時の焦点<海外> 米一般教書
- 3月5日
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ドンロー主義の正体
史上最長の1時間48分に及んだトランプ米大統領の一般教書演説(日本時間2月25日)だったが、11月の中間選挙を意識してか経済や治安、国境管理などに大半が割かれ、国際情勢に触れたのは開始から実に1時間以上たってからだ。
それもベネズエラのマドゥロ前大統領拘束作戦の成功や、北大西洋条約機構(NATO)に国防費の国内総生産(GDP)比5%支出をのませた話など、既視感のある自画自賛ばかり。「どの国も世界一の軍事力を持つ我々の決意を疑ってはならない」と凄んだ「力による平和」が、あえて言えば国際社会への唯一のメッセージだった。
各国が耳をそばだてていたのは、昨年12月の国家安全保障戦略(NSS)や今年1月の国家防衛戦略(NDS)の中核を占める本土・西半球中心主義と対中抑止・同盟国の負担強化などに、トランプ大統領がどう踏み込むのかだった。その意味では肩透かしだったわけだが、見方を変えればいわゆる「ドンロー主義」なるものの正体が、はからずも見えてきた演説だったとも言える。
建国後の米外交の基調となってきたモンロー主義は19世紀初頭、第5代モンロー大統領が米大陸に欧州の新植民地を認めない代わり、米国は欧州に関与しないと宣言したものだった。
100年後の20世紀初め、第26代セオドア・ルーズベルト大統領はそれを中南米への干渉に使う帝国主義的な外交方針へと修正した。俗に「ルーズベルトの系論」と呼ばれる拡張版モンロー主義だ。
それからまた100年たった21世紀のモンロー主義には、NSSによって「トランプの系論」の名前が冠せられた。ドンロー主義である。
ドンロー主義は西半球を丸ごと米国の影響下に置き、外部から手出しさせない。その上で東半球でも石油や核、サプライチェーン(供給網)など米国の死活的な利益が脅威にさらされれば、軍事行動を躊躇(ちゅうちょ)しない。
西半球を欧州から守るという当初の防御的なモンロー主義が、ルーズベルトの系論によって西半球支配を正当化する根拠へと変化し、さらにトランプの系論が「西半球はオレのもの」としつつ「米国を甘く見れば東半球にも手出し口出しする」新拡張主義に看板を掛け替えたのである。イランへの軍事攻撃はこの文脈の中にある。
つまるところ、米国ファーストの別名がドンロー主義なのだ。一般教書が理念ではなく実績やディール(取引)の成功の羅列に終わったのも、ドンロー主義が利害打算の産物であることを物語る。
一般教書演説の5日前には、ワシントンでトランプ大統領が議長を務める「ガザ平和評議会」の初会合が開かれた。東半球である中東地域で米国が主導権を握ろうとする枠組みだが、その場に掲げられた平和評議会のロゴマークに描かれていたのは、なぜか西半球の地図。ドンロー主義を象徴する光景だった。
高旗 良(外交評論家)
(2026年3月5日付『朝雲』より)







