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時の焦点<海外> イラン攻撃と核

  • 23 時間前
  • 読了時間: 3分

瀬戸際に立つNPT


「核拡散防止条約(NPT)に加盟していて何かいいことがあるのか、というシニシズムが非核保有国に広がっている」。国連本部で4月末から始まったNPT再検討会議。それを前に日本記者クラブで会見した中満泉・国連事務次長はこう率直に語った。


ロシアのウクライナ侵攻や米国とイスラエルのイラン攻撃で、核を巡る状況は悪化の一途をたどっている。2015年、22年と過去2回の会議は核大国の対立で合意文書を採択できなかった。5月下旬までの今回会期でも不採択となれば、NPTは空洞化する。


1970年発効のNPT(加盟191カ国・地域)は、67年までに核を開発していた米露中英仏の5カ国のみに核保有を認めている。加盟国に原子力平和利用の権利を保障する一方、核保有国には「誠実に核軍縮交渉を行う義務」(第6条)を課すことで、5カ国の特権に不満を持つ非核保有国をなだめてきた。


ちなみに非加盟国のインド、パキスタン、イスラエルはNPTの枠外で核を開発し、北朝鮮は途中脱退して核保有国となった。NPTの限界が言われるゆえんだ。


今回のイラン攻撃はそのNPTの課題をあらためて浮き彫りにした。


まず明らかな不平等性だ。イランに核を持たせないため核大国の米国と中東唯一の核保有国イスラエルが結託し、これまた核保有国のパキスタンが停戦合意を仲介した。「持ったもの勝ち」となる核の世界のゆがんだ構図がここにある。


次に、自衛には核戦力増強が不可欠だとする流れが、ウクライナの悲劇に続いて拡大していることだ。北朝鮮は核兵器の生産能力を向上させ、フランスは欧州各国に核の傘を提供する新たな核戦略を打ち出した。


外交ではなく武力で核開発を阻止することの是非も厳しく問われるだろう。攻撃直後、ドイツやカナダなどの首脳はイランの核保有を防ぐとの一点で支持・理解を表明した。その後、西側諸国は結束して一線を引いたものの、イランの核計画が瞬時に破壊され、軍事作戦が短期で終わるなら黙認しようという本音が透けて見えていた。


だが核大国が特権にあぐらをかき、第6条の義務を無視したまま加盟国を軍事的に屈服させる現実を国際社会が容認すれば、条約の理念は失われNPTは崩壊の瀬戸際に立つことになる。


7年前、米国のシュルツ元国務長官、ペリー元国防長官らは共同論文で、誤解やミスによる核使用の危険が高まっていると警告し、当時のプーチン、トランプ両首脳に核大国が率先して責任を果たすべきだと訴えた。


いまそのプーチン氏はウクライナに核の脅しをかけ、トランプ氏は「文明を破壊する」と核使用を連想させるような言葉を口にする。シニシズムの根にあるのは、核兵器への節度すら失ったかに見える核大国指導者らの態度ではないか。


高旗 良(外交評論家)


(2026年5月7日付『朝雲』より)

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