防研セミナー 時代を読み解く シリーズ<58> 中露朝イ間の連携と米国

防衛研究所地域研究部 米欧ロシア研究室研究員
専門は米国の対中戦略・政策。学習院女子大学国際文化交流研究科修了(2020年)、ジョージ・ワシントン大学エリオット国際関係大学院修了(2023年)。ハドソン研究所リサーチ・インターン、ジョンズ・ホプキンス大学SAISライシャワー東アジア研究所ポリシー・リサーチ・フェロー等を経て2021年より防衛研究所勤務。2023年度には防衛省防衛政策局インド太平洋地域参事官付国際安全保障政策室にて主任を兼任。
ウクライナ戦争の勃発以降、中国・ロシア・北朝鮮・イランの協力関係が深化している。米国トランプ政権は、制裁や輸出規制で四カ国の協力に圧力をかける一方、中国やロシアとの対話にも意欲を示してきた。圧力と対話を同時に追求する米国の政策的関心はどこにあるのか。その手がかりとなるのが、四カ国間の協力に関する米国の脅威認識と政策議論である。
四カ国間協力に継続的な警戒感
米国の情報機関は、四カ国を一枚岩の陣営とはみなしていない。協力は主に二国間ベースで進展しており、各国の利害の違いや、米国との直接対決への懸念が、協力の規模と範囲を制約していると見ている。また、四カ国を一体の陣営とみなす表現は、実際の協力の深さを過大評価することになりかねないと指摘している。
他方、四カ国間の協力関係の進展には、継続的に警戒感を示してきた。米情報機関や政府高官の説明から、懸念は大きく二つに整理できる。
第一に、四カ国が互いに支援し合い、軍事力や継戦能力を高めていることを懸念している。
(1)まず、継戦能力が支えられている点である。例えば、中国はロシアから石油や天然ガスを購入するとともに、ロシアへ軍民両用の製品や技術を供給しているとされている。米情報機関は、こうした中国の支援がロシアの収入や兵器生産を支え、ウクライナでの停戦に応じる動機を弱めていると評価している。
(2)また、支援する側が得る利益にも懸念を示している。例えば、北朝鮮はロシアへ兵員や弾薬を送る一方、戦闘への参加を通じて実戦経験を積み、装備や軍事技術を得たと米情報機関は指摘する。イランも無人機を中心にロシアへの主要な軍事供給国となり、見返りとして、ロシアは兵器や情報、サイバー分野の能力向上に向けた軍事・技術面の支援をイランに提示したとの見方を示している。
(3)そして、こうした協力関係が、インド太平洋地域などの安全保障課題にも及ぶ可能性を警戒している。パパロ太平洋軍司令官は、中露朝の協力が地域の緊張や対立を一層深めうると指摘した。各国の利害は必ずしも一致せず、協力には限界があるものの、各国が地域における危機に便乗し、それぞれの目的を追求する可能性があるという。
第二に、四カ国間の協力関係がもたらしうる紛争拡大、とりわけ敵対する大国と米国が戦争に至る危険を懸念している。昨年の『年次脅威評価』報告は、四カ国の連携が、米国と一国との緊張や紛争に、別の敵対国を巻き込む可能性を高めると指摘していた。
またラトクリフ中央情報局長官も指名公聴会において、ロシアと他の敵対国との協力関係について論じる際、敵対的関係を「意図しない戦争」に発展させない必要性を説いていた。
こうした問題意識は、地域紛争を米国本土にまでおよぶ世界戦争に発展させないことを優先課題としている国家安全保障戦略とも整合的である。
敵対関係の一方 相互利益を追求
四カ国間の協力をめぐる政策議論は、対抗措置にとどまらない。ラトクリフ中央情報局長官は前述の発言の中で、敵対国間の協力への対抗と同時に、ロシアと相互に利益を得られる機会を生かす考えに言及していた。今年の『年次脅威評価』報告も、四カ国間の協力関係に言及する中で米中間の合意を例に、大国間競争の下にあっても互いに利益を得られる分野では協力できる場合があると指摘する。
このように、米国の懸念は、敵対国間の相互支援による脅威の増大だけでなく、敵対する大国との直接的な戦争に発展することにも向けられている。そして米国は敵対国間の連携への対抗と同時に、意図しない戦争の回避を志向し、敵対国との相互利益を追求する余地を認めている。脅威認識や政策議論を踏まえれば、連携への圧力と敵対国との対話は、必ずしも矛盾する対応ではないと解しうる。
(2026年10月29日付「朝雲」)












