総力戦研究所と海軍第一委員会 工藤美知尋 著
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1941年夏、総力戦研究所は机上演習で「長期化したら負ける」と結論づけた。「その警告を軍部が無視した」という歴史は教訓として分かりやすい。
ところが本書は、政治の中枢になかった同所が軍を拘束できなかったことは役所の構造上「当然」と指摘する。
では、中枢で開戦を導いたのは――。
軍令部第一委員会の報告書「現情勢下ニ於テ帝国海軍ノ執ルベキ態度」では、日米の国力差と長期戦の不利を認めながら「現状打開のためにどうすべきか」を主眼に、開戦ありきの短期決戦を検討していた。
勝てなくても戦わなければ状況が悪くなるからとの理由で、「開戦は合理的」と判断していたのだ。
分析と政治の区別がなくなり、前提が固着する中で、組織の決定や暗黙の了解が正当化された歴史をつまびらかにする。
開戦の経緯を「軍部の暴走」「精神論」と一蹴せず、合意形成の構造にあった問題に迫る。
(並木書房刊、1980円)


