時の焦点<海外> トランプの戦争
- 10 時間前
- 読了時間: 3分

プーチンの二の舞か
イランの核開発を阻止して中東の核拡散を防ぐという大義名分はどこへ行ったのか。トランプ米政権は対イラン交渉期限の8月中旬を控え、サウジアラビアと将来のウラン濃縮を可能にする原子力協定に署名した。イランにとって中東の覇権を争うライバルであるサウジへの「核拡散」は、自らの核保有への意思を揺るぎないものにする材料となりかねない。
トランプ政権のイラン攻撃は戦略も戦術も曖昧なまま、迷走を続けている。米ニューヨーク・タイムズ紙コラムニストのニコラス・クリストフ氏は7月末、「トランプの『パーフェクトな』戦争の袋小路」と皮肉った記事でイラン空爆の限界を指摘。地上部隊を派遣しようとすれば1年間にわたって60万人の兵士が必要で、当然それには犠牲が伴うとの退役将校の見立てを紹介した。
戦争が袋小路に入り込んでいるのは米国だけではない。ロシアもまたウクライナの反転攻勢によって劣勢を強いられ、プーチン大統領の目算は大幅に狂っている。
5000発もの核弾頭を保有する米露両軍事大国が、イラン、ウクライナという核を持たない中規模国家を力では屈服させることができない現実を今、世界は目のあたりにしているのだ。
「戦争のかたち」が明らかに変わった。相手の都市を核や地上部隊で壊滅させる選択肢が取れない以上、サプライチェーン(供給網)の首根っこを押さえることが、今日の地経学的戦争の主要な戦略・戦術目標になっている。チョークポイント(戦略的要衝)をどちらが握るのかが、戦局を決定づける。主役は安価なドローンである。
イランは、ホルムズ海峡を事実上支配することで、石油の世界的な流通を左右する手段を手に入れた。ウクライナはロシアとクリミア半島の補給ルートへの波状攻撃で、前線のロシア兵への燃料や弾薬を断つ戦術に活路を見いだしている。
米国では、対イラン戦費が見込みを大幅に上回る6兆円に達した。弾道ミサイルなど主要兵器の枯渇の懸念が報じられ、中東どころか世界各地で軍事関与が危ぶまれる状況だ。行き当たりばったりの米国の戦争は同盟国の安全保障に悪影響を及ぼす恐れがある。
米シンクタンクの推計によれば、ロシアはウクライナとの戦争で既に45万人の死者を出しているという。先の見えない戦争に、プーチン氏はなおこだわり続けている。
ウクライナ侵攻から4年半。イラン攻撃は「4週間程度」との当初のトランプ氏の見立てとは裏腹に、まもなく半年となる。世論を無視できない米国は、ロシアのような大規模な犠牲者を出してまで戦争を継続する考えはないだろう。
だが、明確な出口戦略を描けず泥沼であがいている点で、両者はよく似ている。このままではトランプ氏がプーチン氏の二の舞を演じ、半年が数年になってもおかしくない。
高旗 良(外交評論家)






