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朝雲寸言(2026年2月19日付)

  • 2月18日
  • 読了時間: 2分

「そうそう、墓じまいのことなんやけど……」。神戸市内の喫茶店で70代後半とお見受けした女性2人が話していた。墓じまいとは墓を撤去し、遺骨を永代供養付のお墓のマンションに移したり、散骨に付したりするというもの。終活の一環で、簡便、身軽が重視されている。


一般社団法人「日本石材産業協会」(会員758社)が2023年に実施した調査結果を見る。墓じまいの工事件数は、回答した188社の89・9%が5年前に比べて「増えた」と答えた。主な理由は「次代に迷惑をかけたくないから」。


物騒な言い回しながら、「人は二度死ぬ」と説いたのは放送作家・永六輔(故人)だった。(1)肉体の死(2)人々の記憶から消える死。これに(3)記録がなくなる死を加えてもいいかもしれない。墓じまいには、次代に迷惑をかけずに(2)と(3)の事態を避けたい気持ちが透けて見える。


カナダの詩人・作家アン・マイクルズの最近の長編小説『抱擁』は、こう始まる。「命に限りがあることは知っている。それなら、なぜ死のほうは永遠につづくと信じるのか」(26年1月、早川書房刊、黒原敏行訳)。多くの胸中に刺さる見事な問いだ。


永遠からすれば、記憶や記録はどうか。なるほど、大した問題ではないはずだ。が、そうもいかない。都はるみのヒット曲「北の宿から」の「女ごころの未練でしょう」ではないが、ことほどさように人情とは割り切れぬものとつくづく思う。


(2026年2月19日付『朝雲』より)


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