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朝雲寸言(2025年8月21日付)

  • 2025年8月21日
  • 読了時間: 2分

更新日:6月8日


1918年夏の米騒動は、米価高騰に苦しむ富山県の女性らのささやかな抗議行動が発端だった。「越中女房一揆」として新聞で全国に伝わると、たった1カ月で数百万人を巻き込む騒擾(そうじょう)事件に発展する。


8月12日夜、神戸市の総合商社が「米買い占め、米価つり上げの元凶」とみなされ、群衆に囲まれて焼き打ちに遭う。後に作家の城山三郎さんがテン末を調べ、『鼠(ねずみ) 鈴木商店焼打ち事件』を書いた。真相は意外なものだった。


鈴木商店は、買い占めどころか逆に安い海外米を大量に輸入して、政府の米価抑制策に協力していたのである。「鈴木としては、感謝されていいという気持ちだったろう」と城山さん。


一部の新聞はそれを知りながら、暴利をむさぼる「奸商(かんしょう)」(ずるい商人)のように書き立てた。鈴木の背後にいた藩閥内閣を揺さぶる狙いがあったというが、虚実取り混ぜたセンセーショナルな報道で大衆をあおったことは将来に禍根を残した。


新聞が国民を戦争に駆り立てるようになるのは、約20年後のことである。少年兵で敗戦を迎え、日本がどこで道を誤ったかを問い続けた城山さんは、この事件に時代の分岐点を見ていた。


米騒動、欧州の戦争(第1次大戦)、パンデミック(スペイン風邪)と、当時の世相はどこか今日と重なる。今や情報発信の主役はSNSに代わり、フェイクニュースが瞬時に世界を駆け巡る。令和の米騒動を後世の人々はどんな思いで振り返るだろう。


(2025年8月21日付『朝雲』より)

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