時の焦点<国内> ICC制裁

容認できぬ米国の横暴
国際刑事裁判所(ICC)を敵視してきたトランプ米政権が、ICCトップの赤根智子所長への制裁に踏み切った。「法の支配」を軽んじる暴挙と言わざるを得ない。日本は赤根氏を支援し、国際法廷を守らなければならない。
米国のルビオ国務長官は声明で、赤根氏らが、ICCに加盟していない米国などの政府関係者の捜査や訴追に直接的に関わってきたと主張し、「国家主権への攻撃は容認しない」と批判した。
ICCがかつて、アフガニスタンなどで活動する米軍人らを捜査対象としたことや、2024年にイスラエルのネタニヤフ首相に逮捕状を出したことを念頭に置いているとみられる。ネタニヤフ首相に対する逮捕状は、パレスチナ自治区ガザでの非人道的行為を重大な罪と判断したものだ。
米国もイスラエルもICCに加盟していない。だが、ICCは、検察官や裁判官らの正式な司法手続きを経て訴追している。米国が赤根氏ら個人を制裁するのは筋違いも甚だしい。
米国の狙いは、ICCを機能不全に陥らせることなのだろう。ルビオ氏は7月にICC解体を目指すと表明し、加盟国に脱退を迫っている。どう喝は断じて容認できない。
そもそもICCは、世界の歴史の教訓を踏まえて設立された組織だ。
第2次世界大戦後の東京裁判では、戦勝国によって敗戦国の指導者が戦争犯罪人として一方的に処罰された。
1993年には、国連安全保障理事会の決議を踏まえ、旧ユーゴスラビアでの虐殺などを裁く国際法廷が設置された。ミロシェビッチ元大統領らの責任を追及する狙いがあったが、北大西洋条約機構(NATO)による旧ユーゴへの空爆は不問に付されたため、「大国の論理」が優先された、との批判も付きまとった。
そうした反省に立ち、戦争に絡む残虐行為を公平に裁く狙いから、ICCは常設の刑事裁判所として誕生した。現在も120カ国以上が加盟しているのは、世界で紛争が絶えない中、その必要性を多くの国が認めているからだ。
高市早苗首相は赤根氏への制裁について、「日本の立場と相いれず、深刻に受け止めている」と述べるにとどめている。不用意に米国を批判してトランプ大統領の不興を買い、同盟関係を損なう事態は避けたいという思いがあるのだろう。安全保障環境が極端に悪化する中、ICCの問題で真っ向から米国と対立することは得策ではない。
ただ、ICCに最大の拠出金を支出している日本がどのような対応をするのか、世界は注視している。高市政権は赤根氏を支えるとともに、国際秩序を維持していく重要性を粘り強く米国に説いていく必要がある。
夏川明雄(政治評論家)






