時の焦点<海外> 西洋と東洋
- 2月4日
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アジアは一つなり
ニューヨーク・マンハッタンから198キロのロングアイランドの最北端モントークから見える大西洋は限りなく広大で壮観である。この対岸にマサチューセッツ州ボストンがある。
ボストン美術館中国・日本美術部長を務めた岡倉天心もまたこの広大な海を見ていただろう。同時に茨城県五浦の日本美術院の眼下に限りなく広がる荒波の太平洋の壮大さも天心の「アジアは一つなり」の思想を育んだに違いない。
美術家にして偉大な思想家でもある岡倉天心は、アメリカの哲学者アーノルド・フェノロサと共に日本の美術発掘に努めた。さらに中国美術視察やインドの美術品収集のために訪れたインドでは、詩人タゴールとも思想的交流を深めた。
天心は、鹿鳴館外交など行き過ぎた西洋文化至上主義に警鐘を鳴らし、東洋の思想、文化、美術こそが人間の精神の奥深さを示すものとして英文著作三部作『茶の本』『日本の覚醒』『東洋の思想』を著し、日本文化を世界に発信した。
同時代にやはり英文著作として世界的評価を得た内村鑑三の『代表的日本人』と新渡戸稲造の『武士道』もあったが、西洋文明に圧倒されている時代に、日本の文化や伝統・芸術を世界に知らしめた功績は大きい。その東洋の理念が天心とタゴールにより提唱された碑文“アジアは一つなり”ではないのか。
さて、10年前に安倍晋三元首相がこつぜんと提唱した「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想は、岸田政権、高市政権と継承された我が国の外交ビジョンである。だが、アジア諸国と連帯するその具体像が見えてこない。
なぜか言葉が軽く、深い思索が感じられない。さらには法のもとの国際秩序をうたい、海のサプライチェーン(供給網)の確保のためにインド洋、太平洋の沿岸諸国との自由貿易、活発な交流を目指している。しかし、単に中国の「一帯一路構想」に対抗したとの印象をぬぐえない。
ましてや国内総生産(GDP)で中国、インドに抜かれ世界で5番目だ。1人当たりのGDPでは韓国にも抜かれ、経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国中24番目では説得力を持たない。
政権がころころと変わり、いたずらに仮想敵国の脅威を煽るだけでは、インド太平洋沿岸のアジア諸国の信頼を勝ち得ることはできまい。国際心と愛国心は表裏一体である。国際心がなければ愛国心はない。愛国心がなければ国際心もない。国際心と愛国心はコインの裏表のようなものだ。
国際社会の大転換点にあって、行き過ぎたグローバリズムや自国ファーストが世界の秩序を乱すことは自明だ。
日本に今、求められているのは岡倉天心が『日本の覚醒』をうたい、究極の人生観として『茶の本』に著した東洋の茶文化の歴史こそ「平和の思想」である。
アジアと共生するなら、岡倉天心の心を学ぶべきだ。そして千利休の茶の湯の極致に思いを致さなければならない。
岡野龍太郎(外交評論家)







