時の焦点<海外> 対イラン攻撃
- 4月8日
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更新日:5月13日

曖昧さを心理的武器に
イランの最高指導者ハメネイ師の殺害で、同師と他の指導者との秘密会合の日時、場所をピンポイントで突き止めた功をめぐって、米、イスラエルの両説がある。どちらにせよ、米中央情報局(CIA)・米軍・イスラエル対外諜報機関モサド・イスラエル軍のチームワークは、イラン現体制を大混乱に陥れた。
実際、米紙「ウォールストリート・ジャーナル」(3月18日)によると、モサド工作員はイラン警察高官に高飛車な物言いをしている。同紙が調べた両者の会話(ペルシャ語)の内容。
モサド「聞こえるか?あなたのことは何でも知っている。我々のブラックリストに載っているのだ」
イラン高官「分かった」
モサド「警告しておく。あなたは国民の側に立つべきだ。そうでないと、指導者と同じ運命になるぞ」
同高官「コーランにかけて誓う。私はあなたの敵ではない。我々を助けに来てくれ」
まだ存命の一部指導者の心理状態を想像すると――。仲間が日ごとに消えていく。モサドが2024年にレバノンのシーア派武装組織ヒズボラに仕掛けた数千個のポケベル爆発作戦で、戦闘員約40人が死亡、3000人が負傷して以後、電子機器は恐ろしい。一体、誰を信頼できるのか。聖職者が家族ともども、カナダに逃亡・移住したニュースもあった。
しかも、これはトランプ米大統領が3月23日、一人か複数のイラン高官(名前は明かさず)と秘密交渉中で発表前のことだ。
デジタル・ニュース「イラン・インターナショナル」(本部・ロンドン)が23日、「曖昧さを武器に:米国の陰の外交でイランの体制は分裂」との記事で詳しく解説する。
「イランは接触を否定していても、大統領の声明はすでに効果を上げている:イラン指導部内部で不信感が拡大し、世界の石油市場も緊張が緩んだ」
「大統領は曖昧さをイラン内部への政治的・心理的武器として使っている。残る指導者の間に不安と疑いを植え込んだ」
「指導者は隠れ、司令本部は崩壊、通信も傍受や暗殺を恐れて限定的、会合も困難。こんな状況下、高官らの間で疑念が募る。誰が米政府と話しているのか? 我々に何か隠しているのか?」
「影響は高官だけではない。ランクの低い当局者も自信を失い、士気も落ち、体制からの離反・寝返りも考え始める」
米側と極秘交渉をしているのはガリバフ国会議長との報道もあったが、同議長は「フェイク・ニュース」と否定。当然だ。この報道だけでも、同議長は“裏切り者”として、革命防衛隊ら超強硬派の標的になる。
しかし、いくら否定しても、米国が使った心理的武器の効果は消えない。「もし、同議長がうそをついていたらどうする?」「他にも誰かが交渉に関与していたらどうなる?」
米政権内の誰が編み出した戦術か知らないが、今戦争の新局面を開いたのは事実。
ブッシュ(息子)政権で2003年のイラク攻撃は「衝撃と畏怖(いふ)」が軍事ドクトリンだった。トランプ政権は軍事に加え、心理面でも「衝撃と畏怖」でイランの現体制を粉砕している。
草野 徹(外交評論家)






