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時の焦点<海外> 米国の戦争

  • 4月16日
  • 読了時間: 3分

更新日:3 日前


チャーチル不在の悲劇


まるでジャズの即興演奏のように、先が読めないトランプ米大統領の言動。イランとの停戦の行方もなお霧の中だ。


トランプ氏の頭にあるのは、政治日程だろう。5月の米中首脳会談、7月の建国250年、11月の中間選挙。直近には4月27日のチャールズ英国王の国賓訪問が控えている。英国王とのツーショットは「私たちに国王はいらない」デモへのあてこすりとなる、トランプ氏の晴れ舞台だ。


米英両国は第2次大戦後、長く「特別な関係」と呼ばれてきた。「血は海水より濃い」と語り、ルーズベルト米大統領との友情を育んだチャーチル英首相が源流だ。


人種・言語・文化を同じくするアングロサクソン同盟は、戦後世界の自由と秩序の支柱となってきた。ジョン・ミーチャム元ニューズウィーク誌編集長は、著書「フランクリンとウィンストン」で「米国の大統領と英国の首相がキャンプデービッドの森を散策し、大西洋を挟んで電話で話す時、2人はルーズベルトとチャーチルのスタイルと影の中でそうしているのだ」と指摘する。


その米英関係はいま、大きな岐路にある。


軍事経済両面で米英の格差が拡大し、ともに行動するからこそ米国に影響力を行使できる、という英国の戦略は機能しなくなった。2003年のイラク戦争でブッシュ米大統領と共同歩調をとったブレア英首相は「ブッシュのプードル犬」と揶揄(やゆ)され、政治的な深手を負う。もはや「特別な関係」は存在しない。


それをあからさまにしたのが、米のイラン攻撃である。トランプ大統領は非協力的なスターマー英首相のことを「チャーチルとは全く違う」と皮肉り、ルーズベルトにとってのチャーチルのような信頼できる友人ではない、と切り捨てた。


ではもし、戦争の困難や不条理を知るチャーチルなら、トランプ氏に何を語っただろうか。


チャーチルは第1次大戦中、オスマントルコのダーダネルス海峡封鎖を図った地上戦で英仏など連合軍に4万人以上の犠牲者を出す失敗を犯し、海相を解任された。このガリポリの戦いは、明確な戦略目標の欠如がいかに悲惨な結果を招くか、という教訓をチャーチルに与えたとされる。


その後、復活して首相になり米国と共に第2次大戦を勝利に導いたチャーチルは、次の言葉を残している。「すぐ一掃されてしまう偽りの希望を指導者が持ち続けること以上の過ちはない」「話し合いはいつだって戦争よりましだ」


重い政治決断に苦悩する時、胸襟を開ける同盟国の友人がいるかどうかは、戦争の結末だけでなく、指導者の歴史的評価を左右する。ルーズベルトとチャーチルの絆はその最高の例だろう。


「米国の戦争」が迷走を重ねるにつれ、チャーチルの不在は英国の悲劇というより、むしろ米国の悲劇ではないか、という思いを強くする。


高旗 良(外交評論家)


(2026年4月16日付『朝雲』より)

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