朝雲寸言(2025年3月6日付)
- 2025年3月6日
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更新日:6月8日

先月封切られた映画『ゆきてかへらぬ』を見た。夭折の天才詩人・中原中也、文芸評論の奇才・小林秀雄、駆け出しの女優・長谷川泰子の3人の物語。日本の文学界史上、最も有名な「三角関係」と言われる話だ。大正から昭和初期にかけて京都と東京を舞台に展開する実話で、3人は共に強烈な個性を放っている。
17歳の中也が二十歳の長谷川泰子と同棲(どうせい)をはじめるが、中也の才能を高く評価する5歳年上の小林に彼女を奪われる。しかし、その小林もやがて彼女から逃げ出してしまう。これまで、泰子の魔性(ましょう)が2人の男を翻弄(ほんろう)したのだと思っていたが、どうもそうではないらしい。
中也と小林の文学的結びつきがあまりにも強く、その関係に泰子は入っていけない。文学の巨星2人にコンプレックスを抱き、彼女は精神を患ってしまう。
先週末に米・ウクライナ首脳会談がワシントンで行われた。記者を前に首脳同士が口論するという前代未聞の大波乱。ロシアのプーチン大統領はさぞかしほくそ笑んでいることだろう。トランプ、プーチン、ゼレンスキーの3氏。これまでの常識では計り知れない個性の持ち主だ。しかし、米露二大国を相手にしてウクライナはあまりに弱い。
中也と小林は長谷川泰子との交際を自らの創作の肥やしにした。米露にとってウクライナは鉱物資源と穀物の供給地だ。世界は法によって支配されるのではなく、力とカネの論理に従うのだろうか。
(2025年3月6日付『朝雲』より)








