時の焦点<海外> イラン強硬派

戦争拡大へ極秘に計画
トランプ米大統領が仏ベルサイユ宮殿で、対イラン戦争の終結と同国の核開発問題での合意を目指し、60日間の期限を設定したイランとの覚書に署名したのが2026年6月17日である。そして、8月17日にその期限が切れたが、両国間の隔たりは60日前よりさらに拡大した。相互に相手側の合意違反を非難し続け、合意自体がほぼ何も残っていない。
そんな情勢下、米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」が16日、「イラン、戦争拡大へ極秘計画」との見出しで報じた。その記事によると、イランの強硬派指導者は戦争をエスカレートさせ、米国の損害を増大させることを準備中だという。
同紙によると、覚書署名後、イランの政府当局者はホルムズ海峡の再開放につながり得る同合意への支持獲得を期したが、強硬派指導者はテヘランで極秘に会合し、政府とは真逆の方針をまとめた。
イランおよびアラブ諸国の当局者が同紙に明かしたところでは、イランの強硬派はこの60日間を米国との大規模な対決への準備に費やした。
同国正規軍に対するイスラム革命防衛隊の指揮・監督を拡大する、実戦経験が豊富な強硬派を治安・警備の主要ポストに起用する、国内の対スパイ活動を強化する、ミサイルとドローンの生産を増強する―などが大規模対決への主要な「準備」だそうだ。
アラブの情報当局者が、イラン、イエメン、イラク内のイラン代理勢力の間の交信を察知した結果、強硬派の動向が判明したという。
テヘランを中心に活動し、イラン政府に近い軍事アナリストの一人は同紙に、「イランでは、これまでの戦闘は大規模対決の前に敵の弱体化を狙った限定的エスカレーションだ」という解釈が増加していると述べた。さらに、「主要な戦争はまだ始まっていない」との見方が広く行きわたっているとも語った。
革命防衛隊が勢力を伸ばし、それが外交をより困難にしている事実だ。
イラン当局はホルムズ海峡に対する支配力を巧みに利用したい意向だ。しかし、米シンクタンク「戦争研究所」のアナリストは、同防衛隊の一派がイランの重要な意思決定を牛耳っており、同海峡に対するイランの掌握を大きく弱める取り決めは拒絶するとの見解を示している。
また、イスラエル当局者の話では、イランは米とイスラエルの攻撃で大きな損害を被ったにもかかわらず、インフラの再建やミサイル基地へのアクセスの回復などを予想以上のハイスピードで進めている。
かつてイラン核問題の交渉に当たった国務省の元高官(同省初のペルシャ語スポークスマンだった)で、現在は米シンクタンク「中東研究所」の特別会員であるアラン・エアも「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙上で、「テヘランの姿勢は間違えようがない。『土台は戦争である』。戦時体制を維持して、後の攻撃を準備するだろう」と警告している。
草野 徹(外交評論家)







