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防研セミナー 時代を読み解く シリーズ<50> 韓国のWPS政策

  • 2月26日
  • 読了時間: 3分

更新日:4月27日

今月の講師 小池修氏
防衛研究所 政策研究部 防衛政策研究室 研究員

京都生まれ横浜育ち。東京大学教養学部卒業後、同大学院総合文化研究科地域文化研究専攻修士課程修了、博士後期課程単位取得満期退学。専門分野は韓国の外交・安全保障政策。韓国国防大学校(KNDU)との日韓教官交流や安全保障戦略課程(旧・一般課程)の東アジアの安全保障講座などを担当。

日本に先立つ韓国の取り組み


2000年に女性・平和・安全保障(WPS)に関する国連安全保障理事会決議第1325号(決議1325)が採択されて以来、韓国では14年の第1期に始まり、24年の第4期まで4回にわたって国家行動計画が策定されてきた。


これは15年に第1次政府行動計画を策定した日本に先立つものである。


韓国のWPS政策推進の司令塔は性平等家族部(旧・女性家族部)であり、国家行動計画には国防部のほか外交部、統一部、法務部、行政安全部など11個の部処(省庁)と機関が参加している。


「性暴力の視点」と「4期行動計画」


決議1325に至る動因のうち、大きな一つは1990年代に内戦下の戦時性暴力が世界的な注目を集めたことである。


戦時性暴力の被害国としての歴史的アイデンティティーを持ち、かつ北朝鮮と対峙する徴兵制国家・韓国が、WPSという国際規範をどのように国内政策、特に軍事組織に適用しようとしているのか。


韓国のWPS政策は、この暴力からの保護という側面に極めて強い力点を置いている部分に特徴がある。最新の「第4期国家行動計画(2024―27)」においても、日本軍「慰安婦」被害者の尊厳回復や、北朝鮮離脱女性(女性脱北者)への定着支援が盛り込まれている。欧米諸国のWPSが「軍縮」や「平和構築への参加」を志向するのに対し、韓国は北朝鮮という軍事的脅威が存在するため、「軍縮」を現実的なアジェンダとして掲げにくい事情がある。そのため、韓国はWPSを安全保障における「人権アプローチ」として解釈し、自国が抱える歴史的・社会的課題の解決に適用する戦略をとっている。


軍内部での対策とPKOの女性軍人


それでは、韓国軍におけるWPS政策はどのような部分に重点を置いて進められているのだろうか。第4期計画において国防部は、「軍内の性暴力予防」と「被害者保護」を最優先課題の一つに掲げている。


韓国では近年、空軍や海軍で発生した性暴力事件に対し、被害者が組織的な隠蔽や2次被害に絶望して自死を選ぶという痛ましい事案が相次ぎ、軍司法制度の改革にまで発展した。これを受け、国防部は単なる精神論ではなく、制度的な是正に乗り出している。具体的には、部隊内に「人権保護官」などの専門職を配置し、性暴力被害者の早期発見と保護、そして加害者の処罰厳格化を進めている。また、被害者が不利益を被らないような相談・申告システムの独立性を高める試みもなされている。


国連平和維持活動(PKO)においては、女性要員の参加拡大が課題となっている。現在、韓国軍はレバノンや南スーダンなどに要員を派遣しているが、女性比率は約5~6%台にとどまり、国連が推奨する目標値(15%以上)には届いていないのが実情である。専門家からは、作戦地域で現地女性や子供からの情報収集・支援を行う「エンゲージメント・チーム(ET)」の能力向上が急務であり、そのために女性要員が活動しやすいインフラ整備や教育訓練の体系化が必要であるとの提言がなされている。


残された課題


一方で、課題も多く残される。WPS国家行動計画には独立した予算が十分に割り当てられておらず、各省庁が既存予算の中から名目上組み替えて対応しているのが実態である。また、関連省庁間での政策目標や評価指標が一致しておらず、連携不足による重複や断絶も指摘されている。外交的なアピールと現場の実態との間には依然として埋めるべきギャップが存在する。


試行錯誤を進めている段階ではあるが、人権を安保の基盤に据える韓国のWPSに関するアプローチは、日本のWPS推進にあたっても一つの重要な参照点となるだろう。


(2026年2月26日付「朝雲」)


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