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コラム


前事不忘 後事之師 第129回 戦争の抑止か勝利の追求か
―決着していない議論― 歴史家・川田稔は、「満州事変と政党政治」という本の中で昭和初頭に活躍した二人の人物について興味深い比較をしています。一人は政党政治家の浜口雄幸、もう一人は陸軍軍人の永田鉄山です。 浜口雄幸元内閣総理大臣 浜口雄幸(1870年~1931年)は大蔵省出身の政治家で、張作霖爆殺事件の責任をとって田中義一内閣が総辞職した後に内閣総理大臣に就任(在任:1929年7月~1931年4月)。協調外交を推進し、ロンドン海軍軍縮条約を締結します。 永田鉄山陸軍中将 永田鉄山(1884年~1935年)は陸軍士官学校、陸軍大学を優秀な成績で卒業した秀才肌の軍人で、軍政家として陸軍本流を歩み、陸軍の改革・刷新を主張したいわゆる「統制派」のリーダーでした。 川田はこの二人の安全保障観の違いについて分析します。二人は第一次大戦によって戦争の性質が大きく変化し、今後の近代工業国間の戦争は陸海軍のみならず、兵器・機械工業とそれを支える人的・物的資源を総動員する「国家総力戦」となるとの共通認識を持ちました。しかし、ここから先の見解は異なります。...


時の焦点<海外> トランプ演説
「邪悪な体制」は決断を トランプ米大統領は9月22日、国連総会で演説した。率直かつ単刀直入ないつもの“トランプ流”で、特に対イラン関係では、決定を遅らせる時は終わったとし、同国に厳しい選択を突き付けた。 今回の対イラン戦争に関しては、左派勢力および声高な素人集団から「不必要な戦争」との批判がある。 これに対し、トランプ氏は「想像してみるといい。邪悪な体制が核の盾の背後で大規模なテロ攻撃を実施する力を得ている。我々が対決しなければならないリアリティーはこれだ。あまりにも多くの人が無視することを好んだリアリティーだ。多くの大統領が無視したがり、この問題で何かするのをためらった。しかし、彼らは問題の存在を知っていた」 知っていたのに何もしなかった。議会内で響き渡る「米国に死を!」のシュプレヒコールも、いずれ消えてなくなるだろうと期待した。 しかし、実態はもっと悪かった。オバマ政権はイランに数十億ドルもの金を極秘に送った。しかも、出どころを明かさないように「現金」で、また目立たないように深夜の航空機で送った。その後、一般市民の生活が楽になったという話は聞


時の焦点<国内> 高市改造内閣
維新は責任自覚せよ 内外の課題は山積している。第2次高市改造内閣と与党は連携を密にし、「強い経済」の実現と積極的な外交・安全保障政策の推進に全力を挙げてもらいたい。 高市早苗首相が自民党役員人事と内閣改造を行い、第2次高市改造内閣が発足した。内閣の要となる木原稔官房長官、茂木敏充外相、片山さつき財務相、小泉進次郎防衛相らを続投させた。党役員は麻生太郎副総裁、鈴木俊一幹事長、小林鷹之政調会長らを再任した。 首相は党の会合で「公約の実現に向けて総力を挙げた執行体制とする」と述べた。政権の骨格となる顔ぶれを維持し、安定を重視したのは妥当と言える。 これまで閣外協力だった日本維新の会からは中司宏・前幹事長を規制改革相に起用した。閣僚を出したからには維新は与党としての連帯責任を自覚し、党の主張を強引に進める姿勢を改めるべきだ。 先の特別国会では、維新の要求で衆院議員定数の削減法案を与党が提出し、野党の反発を招いて国会が空転した。民主主義の根幹である選挙制度について合意形成を軽視する行動は看過できない。 自民内でも定数削減に慎重論がある中、特別国会での法案成


<春夏秋冬> 9.11と、歴史的健忘症 前嶋和弘
アメリカ同時多発テロの25年追悼集会の中継を見ながら、この原稿を書いています。数時間前には、この「春夏秋冬」のコラムニスト陣の一人で、心から尊敬する酒井啓子先生とTBSラジオ『セッション』で25年の歴史を振り返る特集でご一緒しました。 実は酒井先生とは同じ番組で5年前の9・11のタイミングでも同じテーマでお話をしています。ただ、5年前以上に今回は同じ点で意見が一致しました。 それは「同時多発テロとその後の対応から我々は何も学んでこなかった」「それどころか、“自衛”という名目をかざして、どんどん軍事的強者が自分の論理で法の秩序を破っている」ということです。いうまでもなく、この5年間にはウクライナ侵攻、ガザ攻撃、今年に入ってからはベネズエラ侵攻、イラン攻撃を世界は目にしています。 25年でアメリカ国内も大きく変わりました。 9・11当時、私はワシントンに住んでいましたが、社会の緊張が一夜にして究極に高まったのを覚えています。この日、ワシントン周辺を環状に囲む高速道路・ベルトウェーで車を走らせましたが、向かってくる車はまばらでした。...


朝雲寸言 (2026年10月1日付)
本年9月4日、国際連合総会はアフリカ諸国などの提案に基づき面積の比率をより正確に表す「イコールアース図法」という世界地図の活用を加盟国に促す決議案を賛成多数で採択した。賛成は我が国を含め164カ国、反対は1カ国、棄権6カ国だった。 大航海時代から使用されているメルカトル図法が高緯度にある地域・国が極端に大きく投影される一方で赤道付近に所在する国々が小さく見える地図の歪(ゆが)みがアフリカなどへの過小評価や偏見を招いていると主張したのだ。 そもそも扁球楕円体である3次元の地球表面を正確に2次元に転換することは不可能なことだ。要は面積の均一性を重視するか、方位が正しく保たれるかの違いに過ぎない。 唯一反対票を投じた米国の主張は興味深い。「国連が本来向き合うべき国際社会の真の問題から目を背け急進的な政治的アジェンダを議論している」、さらに「それこそが国連が世界で信頼を失い真剣に受け止められなくなっている理由だ」と米国は猛反発する。 メキシコ湾やオンタリオ湖の名称変更を標榜する自国の勝手さはどうなのだと思うが米国の主張はうなずけるものがある。一方で長年に


防研セミナー 時代を読み解く シリーズ<57> ウクライナ軍のドローン戦 3層を一体化した運用と技術
今月の講師 川村幸城氏 防衛研究所 先進領域研究部 宇宙安全保障研究室 主任研究官 慶應義塾大学を卒業し、陸上自衛隊に入隊(現在1陸佐)。職種はシステム通信科。防衛大学校総合安全保障研究科を修了し、博士号(安全保障学)を取得。 研究対象は「新領域と新興技術が軍事作戦に及ぼす影響」。 主な訳書:デルモンテ『AI・兵器・戦争の未来』(東洋経済新報社)、デーヴィス『陰の戦争――アメリカ・ロシア・中国のサイバー戦略』(中央公論新社)、ジャスパー『ロシア・サイバー侵略――その傾向と対策』(作品社)、ジョンソン『ヒトは軍用AIを使いこなせるか――新たな米中覇権戦争』(並木書房)、サレンダー『検証空母戦――日米英海軍の空母運用構想の発展と戦闘記録』(中央公論新社)、ヘルバーグ『サイバー覇権戦争――ソフトとハード、二つの戦線』(作品社)。 今年に入り、ウクライナ東部でのロシア地上部隊の攻勢が停滞している。その要因の一つが、ウクライナ軍による短距離、中距離、長距離の3層を一体化したドローン運用だ。 中距離攻撃(前線から25~200km) 昨年末以来、ウクライナ軍は


時の焦点<海外> 多極化と中露印
座視できぬ西側世界 ネパール・中国国境の土石流災害は地球温暖化の影響があると指摘されても、原因追及や対策を議論する機運は高まらない。国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長が米政権から制裁対象とされても、国際法規範を擁護する大きなうねりは起きない。今の世界にはグローバルな課題解決の先頭に立つ国も、国際秩序の解体を食い止める主役も不在なのだ。 戦後長く、それは米国が担ってきた。だが、9・11同時多発テロから四半世紀、米国が警察官の役目を降りた世界の勢力図は一変した。象徴的なのが、同時多発テロ25年を挟んで開催された上海協力機構(SCO)とBRICSの首脳会議だろう。二つとも中国とロシア、インドが軸となり、人口では世界の半分、経済規模でも四分の一から三分の一以上を占めるグループとしてG7(主要7カ国)の対抗勢力へと成長した。 SCOにはパキスタンも含む核保有国4カ国がおり、中央アジア各国を包含した巨大なユーラシア連合体である。ブラジルや南アフリカが参加するBRICSは、グローバルサウスの一大拠点だ。 中心は中国。SCOでのプーチン露大統領との個別会談で


時の焦点<国内> 防衛費概算要求
指揮統制にAI導入 無人機(ドローン)やAI(人工知能)など新たな技術を取得し、事態の長期化にも対応できなければ、日本の平和と安全を守ることは難しくなっている。「新しい戦い方」に向けた防衛予算が求められている。 防衛省が2027年度予算の概算要求で、過去最大となる8兆9000億円を計上した。政府は22年末の防衛力整備計画で、23年度から5年間の防衛費の総額を43兆円とすることを決めた。今回の概算要求では、43兆円の達成に必要な額が計上された。 高市政権は、計画を含む「安保3文書」を年内に改定する。この改定を前提に、概算要求には具体的な金額を明示しない事項要求の項目が多く並んだ。 防衛費は、年末の予算編成の段階では概算要求の8兆9000億円を上回ることが想定される。精緻な査定を重ね、真に必要な内容とすることが求められるだろう。 米軍再編費などを含む防衛関係費は国内総生産比で2%に達したが、米国は同盟国に防衛費のさらなる増額を求めている。 予算編成に当たっては、日本の防衛に必要な観点で吟味しなければならない。赤字国債に頼らない安定財源を示すことも大切


<春夏秋冬> 「韓国、南朝鮮」と「北朝鮮、朝鮮、北韓」 平岩俊司
「韓国と朝鮮という二つの国家が徐々に平和共存へ向かうことを期待する」。今年8月の中韓外相会談での王毅中国外相の発言だ。韓国の魏聖洛国家安保室長は「韓国の立場と異なる」として厳重に問題提起したという。 何が問題だったのか?「二つの国家」という文言だ。韓国と北朝鮮の関係について、1991年の南北関係基本合意書で確認した「国と国との関係ではない、統一を志向する過程で暫定的に形成される特殊な関係」とするのが韓国の公式の立場である。統一を放棄していない韓国にとって「二つの国家」は受け入れられない。 中国は、現在の北朝鮮が韓国は統一の相手ではない、とする「敵対的二国家論」を尊重して「二つの国家」としたのであろう。中韓国交正常化まで中国は、南北を「朝鮮、南朝鮮」と呼称してきたが、国交正常化以降は「朝鮮、韓国」に変更する。 北朝鮮は不愉快かも知れないが、中韓国交正常化は南北基本合意書や南北国連同時加盟など南北合意を前提としたものであり、南北双方に配慮した呼称変更というのが中国の立場だろう。その意味で今回は北朝鮮への配慮が優先したとも受け止められる。...


朝雲寸言 (2026年9月17日付)
大阪中之島美術館で今、オランダの画家ヨハネス・フェルメール(1632~75)の展覧会が開かれている。目玉は、日本では14年ぶりの「真珠の耳飾りの少女」だ。青いターバンを巻き、口元にほっと吐息のようなものを感じさせる名品。「北のモナ・リザ」などとも称賛されている。 フェルメールはバロック期の画家である。バロックの語源はポルトガル語で、意味は「歪んだ真珠」。西洋絵画史ではルネサンス、マニエリスムを経て、バロックが到来する。主な美の特質上、ルネサンスは均整美、マニエリスムはデカダンス美、バロックは動的瞬間の美とも言えよう。 絵の見方は千差万別だ。彼を「静謐(せいひつ)」な画家とみる専門家の解釈に頼るもよし、自分の思うままに感じ取るもよしである。 筆者はこの絵の魅力は、単なる少女の静謐さではなく、少女の動的姿態を描きとどめた点にあると思っている。バロックの、時に歪みをもたらす動的瞬間の美こそ核心なのだ。 彼の他の作品には、部屋のカーテンをさっと開けた瞬間に見えた、行動に集中する人物を描いたものも目立つ。この少女も肩をたたかれ、振り向いた瞬間の動的な姿態の


時の焦点<国内> ICC制裁
容認できぬ米国の横暴 国際刑事裁判所(ICC)を敵視してきたトランプ米政権が、ICCトップの赤根智子所長への制裁に踏み切った。「法の支配」を軽んじる暴挙と言わざるを得ない。日本は赤根氏を支援し、国際法廷を守らなければならない。 米国のルビオ国務長官は声明で、赤根氏らが、ICCに加盟していない米国などの政府関係者の捜査や訴追に直接的に関わってきたと主張し、「国家主権への攻撃は容認しない」と批判した。 ICCがかつて、アフガニスタンなどで活動する米軍人らを捜査対象としたことや、2024年にイスラエルのネタニヤフ首相に逮捕状を出したことを念頭に置いているとみられる。ネタニヤフ首相に対する逮捕状は、パレスチナ自治区ガザでの非人道的行為を重大な罪と判断したものだ。 米国もイスラエルもICCに加盟していない。だが、ICCは、検察官や裁判官らの正式な司法手続きを経て訴追している。米国が赤根氏ら個人を制裁するのは筋違いも甚だしい。 米国の狙いは、ICCを機能不全に陥らせることなのだろう。ルビオ氏は7月にICC解体を目指すと表明し、加盟国に脱退を迫っている。どう喝


<春夏秋冬> 「私の9.11」 鈴木敦夫
二度目のワシントンDC滞在を終え、2001年6月末に帰国。国会議員団のサポートとして、帰国後初の米国出張を命ぜられた。9月11日午前成田発のANA便に搭乗し、10時間以上のフライト。「当機は約1時間でワシントン・ダレス空港に着陸いたします」 ところが、1時間以上経っても機体が降下している感じもない。変だなと思い始めたところに「米国航空当局の情報によれば、現在米国上空は戦争状態にあります」との機内アナウンスが流れた。しばらくして機長から「連邦航空局の指示により、当機はデトロイト空港にダイバートします」。成田離陸後もう15時間以上は飛び続けている。 デトロイト空港に着陸して、拳銃を所持していそうな官憲らしき集団が乗り込んできてコックピット方向に向かう。ハイジャックされていた? SNSも海外携帯も現在とは全く事情が異なる時代のこと。何が起きているのか想像するしかなかった。「ペンタゴンシティに旅客機墜落」「NYツインタワービルに航空機衝突」、断片情報がやっと機内に流れる。 同じくダイバートされた隣のANA・ニューヨーク(NY)便とあわせて約1000人の乗


朝雲寸言(2026年9月10日付)
実際の部隊や装備を動かさずに指揮官や幕僚が地図やコンピューターを使って作戦計画の策定や部隊の指揮・調整手順を訓練する演習を指揮所演習という。 この演習は不測事態における司令部の幕僚組織を鍛えることも目的のひとつであり、そのため各幕僚は不眠不休の活動を強いられることが多い。 近年この指揮所活動の多くの分野が情報通信技術によってシステム化され迅速化・効率化されるようになった。デジタル化された地図とソフトウエア上で部隊が作戦を遂行し、その行動の可否はコンピューターが判断する。その過程に人間の意志は介在しない。 さらに司令部活動がAIによって大きく変わりつつある。防衛省は偵察衛星やドローンなどから得られる膨大な情報データを統合分析し戦況の分析や目標の選定・標定を自動化して作戦の立案や作戦指導において指揮官の判断を支援するAI導入の検討を開始した。 ドローンが戦場を支配する時代はすでに始まっている。近い将来、AIが作戦自体を指揮する時代が来るだろう。不眠不休の幕僚活動は過去のものとなりそうだ。 時代とともに戦争は変化する。しかし武器がどれほど発達しようとこ


時の焦点<海外> 米イラン戦争
未解決は国内に悪影響 米軍は8月30日、「イスラム革命防衛隊(IRGC)が機雷搭載のロケット弾をホルムズ海峡に向け発射する準備をしていた」として、同国南部ララク島にある発射台2基を攻撃、破壊した。イランも同日、ヨルダン駐留の米軍基地に弾道ミサイルで報復攻撃。攻撃の応酬は約1カ月ぶりで、再び緊張が高まる気配もある。 今回の事態は、米国の国家安全保障や国内政治の動向にどのような意味を持つのだろうか。 国家安全保障の観点からは、イラン現政権のこれまでの損失は著しい。しかし、同海峡をめぐる危機がほぼ継続している事実が明らかなように、同政権はいまだに「無力化」されてはいない。 また、核兵器保有の“野望”に関しても、それとは真逆の真意が実証されるまでは、重大な脅威であり続ける。 一方、国内情勢に絡むファクターとして見ると、国民は外交政策に関心を寄せていても、外交問題を投票の第一基準にすることはめったにない。 これが世論調査で常に示される傾向であり、国民は国内の安全保障と繁栄に対するインパクトの大小で、海外の出来事を評価する傾向がある。 そのため、経済情勢全般


<春夏秋冬> 対イラン制裁の あおりを受けるイラク 酒井啓子
イランとの戦争が膠着(こうちゃく)化するなか、トランプ米政権はイランへの制裁強化を発表した。これまでも「最大限の圧力」として強い経済制裁を科してきたのだが、さらに対イラン取引相手国に厳しい態度をとるのが今回の制裁だ。 中国やロシアなど対イラン友好国や、周辺国で対イラン経済関係を絶つことができないアラブ首長国連邦(UAE)やイラクが、制裁強化で引っかかる。 イランからの報復攻撃を最も多く受けているUAEは、ハブ港としてイランとの交易は欠かせない。 2018年、最初に対イラン制裁が科された直前の統計によれば、UAEはイラン原油輸入国リストのなかで、日本に次ぐ第7位だった。 なかでも対イラン制裁、さらにはイランとの戦争一般によって大打撃をかぶっているのが、イラクである。 イラク戦争後、多国籍軍の戦後治安回復もままならず、「イスラーム国」(IS)などの武装勢力に悩まされ続けてきたイラクだが、4年ほど前から好景気に沸いていた。ロシアのウクライナ侵攻で石油価格が高騰、国家収入のほとんどを石油輸出に依存するイラクとしては一気に収入が増加したのである。...
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