<春夏秋冬> 対イラン制裁の あおりを受けるイラク 酒井啓子
- 1 日前
- 読了時間: 2分

イランとの戦争が膠着(こうちゃく)化するなか、トランプ米政権はイランへの制裁強化を発表した。これまでも「最大限の圧力」として強い経済制裁を科してきたのだが、さらに対イラン取引相手国に厳しい態度をとるのが今回の制裁だ。
中国やロシアなど対イラン友好国や、周辺国で対イラン経済関係を絶つことができないアラブ首長国連邦(UAE)やイラクが、制裁強化で引っかかる。
イランからの報復攻撃を最も多く受けているUAEは、ハブ港としてイランとの交易は欠かせない。
2018年、最初に対イラン制裁が科された直前の統計によれば、UAEはイラン原油輸入国リストのなかで、日本に次ぐ第7位だった。
なかでも対イラン制裁、さらにはイランとの戦争一般によって大打撃をかぶっているのが、イラクである。
イラク戦争後、多国籍軍の戦後治安回復もままならず、「イスラーム国」(IS)などの武装勢力に悩まされ続けてきたイラクだが、4年ほど前から好景気に沸いていた。ロシアのウクライナ侵攻で石油価格が高騰、国家収入のほとんどを石油輸出に依存するイラクとしては一気に収入が増加したのである。
失業や環境汚染など、生活苦を訴える人々の不満を懐柔するために、政府は道路建設など生活インフラ整備を進めると共に、ショッピング・モールや五つ星ホテルの建設ラッシュを進めた。湾岸の富裕層相手の観光誘致を進め、アジアカップなどスポーツイベントを主催して、経済発展と安全をアピールしていたのである。
その矢先のイラン戦争だ。ホルムズ海峡を閉ざされて、イラク原油の輸出は完全にストップした。豪勢なホテルに泊まってショッピングを楽しんでいた湾岸諸国の観光客は、イランと一緒になってクウェートやサウジを攻撃するイラクの民兵に反発、観光や投資の手はぱったり止まった。
制裁強化で対イラン交易が禁止されれば、一層イラク経済は干上がる。精油や電力など、生活の基礎物資をイランから輸入しているからだ。シーア派聖地を訪れるイラン人巡礼客からの観光収入も、今後は期待できない。
米国頼みのイラク政府は、経済を止めたくない。だが、国内で意気軒高な親イラン民兵集団の武装活動も、止められない。米・イラン対立のはざまで最も悲鳴を上げているのが、イラクなのだ。
(千葉大学特任教授)








