<春夏秋冬> 潮目が変わったように みえる米中関係 前嶋和弘
- 3 日前
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読者のみなさんは、ここ半年くらいのトランプ政権の中国への対応について、首をかしげることが多いのではないでしょうか。
アメリカにとって外交・安全保障上の最大の課題であるはずの中国に対して、トランプ政権がだいぶ宥和(ゆうわ)的になっているようにみえるためです。トランプ第1次政権が中国に厳しい態度をとっていたのとは対照的です。
何があったのでしょうか。それは経済面で対中認識が大きく変わったことが大きいのかと思います。トランプ政権は昨年、看板政策として中国などに対して高関税政策を進めましたが、中国はアメリカ経済にすでに深く浸透しており、相互依存関係になっていました。アップルなどの製品は中国生産なので、アメリカのユーザーが関税分を負担することになりました。
関税に反発し、中国はアメリカ産の大豆を買わなくなったほか、レアアース(希土類)のアメリカへの輸出を見送りました。中国に貿易戦争を仕掛けても、結局、アメリカの出血もかなり多く、痛み分けとなります。
昨年10月に開催された米中首脳会談あたりが一つの山場となり、「潮目が変わった」ようにもみえます。この会談では、アメリカが対中関税を下げる一方で、中国はレアアース輸出再開、アメリカ産大豆の速やかな輸入開始、合成麻薬フェンタニルの流通阻止などで合意しました。これはトランプにとっては満額回答でした。
米中を二大国家「G2」とトランプ大統領が表現するように、これ以降の米中関係は、中国を叩き潰す包囲網を作るのではなく、中国とは適宜話し合い、競争しながら共存を図り、問題を解決していく大国関係になっていく方向性が明らかになりつつあります。
5月中旬に北京で開かれた米中首脳会談もこのベクトルの上にありました。アメリカは経済的なメリットを最大化しようとする一方で、中国は台湾について、トランプ大統領にゆさぶりをかけています。
日本にとっては、大きな変化です。トランプ第1次政権の時には当時の安倍晋三首相が対中政策をトランプ大統領にアドバイスし、情報を打ち込んだ形でした。しかし、今では日本が米中会談の後に情報を伝えられる立場になりました。
何といっても経済の論理で安保が後退しているようにみえるのが日本としては納得できないところです。同盟関係をどう考えているのか。トランプ政権の安全保障観についての不安は尽きません。
(上智大学総合グローバル学部教授)







