<春夏秋冬> 10・7から3年 酒井啓子

イスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃を契機としたガザ戦争が始まって、3年が経つ。昨年10月に、トランプ米大統領の仲介でイスラエルとハマスの間で停戦が成立したが、停戦後も戦火は続き1000人以上が死亡、ガザでの死者は7万3000人以上に上る。残された住民の9割が浄水に問題を抱え、産業・商業施設の9割以上が破壊され、7割以上の道路が破壊された。
停戦成立にもかかわらず、国際機関など海外からの支援は十分に行き届いていない。昨年、ガザで飢餓が進行しているという国際機関の深刻な警告があって、欧州連合(EU)諸国などの危機感から停戦が成立した。その時に比較すれば多少改善したようだが、物資や人員のガザへの搬入は引き続きイスラエル政府の厳しい管理下にあり、検問所で阻まれるケースが少なくない。
一方で、最近ではもうひとつのパレスチナ自治区である西岸でのパレスチナ人住民の被害が増えている。西岸地域では、イスラエルの入植者が地元のパレスチナ人を襲撃し家屋の破壊や住民に危害を加えることが常態となっているが、2023年以降その頻度はうなぎ上りで、昨年の被害件数は1836件と23年の倍以上だ。今年も、昨年以上のペースで襲撃事件が起きている。
このような状況を見れば、イスラエルはすでにパレスチナ自治区を存続させるつもりがないのではないか、と見える。実際、世論調査によれば、パレスチナ人との共存は可能と考えるイスラエルのユダヤ人は、過去13年間で最も低い、2割程度だ。こうした傾向を見て、パレスチナに対する圧倒的勝利に酔うイスラエル社会の高揚感、「イスラエル一強」による拡大志向を、周辺諸国は危惧している。9月の国連総会では、ネタニヤフ・イスラエル首相の演説時に77カ国の代表が席を立った。だが、8割のイスラエル人は国連に否定的な見解を持っており、耳を貸す道理はない、と考える。
国外からの厳しい批判を真摯(しんし)に受け止めるイスラエル人は、少数派だ。そんななかで、イスラエル軍による民間人への攻撃の実際を描いたイスラエル人監督による映画「NAZA」が、ベネツィア国際映画祭で審査員特別賞を受賞、満場の大喝采を浴びた。彼らのように、真実から目を背けないイスラエル国民も、いる。
(千葉大学特任教授)








