<春夏秋冬> 「韓国、南朝鮮」と「北朝鮮、朝鮮、北韓」 平岩俊司

「韓国と朝鮮という二つの国家が徐々に平和共存へ向かうことを期待する」。今年8月の中韓外相会談での王毅中国外相の発言だ。韓国の魏聖洛国家安保室長は「韓国の立場と異なる」として厳重に問題提起したという。
何が問題だったのか?「二つの国家」という文言だ。韓国と北朝鮮の関係について、1991年の南北関係基本合意書で確認した「国と国との関係ではない、統一を志向する過程で暫定的に形成される特殊な関係」とするのが韓国の公式の立場である。統一を放棄していない韓国にとって「二つの国家」は受け入れられない。
中国は、現在の北朝鮮が韓国は統一の相手ではない、とする「敵対的二国家論」を尊重して「二つの国家」としたのであろう。中韓国交正常化まで中国は、南北を「朝鮮、南朝鮮」と呼称してきたが、国交正常化以降は「朝鮮、韓国」に変更する。
北朝鮮は不愉快かも知れないが、中韓国交正常化は南北基本合意書や南北国連同時加盟など南北合意を前提としたものであり、南北双方に配慮した呼称変更というのが中国の立場だろう。その意味で今回は北朝鮮への配慮が優先したとも受け止められる。
日本はどうか。65年の日韓国交正常化に際して38度線以北については「白紙」として北朝鮮との関係の可能性を残した。もとより日本は、朝鮮半島は一つ、との立場をとりながらも、韓国の立場を一方的に受け入れたわけではなかった。
だから韓国が使う「北韓」との呼称は用いず北朝鮮としたのである。こうして、韓国、北朝鮮との呼称が一般的になる。
その後、2000年に発足した日本の現代韓国朝鮮学会は、「韓国北朝鮮」ではなく「韓国朝鮮」とした。南北いずれの側にも立たず、朝鮮半島は一つを前提に、それぞれの立場で「韓国」「朝鮮」、いずれでも好きに呼べばいい。そんな思いが込められている。
当事者の南北が今後統一についてどのような立場を取り、合意できるかにもよるが、日本は、朝鮮半島は一つとの前提で韓国、北朝鮮と呼称するだろう。
ただ、拉致・核・ミサイルの包括的解決が進み、日朝関係が進展すれば、北朝鮮の呼称についても検討されるかも知れない。しかしその前提は、朝鮮半島は一つ、との立場だ。南北が統一放棄で合意しない限り。
(南山大学総合政策学部教授)








