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コラム


<春夏秋冬> 対イラン制裁の あおりを受けるイラク 酒井啓子
イランとの戦争が膠着(こうちゃく)化するなか、トランプ米政権はイランへの制裁強化を発表した。これまでも「最大限の圧力」として強い経済制裁を科してきたのだが、さらに対イラン取引相手国に厳しい態度をとるのが今回の制裁だ。 中国やロシアなど対イラン友好国や、周辺国で対イラン経済関係を絶つことができないアラブ首長国連邦(UAE)やイラクが、制裁強化で引っかかる。 イランからの報復攻撃を最も多く受けているUAEは、ハブ港としてイランとの交易は欠かせない。 2018年、最初に対イラン制裁が科された直前の統計によれば、UAEはイラン原油輸入国リストのなかで、日本に次ぐ第7位だった。 なかでも対イラン制裁、さらにはイランとの戦争一般によって大打撃をかぶっているのが、イラクである。 イラク戦争後、多国籍軍の戦後治安回復もままならず、「イスラーム国」(IS)などの武装勢力に悩まされ続けてきたイラクだが、4年ほど前から好景気に沸いていた。ロシアのウクライナ侵攻で石油価格が高騰、国家収入のほとんどを石油輸出に依存するイラクとしては一気に収入が増加したのである。...


前事不忘 後事之師 第128回 満州事変を考える
――政治指導者の判断が重要 今から95年前の1931年9月、その後の日本の方向を大きく変える事件が起こりました。「満州事変」です。当初、この事変は中国軍の攻撃に対する関東軍の自衛行動とされていましたが、実際は関東軍の作戦参謀・石原莞爾中佐と高級参謀・板垣征四郎大佐の“謀略”でした。 翌年3月には傀儡(かいらい)政権・満州国が成立し、その後日本政府が満州国を承認したことから謀略は成功しました。歴史家の何人かは、事変4日後の閣議が増援のための朝鮮軍の独断出兵を事後承認したことが大きなポイントだったと主張します。 事変から閣議までの流れを五百旗頭真元防衛大学校長や川田稔名古屋大学名誉教授の著書を基に示します。 1931年9月18日、午後10時20分頃、満州・奉天近郊の柳条湖付近の満鉄線路が爆破されます。爆破は関東軍の部隊が行ったものでしたが、板垣は中国側からの攻撃だとして、独断で奉天郊外に所在する中国軍部隊を攻撃。その後、攻撃範囲を拡大させ、翌日には長春など満鉄沿線の南満州主要都市のほとんどを占領します。事変を受けて翌19日午前中に臨時閣議が開かれます


時の焦点<国内> 海底ケーブル
国が関与し防護強化を 安全保障上の重要インフラであるにもかかわらず、十分な防護策は講じられてこなかった。 海底ケーブルの重要性を考えれば、国の主導で監視体制を強化し、ネットワーク網を守っていく必要がある。 総務省の有識者検討会が、日本と海外の情報通信を担う国際海底ケーブルの防護策を報告した。 海底ケーブルは、銅パイプなどで保護された光ファイバーが信号を電送する。陸上に到達した後、陸揚げ局と呼ばれる施設で国内の通信網に接続される。 検討会は、海底ケーブルを狙った攻撃に対し、国際的な関心が高まっていることを受けて設置された。政府による防護策の本格的な議論は初めてとなる。 バルト海や台湾周辺では近年、ロシアや中国の関与が疑われる切断事案が相次いでいる。 2023年には台湾本島と離島を結ぶ海底ケーブルが切断され、電話やネットが遮断された島では混乱が生じた。 台湾は昨年末、故意の損壊行為に対する罰則を強化した。 海に囲まれた日本は、国際通信の99%を海底ケーブルに頼っている。 仮に障害が発生すれば、インターネットの不通で国民生活が混乱するだけでなく、防衛に


朝雲寸言(2026年9月3日付)
読書の秋。本は時として驚くべき世界観を教えてくれる。 「うつほ(宇津保)物語」と言っても、知る人はそう多くない。せいぜい「『源氏物語』に先行する物語」と認識されて、ほとんど素通りされてしまう。 ペルシャで習得した七弦琴の秘技を継承する一族が、その神秘的な音色を武器に苦難を乗り越え、栄光をつかむ音楽物語なのだ。京都で心の闇を深める「源氏」の感触とは異なり、国際色豊かでダイナミックである。 隋や唐の都は、シルクロードの一方の終点といわれた。遣隋使、遣唐使が盛んだった飛鳥・奈良時代の日本には西域・大陸文化が流入した。正倉院には、ササン朝ペルシャが起源とされるガラス器や楽器が保管されている。 奈良時代の「続日本紀」には736年に「波斯人(ペルシャ人)」が来朝した記録がある。ササン朝ペルシャ滅亡後に唐に移り住んだとみられる李(り)密翳(みつえい)という人物だ。 遣唐使の廃止によって国風文化が発酵していく。その申し子が「源氏」だとすれば、「うつほ」は西域文化の残り香が浸潤したプレ国風文化の賜物(たまもの)なのである。 考えてみれば、やはり「源氏」に先立つ「竹


時の焦点<海外> 米朝接近
火遊びにならぬよう モスクワのBBC(英国放送協会)特派員のこのところの解説では、プーチン政権は世界を二つの隊列に分断して考えているのだという。ロシアに友好的な国か、友好的ではない国か。専制権威主義国家とはそういうものだろう。中国しかり、北朝鮮しかり。そこに共通の理念や価値観などはなく、あるのは自国(または指導者)第一の利害打算だけである。 その「友好的な隊列」に米国が加わるとしたら――。長年築きあげた同盟関係より眼前の友好国との実利を優先させるトランプ政権の姿勢は、そんな疑念を生じさせずにはおかない。専制権威体制と一線を画すはずの隊列が、リーダーを失い右往左往しているのが今の世界ではないか。 そんな思いを改めて強くするのが、朝鮮半島情勢を巡るトランプ大統領の最近の発言だ。 トランプ氏は、8月中旬から下旬に行われた恒例の米韓合同軍事演習の規模と期間の大幅縮小を直前になって指示。 北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党総書記とは「とても仲が良い」と年内の首脳会談の計画を明らかにし、あげくは「彼は非常に強力な核兵器を57発所有している」と、核保有国であることを公


朝雲寸言(2026年8月27日付)
「記録的短時間大雨情報」とは、数年に一度しか発生しないような短時間の大雨を観測・予測したときに災害へのさらなる警戒を呼び掛けるため気象庁が発表する気象防災速報である。 8月13日夕から14日朝にかけて発生した「令和8年8月千葉豪雨」では、この記録的短時間大雨情報が23回も発表されたという。 豪雨は夕方の帰宅時間を直撃し、千葉駅周辺で一時4000人を超える帰宅困難者が発生した。また道路の冠水により2500台以上の車両が立ち往生し、路上に放置された。 アスファルトに覆われた都市部の降水は地面が吸収しない。多くの都市で整備される下水施設の能力は1時間に50ミリ(一部65ミリ)を超える豪雨に対応できるようには作られていない。結果的に今般の豪雨は内水氾濫となり、想定以上の災害となった。 地震や台風などの自然災害だけでなく、火事や爆発などの防災対策や事故防止の最大のポイントは災害をどのように予測するかということであろう。防災マップやハザードマップは被害予想系であり、避難所・避難経路マップが避難行動系にあたる。 今回の豪雨災害で思い知らされた格言は「災害は忘れ


時の焦点<海外> イラン強硬派
戦争拡大へ極秘に計画 トランプ米大統領が仏ベルサイユ宮殿で、対イラン戦争の終結と同国の核開発問題での合意を目指し、60日間の期限を設定したイランとの覚書に署名したのが2026年6月17日である。そして、8月17日にその期限が切れたが、両国間の隔たりは60日前よりさらに拡大した。相互に相手側の合意違反を非難し続け、合意自体がほぼ何も残っていない。 そんな情勢下、米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」が16日、「イラン、戦争拡大へ極秘計画」との見出しで報じた。その記事によると、イランの強硬派指導者は戦争をエスカレートさせ、米国の損害を増大させることを準備中だという。 同紙によると、覚書署名後、イランの政府当局者はホルムズ海峡の再開放につながり得る同合意への支持獲得を期したが、強硬派指導者はテヘランで極秘に会合し、政府とは真逆の方針をまとめた。 イランおよびアラブ諸国の当局者が同紙に明かしたところでは、イランの強硬派はこの60日間を米国との大規模な対決への準備に費やした。 同国正規軍に対するイスラム革命防衛隊の指揮・監督を拡大する、実戦経験が豊富な強


時の焦点<国内> 北方領土訪問
露大統領の暴挙だ ロシアのプーチン大統領が8月13日、北方領土の択捉島を訪問した。日露関係を決定的に悪化させる暴挙と言える。日本政府は揺さぶりに動じず、毅然(きぜん)と対処すべきだ。 ロシアの国家元首では、2010年に当時のメドベージェフ大統領が国後島を訪れたことがある。2000年から実権を握るプーチン氏の北方領土訪問は今回が初めてだ。 2022年からウクライナを侵略するロシアに対し、日米欧は、ロシア要人に対する資産凍結などの経済制裁を続けている。苦境に陥ったロシアは、中国へのエネルギー輸出を拡大するなど、中国との経済的関係の強化に動いた。 プーチン氏が択捉島を訪問したのは、高市政権の外交安全保障政策を「新型軍国主義」と呼んで批判を強めている中国と、歩調を合わせる狙いがあったのではないか。 プーチン氏は択捉島を訪問する前日、サハリン州で露軍関係者と会談した際、北方領土は第2次世界大戦の結果、ロシア領になったと述べたという。日露平和条約交渉については、「安倍元首相を含む日本の指導者と建設的な関係を築いていたが、現在、日本側の立場が変化している」と語


防研セミナー 時代を読み解く シリーズ<56> ニミッツ提督と情報
今月の講師 中西啓種氏 防衛研究所 戦史研究センター 国際紛争史研究室 主任研究官 1973(昭和48)年生まれ。埼玉県出身。防衛大学校航空宇宙工学科卒業、同安全保障研究科(国際安全保障)前期課程修了。航空自衛隊の部隊、航空幕僚監部を中心に、防衛力整備などに従事し、2025年3月より現職。専門はロシア安全保障、情報。修士論文「プーチン政権の兵器輸出戦略 ―対中戦闘機輸出を事例として―」にて安全保障学修士。 日本を仮想敵国に情報将校55人養成 チェスター・ニミッツ提督は、第二次世界大戦時、米国に勝利をもたらした太平洋艦隊司令官として知られているが、同提督がいかに情報組織間の業務を見直し、情報を活用して勝利したかについては我が国ではあまり知られていない。また、ミッドウェー海戦等の敗因として、日本海軍暗号が解読されたためとされてきたが、日米開戦時、同暗号はほぼ解読されていない。わずか半年後、米海軍はミッドウェー海戦に勝利した。何が変わったのか。 日米開戦時、優秀な対日情報将校らは多数存在した。日露戦争後、米国は日本を仮想敵国として、戦争計画を策定すると


<春夏秋冬> 「デジャブ」となるイラク戦争 前嶋和弘
2003年以降、一時撤退の数年をはさみ、イラクに駐留してきた米国軍がこの9月末で完全撤退を決めました。ピーク時の07年には17万人が駐留。米軍にとっては歴史的な節目となります。完全撤退は、バイデン政権末期の24年9月に決まっていました。「ようやく」という感じです。 イラク戦争とその後の駐留とは米国にとって、何だったのでしょうか。フセイン政権が持つ大量破壊兵器を排除することが戦争の大義でしたが、発見されていません。国連安保理でのパウエル国務長官の「スラムダンク(決定的証拠)だ!」という大量破壊兵器工場の写真は、過剰な言葉とは裏腹に何だかわからない施設の像でした。 このパウエルと同じような、いやそれ以上に過剰で稚拙な説明を今回のイラン攻撃ではトランプ政権が繰り返しています。「反撃能力はほとんどない」「イランを石器時代に戻す」「最後通告だ」と威勢は良いが空虚な言葉がトランプ大統領からは続いています。 イラン攻撃の大義は核兵器開発の阻止のはずですが、攻撃を決めた際のイラン側の核濃縮の状況は「すぐにもイスラエルを攻撃可能」とするネタニヤフ首相からの情報だっ


<春夏秋冬> 中国にとって北朝鮮軍 ロシア派兵の意味 平岩俊司
ウクライナのゼレンスキー大統領は、北朝鮮が5万人のロシアへの派兵を予定していると警告した。実際の規模、目的などはまだ明らかではないが、ロ朝関係の緊密化が進んでいる。 ロシアとの緊密化で北朝鮮は、武器弾薬や派兵への経済的見返り、兵器の実戦データ、軍事技術支援、さらにはドローンに象徴される現代戦の経験など莫大なものを得たとされる。 一方、ロシアは、不足する武器弾薬、兵力の補給はもちろん、外交カードとしての北朝鮮を手に入れたと言ってよい。とくにロ朝接近を警戒する中国に対するカードとしても使えることを理解したとされる。いずれにせよロ朝双方とも緊密化を短期的な動きにとどめるつもりはなさそうだ。 では中国はどう見ているのか。2024年9月、中国で半島専門家と意見交換する機会を得たが、中国側は間違いなくロ朝接近を気にしていた。 ただ、警戒しているといった感じはなく、「われわれが与えない軍事技術をロシアからもらうためでしょ」と冷ややかであった。北朝鮮の対外貿易の90%以上を占める中国にロシアが代われるはずはない、軍事技術は提供できても民生品、食料など北朝鮮経済を


朝雲寸言(2026年8月20日付)
熊本地震が起きて間もなく1カ月だ。避難所には今も3000人以上が身を寄せている。プライバシーの確保、トイレの衛生面はどうか。段ボールのベッドで雑魚寝なのか。食事はどうか。避難者が改善を求めるニュース映像は後を絶たない。 待てよ。我々は、震災のたびにこうしたニュースに接してはいないだろうか。1995年の阪神・淡路大震災、2011年の東日本大震災、24年の能登半島地震、10年前の熊本地震でも、そうだった。世界有数の災害大国として恥ずべき状況ではないか。 「防災先進国」のイタリアは、国主導で発災48時間以内にトイレ、キッチン、ベッドと充分な生活環境を提供するシステムを持つ。米国でも避難所をホテルや民間施設に分散させる方式が稼働する。スウェーデンなどでは完全個室化を重視した措置を取る。 日本では能登半島地震を受け、24年に避難所運営のガイドラインを改定。国際的人道基準「スフィア基準」を導入した。物資の備蓄や迅速な調達を自治体へ強く促した。1947年成立の「災害救助法」は25年、改正された。 災害大国である。対策実行者は自治体ではなく、国であるべきだろう。


時の焦点<国内> 防衛白書
「新しい戦い方」を分析 世界各地で戦争が繰り広げられ、その領域は陸海空から宇宙やサイバー、電磁波へと広がっている。特に、無人機(ドローン)の登場は戦場の光景を変えた。 新たな危機の時代に日本の平和と安全を守るには、「新しい戦い」を視野に入れた対応策を練っていく必要がある。 2026年版の防衛白書が公表され、中国の軍事動向について、25年版と同様に「わが国と国際社会の深刻な懸念事項」だと指摘した。また、ウクライナ戦争以降の新しい戦い方について、初めて本格的に分析した。 戦火が続くウクライナでは、安価なドローンが大量に投入され、長射程ミサイルによる大規模攻撃も頻発している。 白書では、ドローンや衛星をネットワークでつないで情報収集することにも触れ、「技術と情報の使い方が大きな意味を持つ」と指摘している。 日本も4月、射程1000キロメートルを超える地上発射型のミサイルを陸上自衛隊の駐屯地に配備した。無人機を島嶼防衛に活用する防衛構想にも着手している。これら装備品の運用は、通信衛星による迅速な情報共有が前提となる。だが、日本の衛星打ち上げ数は依然少ない


時の焦点<海外> 苦悩する欧州
移民危機で亀裂露呈 日欧の国際報道における最大の違いは、中東やアフリカのニュースが欧州では質量とも圧倒的なことだろう。中東とアフリカは、欧州とは地中海を挟んで一つの歴史文化圏内にある。日本で言えば朝鮮半島や中国のように、安全保障上も社会経済上も無関心・無関係ではいられないのだ。 7月末、北アフリカ・モロッコに接しているスペイン領セウタに7万人を超す移民が一気に押し寄せた問題は、その欧州の最も敏感な部分を大いに刺激した。各国は中東・北アフリカから100万人以上の難民が流入した2015年の政治危機を想起し、EU(欧州連合)に不協和音が響いた。 イタリアは、EU域内を自由に移動できるシェンゲン協定をスペインとの間で1カ月停止。フィンランド、デンマーク、チェコが支持に回った。 怒ったスペインは9月7日まで伊からの国境審査を厳格にする対抗措置をとる。セウタの移民はほとんどがモロッコに戻って事態は沈静化したにもかかわらず、欧州の亀裂は露呈したままだ。 本来はドイツやフランスという中心国家がまとめ役になるところ、独は9月の地方選で反移民の極右政党「ドイツのため


時の焦点<国内> 消費税減税
懸念の払拭へ全力を 政府が食料品の消費税率を2027年4月から2年間、8%から1%に引き下げる方針を決定した。秋の臨時国会で関連法案の成立を目指す。 食料品の消費税率1%分の税収にあたる年6000億円分の給付も合わせて、消費税率を「実質ゼロ」にするという。 総額5兆円に上るとされる減税・給付の財源をどう確保するのか。財政や、為替・金利への悪影響はないのか。2年後に確実に税率を戻せるのか。高市首相は、様々な指摘を真摯に受け止め、懸念の払拭に努める必要がある。 首相は、英国の付加価値税など欧州の仕組みを参考にしているようだ。 英国の付加価値税率は20%(標準税率)だが、食料品の税率は原則としてゼロだ。金融危機の際には、付加価値税率を引き下げたこともある。欧州では英国に限らず、柔軟に税率を変更できる国が多い。 日本では物価の高騰が続いている。首相としては、国民生活に寄り添う姿勢をアピールしたいのだろう。 ただ、消費税は社会保障を支える安定財源だ。その減税には不安が付きまとう。 首相は税収減となることについて、「さらなる歳入確保の取り組みを進める」と語っ
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