時の焦点<海外> 米朝接近
- 4 日前
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火遊びにならぬよう
モスクワのBBC(英国放送協会)特派員のこのところの解説では、プーチン政権は世界を二つの隊列に分断して考えているのだという。ロシアに友好的な国か、友好的ではない国か。専制権威主義国家とはそういうものだろう。中国しかり、北朝鮮しかり。そこに共通の理念や価値観などはなく、あるのは自国(または指導者)第一の利害打算だけである。
その「友好的な隊列」に米国が加わるとしたら――。長年築きあげた同盟関係より眼前の友好国との実利を優先させるトランプ政権の姿勢は、そんな疑念を生じさせずにはおかない。専制権威体制と一線を画すはずの隊列が、リーダーを失い右往左往しているのが今の世界ではないか。
そんな思いを改めて強くするのが、朝鮮半島情勢を巡るトランプ大統領の最近の発言だ。
トランプ氏は、8月中旬から下旬に行われた恒例の米韓合同軍事演習の規模と期間の大幅縮小を直前になって指示。
北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党総書記とは「とても仲が良い」と年内の首脳会談の計画を明らかにし、あげくは「彼は非常に強力な核兵器を57発所有している」と、核保有国であることを公式に認めるような発言をした。韓国内では、突然の演習縮小に激怒の声が上がったとも伝えられている。
トランプ氏が米朝首脳会談を目指すのは、朝鮮戦争の休戦協定を恒久的な平和協定にするためではないか、との見方が出ている。イラン戦争の失敗を穴埋めし、大統領任期後半の政治的レガシー(遺産)作りを狙っているというわけだ。
朝鮮半島和平の当事者である韓国やじかにその影響を受ける日本の昨今の防衛努力を置き去りにするかのような一方的な振る舞いは、同盟関係に大きな禍根を残す。
まず、気まぐれな演習削減や対北融和が中露への抑止力に及ぼす悪影響だ。また、米国が米本土に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)の凍結に力点を置けば、北朝鮮の非核化が事実上棚上げにされるリスクがある。
さらには、米国の拡大抑止への信頼が薄れた韓国で独自の核武装論に火がつき、東アジアの核軍拡競争につながる恐れも出てくる。米国にないがしろにされた韓国が中国に接近し、この地域のパワーバランスが崩れる可能性は否定できない。
トランプ政権のこうした動きについて米外交問題評議会のシーラ・スミス上級研究員は、日韓両国は米国が中東で戦争をやりながらアジアの同盟国に十分な安全を提供できるのか懸念していると指摘。「米国は北東アジア安保でいちかばちかの冒険をしてはならない」と警鐘を鳴らす。
トランプ政権は基地共同利用協定を結んでいるオマーンを「邪魔するなら爆撃する」と脅し、カナダには関税戦争を仕掛けている。米朝接近の行方は不透明だが、同盟より友好的かどうかが判断基準なのだろう。
高旗 良(外交評論家)






