時の焦点<国内> 海底ケーブル

国が関与し防護強化を
安全保障上の重要インフラであるにもかかわらず、十分な防護策は講じられてこなかった。
海底ケーブルの重要性を考えれば、国の主導で監視体制を強化し、ネットワーク網を守っていく必要がある。
総務省の有識者検討会が、日本と海外の情報通信を担う国際海底ケーブルの防護策を報告した。
海底ケーブルは、銅パイプなどで保護された光ファイバーが信号を電送する。陸上に到達した後、陸揚げ局と呼ばれる施設で国内の通信網に接続される。
検討会は、海底ケーブルを狙った攻撃に対し、国際的な関心が高まっていることを受けて設置された。政府による防護策の本格的な議論は初めてとなる。
バルト海や台湾周辺では近年、ロシアや中国の関与が疑われる切断事案が相次いでいる。
2023年には台湾本島と離島を結ぶ海底ケーブルが切断され、電話やネットが遮断された島では混乱が生じた。
台湾は昨年末、故意の損壊行為に対する罰則を強化した。
海に囲まれた日本は、国際通信の99%を海底ケーブルに頼っている。
仮に障害が発生すれば、インターネットの不通で国民生活が混乱するだけでなく、防衛に必要な指揮統制の能力が低下しかねない。
日本ではこれまで大きなトラブルは確認されていないが、早急に対策を講じなければならない。
懸念されるのは、安全保障上の懸念があるにもかかわらず、海底ケーブルも陸揚げ局も、NTTやKDDIなど民間の通信事業者が管理しているということだ。
ケーブルへの損壊行為を事前に検知し、政府が異常を即時に把握する仕組みもないという。
欧米の一部の国は、揺れを検知するセンサーをケーブルに装着して被害を防止している。
こうした高度な防護策を導入するため、政府が実証実験を行い、事業者に実用性を理解してもらう方法もあるだろう。
報告書は、民間が行う防護策の高度化支援や、政府を含めた連絡体制の構築を提言し、「官民が連携して取り組むことが適当だ」と指摘した。
海底ケーブルはメーカーが敷設するが、日本のメーカーは敷設船を持っていない。敷設や保守の技術者も不足しているという。
海底ケーブル製造の世界市場は、日本と米国、フランスがほぼ独占してきたが、中国などの新興企業が参入し、競争が激化している。
先の特別国会で成立した改正経済安全保障推進法により、敷設や保守などに対する政府の援助が可能になった。敷設船建造への支援も想定されている。
競争力を維持できなければ、海底ケーブルを継続的に供給することも難しくなる。
官民が協力して海底ケーブルやそのシステムの能力を維持、向上していくことが求められている。
霜月荘六(政治評論家)






