時の焦点<海外> 米イラン合意
- 7月1日
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中東「Gゼロ」の世界
今年初め、国際政治学者のイアン・ブレマー氏率いる「ユーラシア・グループ」が世界10大リスクのトップに掲げたのは「米国の政治革命」だった。トランプ米政権による制度や秩序の破壊のことである。一年の半ばを過ぎ、それは想定を超えて世界中を侵食しつつあるように思える。
冷戦期の米露のような国際秩序を担う中核国家の不在を「Gゼロ」の世界と呼ぶブレマー氏は、トランプ米大統領のイラン攻撃が「中東を明白にGゼロへと突入させた。残りの世界も同じ道をたどるだろう」と予測する。
米イラン合意を受け、6月17日付の外交問題評議会ウェブサイトに寄稿し、米国がこれまで中東秩序で果たしてきた役割として
(1)石油の安定的な流通
(2)イランと中国の影響力排除
(3)地域安保における欠かせない仲介者
の3つを挙げた上で、イラン戦争はそれらの破壊を加速させたと述べた。
同氏の見立て通りGゼロは現実化しつつあり、今の世界には国際的な安全保障を主導する国家も枠組みも見当たらない。米イラン合意と同じタイミングで開かれたG7サミット(主要7カ国首脳会議)は首脳宣言を出せないまま、トランプ氏のご機嫌取りに終始した。
7月7日からトルコで開く北大西洋条約機構(NATO)首脳会議も、米国と欧州大陸の亀裂の深刻さを浮き彫りにするだけになりかねない。
にもかかわらず、それは国際機関や同盟関係の無意味さを証明するものではないはずだ。
イラン戦争には確かに国連もNATOもいなかった。米国がイスラエルと共に国際法を無視して始めた戦争に、世界はひどく傷ついた。だが、最も傷ついたのは米国の威信と信頼性であろう。米国は同盟国との絆なしには超大国であることはできない、と主張するのはエール大学のオーナ・ハサウェイ教授だ。
ハサウェイ教授は6月23日付ニューヨーク・タイムズ紙の論文で、イラン戦争失敗の理由は、米国が国連安保理の決議も同盟諸国との事前協議も軽視して爆弾を大量に落とせば目的は達成されると考えていたことだと指摘。「米国を偉大にしてきたのは単独で目的を果たす力ではなく、その価値や利益を体現し、他の国々も加わりたくなるような国際的枠組みを作り出す非凡な能力だったのだ」と強調した。
大方がうなずく見方ではないだろうか。
ブレマー氏もハサウェイ教授も、イラン戦争で何もせずに地歩を固めたのは中国だという見解で一致している。国連を中軸とする秩序回復の担い手であるかのような振る舞いを中国に許してしまったのは、米国の明らかな過ちだろう。
国連やNATOの機能不全を語る前に、その理念や実利を顧みない大国の一国主義を改めるべきではないか。イラン戦争の教訓とは、国際的枠組みや同盟の協調こそ平和と安定の基盤だと再認識することである。
高旗 良(外交評論家)






