な物言いをしている。同紙が調べた両者の会話(ペルシャ語)の内容。 モサド「聞こえるか?あなたのことは何でも知っている。我々のブラックリストに載っているのだ」 イラン高官「分かった」 モサド「警告しておく。あなたは国民の側に立つべきだ。そうでないと、指導者と同じ運命になるぞ」 同高官「コーランにかけて誓う。私はあなたの敵ではない。我々を助けに来てくれ」 まだ存命の一部指導者の心理状態を想像すると――。仲間が日ごとに消えていく。モサドが2024年にレバノンのシーア派武装組織ヒズボラに仕掛けた数千個のポケベル爆発作戦で、戦闘員約40人が死亡、3000人


時の焦点<国内> 日仏首脳会談
秩序回復へ欧州と連携を 国際秩序を主導してきた米国が「法の支配」を軽視するようになり、世界は、「力の支配」が横行する弱肉強食の時代に変わりつつある。 危機時に米国の軍事力を頼れないとなれば、ミドルパワーの国や新興国は自衛のための軍拡を急ぎ、核への依存を高める可能性もある。人道危機への関心も薄れ、貧困が広がりかねない。 日本は、自由貿易などの秩序の受益者の立場にとどまっていてはならない。国際秩序の立て直しに向けて、積極的に役割を果たすべきだ。 フランスのマクロン大統領が来日し、高市早苗首相と会談した。両首脳は、米国とイスラエルによるイラン攻撃がきっかけで高騰した原油などの安定供給や、ホルムズ海峡の航行の安全確保などの重要性を確認した。 フランスは今年、先進7カ国(G7)の議長国を務めている。マクロン氏の来日は、6月のG7首脳会議を前に、中東やウクライナ情勢に関する意見をすり合わせておく狙いがあったのだろう。 米国のトランプ大統領は国民向けの記者会見で、イランへの軍事行動について、「終結は近い」と述べた。だが、具体的な時期は示さなかった。記者会見前の


時の焦点<海外> 米のイラン攻撃
「死に体」のNATO 「イランの軍事施設を破壊した」と強調するトランプ米大統領だが、破壊したのはそれだけではない。戦後の自由世界を支えてきた北大西洋条約機構(NATO)もまたトランプ氏によって破壊され、いまや「死に体」の感すらある。 根回しもなく始めたイラン攻撃に非協力的なNATOにいら立つトランプ氏は、米国抜きのNATOは「張り子の虎」だ、と皮肉った。「張り子の虎」とは、トランプ氏がロシアやイランに対して使ってきた侮蔑の言葉だ。 侮蔑といえば、アフガニスタンにともに派兵したNATO同盟国を「彼らは前方から少し離れたところにいた」と揶揄(やゆ)する発言もあった。現実にはアフガンで英国は457人、フランスは90人以上、ドイツも59人の戦死者を出している。 米国に加担を迫るトランプ氏に対し、同盟国としての犠牲をこけにされた欧州側が「これは我々の戦争ではない」(メルツ独首相)と一線を引くのは当然だろう。 イラン情勢で小休止となった感のあるグリーンランド領有問題でも、デンマークが米国の軍事侵攻に備えて自ら滑走路爆破を計画していたと報じられるなど、NATO


時の焦点<国内> G7外相会合
役割は依然重い 戦後の国際秩序を主導してきた主要7カ国(G7)の姿は変わりつつある。米国は国際法違反の可能性が高いイラン攻撃に踏み切り、フランスは核軍縮に取り組む義務を放棄するかのような戦略を打ち出した。 世界の6割を占めていたG7全体の国内総生産(GDP)は4割にまで減った。とはいえ、G7が国際平和に負う役割は依然として重い。 アジア唯一のメンバーである日本には、G7の場を通じて法の支配の重要性を訴えつつ、国際世論にも賛同を広げていく役割が求められている。G7の外相会合が議長国のフランスで開かれた。イラン情勢に関する共同声明では、民間人や民間施設に対する「攻撃の即時停止」を求めた。 また、イランが事実上封鎖しているホルムズ海峡について、航行の自由を恒久的に回復する必要性を確認した。イランは石油の重要な輸送ルートであるホルムズ海峡を封鎖し、ペルシャ湾岸の国のエネルギー関連施設も攻撃した。 原油価格を高騰させて米国に攻撃をやめさせる狙いがあるのだろうが、世界経済を混乱させるだけの行為だ。イランの攻撃を受ける湾岸諸国の国々からは、イランの行動に理解を


時の焦点<国内> 日米首脳会談
停戦実現へ役割果たせ 中東の戦火はいつ収まるのか。日本は米国に何を言うのか。世界中が注目する中で行われた日米首脳会談において、両首脳はひとまずイラン情勢の安定に協調して取り組むことで一致した。国際法を軽視するトランプ米大統領との難しい会談を、高市早苗首相は無難にこなしたと言えるのではないか。 紛争の収束に向けたハードルは依然高い。日本は、停戦の実現に向けて米国と意思疎通を続けねばならない。平和の回復へ国際世論を喚起していくことも重要だ。 日米首脳会談がワシントンで約1時間半行われた。その後の夕食会も含め、計3時間、両首脳は中東情勢や対中国政策、日米同盟などについて協議した。 首相は会談の冒頭で、「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけだ」と述べ、トランプ氏をファーストネームで呼んだ。「諸外国に働きかけてしっかりと応援したい」とも語った。 首相としては、トランプ氏に寄り添う姿勢を示しつつ、停戦に関心が向くようにする狙いがあったようだ。これに対しトランプ氏は、「日本は責任を果たそうとしている。NATO(北大西洋条約機構)とは違う」と述べ、ホル
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