時の焦点<国内> 消費税減税

懸念の払拭へ全力を
政府が食料品の消費税率を2027年4月から2年間、8%から1%に引き下げる方針を決定した。秋の臨時国会で関連法案の成立を目指す。
食料品の消費税率1%分の税収にあたる年6000億円分の給付も合わせて、消費税率を「実質ゼロ」にするという。
総額5兆円に上るとされる減税・給付の財源をどう確保するのか。財政や、為替・金利への悪影響はないのか。2年後に確実に税率を戻せるのか。高市首相は、様々な指摘を真摯に受け止め、懸念の払拭に努める必要がある。
首相は、英国の付加価値税など欧州の仕組みを参考にしているようだ。
英国の付加価値税率は20%(標準税率)だが、食料品の税率は原則としてゼロだ。金融危機の際には、付加価値税率を引き下げたこともある。欧州では英国に限らず、柔軟に税率を変更できる国が多い。
日本では物価の高騰が続いている。首相としては、国民生活に寄り添う姿勢をアピールしたいのだろう。
ただ、消費税は社会保障を支える安定財源だ。その減税には不安が付きまとう。
首相は税収減となることについて、「さらなる歳入確保の取り組みを進める」と語ったが、年末の予算編成まで代替財源の結論は出さないという。物価の高騰などで来年度以降も税収増が見込まれているものの、それをどこまであてにして良いものか。
特例で消費税の納税が免除されている農林水産業の事業者は、消費減税分の収入が減ることになり、不安を募らせている。税率10%が維持される外食産業にも、客離れへの警戒感がある。政府はこうした点への対策も早急に打ち出すべきだ。
イラン情勢の混迷で輸入価格はさらに高騰しているが、価格に転嫁できない企業は多い。減税分だけ、食料品の価格が下がるとは限らない、との指摘もある。
消費税は、国民が広く負担し、景気動向に左右されにくい点が特徴でもある。
社会保障給付費は26年度予算で144兆円に上る。そのうち、56兆円強を公費で賄っている。国と地方の消費税収計34兆円では賄いきれないため、国債を発行し、将来世代に負担を先送りしているのが実情である。
今後も社会保障費は増え続ける。減税によって医療や介護などに悪影響が及ぶことは避けるべきだ。
29年4月には消費税率を予定通り8%に戻すことが重要となる。首相が「私が責任を持って確実に戻す」と述べ、景気悪化の際に減税期間を延ばす「景気条項」を改正案に入れない考えを示したのは妥当だ。
夏川明雄(政治評論家)






