<春夏秋冬> 中国にとって北朝鮮軍 ロシア派兵の意味 平岩俊司

ウクライナのゼレンスキー大統領は、北朝鮮が5万人のロシアへの派兵を予定していると警告した。実際の規模、目的などはまだ明らかではないが、ロ朝関係の緊密化が進んでいる。
ロシアとの緊密化で北朝鮮は、武器弾薬や派兵への経済的見返り、兵器の実戦データ、軍事技術支援、さらにはドローンに象徴される現代戦の経験など莫大なものを得たとされる。
一方、ロシアは、不足する武器弾薬、兵力の補給はもちろん、外交カードとしての北朝鮮を手に入れたと言ってよい。とくにロ朝接近を警戒する中国に対するカードとしても使えることを理解したとされる。いずれにせよロ朝双方とも緊密化を短期的な動きにとどめるつもりはなさそうだ。
では中国はどう見ているのか。2024年9月、中国で半島専門家と意見交換する機会を得たが、中国側は間違いなくロ朝接近を気にしていた。
ただ、警戒しているといった感じはなく、「われわれが与えない軍事技術をロシアからもらうためでしょ」と冷ややかであった。北朝鮮の対外貿易の90%以上を占める中国にロシアが代われるはずはない、軍事技術は提供できても民生品、食料など北朝鮮経済を支えることはロシアにはできない、との自負が中国側にはあった。
しかし、合理的ではないがより大きな自負があるようだった。共に戦い血を流した経験――中国人民志願軍が参戦した朝鮮戦争での血盟関係だ。中国側の言葉の端々にそれがにじみ出ていた。
プーチン大統領はソ連空軍が正式に朝鮮戦争に参戦した、とするが、共に血を流したわけではない。ところが、この翌月の24年10月、ロシアの派兵がはじまり、ロ朝は血盟関係となった。冷ややかだった中国側の反応ははたして変わったのだろうか。
習近平訪朝時、中朝友好協力相互援助条約締結65周年を機に、高官往来による戦略的意思疎通の緊密化で中朝は合意した。
それに従い、中国共産党序列4位の王滬寧政治局常務委員が訪朝、北朝鮮の朴泰成(パクテソン)首相らが訪中するが、中国側の積極姿勢が印象的だ。
25年に締結されたロ朝戦略的パートナーシップ条約では、中朝の条約同様の軍事条項が含まれることで注目されたが、中国にとって北朝鮮軍のロシア派兵は条約の文言以上の意味があったのかも知れない。
(南山大学総合政策学部教授)








