技術安全保障を考察 【第10回】 なぜ良い技術でも実装されないのか

前回、防衛スタートアップの価値は仮説立案とその検証にあると述べた。ゲームチェンジャーが予測できないのであれば、多くの仮説を生み出し、それを試していくことが重要だからである。
しかし、良い技術であっても実装されないことがある。優れた研究成果や試作品があり、実証試験でも良い結果が出た。それにもかかわらず、実用化されない。あるいは導入されても広く使われない。そのような事例は、防衛の世界に限らず決して珍しくない。
もっと技術を磨けば良いのだろうか。性能を上げ、コストを下げる。試験結果を積み上げる。もちろん、これらが有効な場合もある。しかし、本当にそれだけなのだろうか。
どれほど優れた技術であっても、運用者が価値を理解しなければ使われない。どれほど優れたアイデアであっても、制度に適合しなければ導入されない。どれほど優れた実証結果があっても、組織が変化を受け入れなければ能力にはならない。問題は、技術そのものではなく、技術の研究成果を能力に変換する過程にある。

しばしば技術開発をイノベーションと呼ぶことがある。しかし、研究開発とイノベーションは同一ではない。研究開発が新しい技術を生む活動だとすれば、イノベーションとは新しい価値を社会や組織に実装する活動である。
スタートアップが得意なのは仮説立案とその実証である。しかし、仮説を能力に変えるためには、運用者、政策担当者、企業など、多くの主体が関わらなければならない。重要技術を開発するだけでは、戦い方が変わらない。本当に必要なのは、技術を能力に変換する力ではないだろうか。あなたの組織は、新しい技術を能力に変える仕組みを持てているだろうか。
山本晃平(国際社会経済研究所・特別研究主幹)








