時の焦点<海外> 対イラン戦争

米、全面攻勢の方向か
米・イラン戦争は2026年2月28日の開戦以来、およそ150日が経過した。このうち、実際に爆撃による攻撃の応酬が展開されたのは実質的に40日間。あとの110日間は停戦・和平交渉で、この間にミサイル発射やドローンによる攻撃もあったが、大部分は交渉に費やされた。
トランプ大統領の政治戦略は、与党・共和党が両院で多数を占める現状の維持だ。11月の中間選挙で民主党が下院で多数派になれば、政権のイニシアチブは“化石化”され、自身の「弾劾」も確実となる。
そのため、同大統領のポイントは、(1)イランは核兵器製造能力を持たない(2)湾岸全域にミサイルを発射する能力を持たない(3)ホルムズ海峡を封鎖する能力を持たない――を確認することだった。
しかし、交渉を重ねるうち、イラン側の引き延ばし戦略も明確に…。
―この戦争を長引かせ、ミサイル発射で交渉を何度も中断させ、米の報復を乗り切れば、米中間選挙まで持ちこたえられる。
―そうなれば、米民主党が下院で優位を奪還し、議会はトランプ政権のイラン戦争継続に必要な資金を配分しないだろう。もっと重要なのは、これが28年大統領選挙後の新政権の始まりになるかもしれない点だ。その暁には、バイデン、オバマ両時代の再来で、問題や不安は解消され、もう安心だ!
どっちが勝ったのか。終局はまだ先の話だが、少なくとも今のところ、イランは何とか切り抜けている。理由は米国が約110日前に全面的な戦闘を停止したからだ。イランは湾岸諸国に対するミサイル攻撃も停止していない。
ミサイルやドローンによる報復合戦もさほど効果はないのだろう。イランはホルムズ海峡の支配権を米国に手放していないし、濃縮ウランの管理についても同様だ。
米国内では経済が好調で、月別のインフレ率はほぼ歴史的低水準となったほか、国内総生産(GDP)の数値も強い。株式市場も好調。減税、エネルギー生産の増大、規制緩和などの全面的効果が現実に表れ、海外からの投資もある。
これでは、トランプ氏が「中間選挙では与党に批判が集中するため、野党が勝利する結果になる」という歴史的現実を覆すチャンスがある、と考え始めても無理はないし、イランもそれを承知している。
米中央軍は7月20日、イランに対する9日連続の攻撃を完了したと発表した。ホルムズ海峡と同国南部を中心に、沿岸監視施設、防空施設、軍事指揮センター、ドローン発射拠点、小規模の艦隊、ミサイルの給油施設などを強力に攻撃した。
「なぜもっと早い時期にこうした攻撃をしなかったのか」という当然の批判、真っ当な疑問も出ているが、回答はこうなるだろう。
―米国は交渉していた。だから以前は攻撃も控えめで、イランと同等に行った。しかし、現在のイランと対するには、攻撃には容赦なく、もう同等ではあり得ない。
眼前にある流れは、イランのあらゆる軍事能力を破壊する米軍の全面攻勢の方向だろう。
草野 徹(外交評論家)






