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防研 「不均衡な関係 不確実性高める」 「中国安全保障レポート2026」(2025年12月)
2025年12月3日更新

年次報告書『中国安全保障レポート2026』
防衛研究所は12月20日、中国の中長期的な軍事動向に関する年次報告書『中国安全保障レポート2026』=写真は表紙=を公表した。2011(平成23)年に創刊されて以来、16冊目となる今年のテーマは「不均衡なパートナーシップ―中国、ロシア、北朝鮮」。
中国は西側世界に対抗する新たな国際秩序の形成に向けた動きを加速させていると分析。一方で、中露は米国の「覇権主義」への対抗という原則で一致するものの、外交戦略などではギャップが存在し、中国はロシアと一定の距離を置きながら、困難なバランスの維持に迫られているとした。
ロシアは核兵器や北朝鮮の軍事能力向上といった「恐怖カード」を段階的に突き付けることで、西側社会がエスカレーションを恐れてロシアへの対抗に慎重になることを期待してきたと指摘した。
北朝鮮は実質的な「核保有国」としての能力を確保しつつあり、特にウクライナ戦争を契機にロシアとの関係を緊密化させていると分析。露朝は事実上の「軍事同盟」関係にあり、北朝鮮は武器提供や派兵の見返りに、ロシアから軍事技術やエネルギー支援を受けているとの見方を示した。
こうしたことを踏まえ、中露間の「戦略的協力」が中国の作戦能力の増強に、また、露朝接近が北朝鮮の核・ミサイル能力の増強にそれぞれつながっていることを強調。「中国、ロシア、北朝鮮間のそれぞれで形成されている不均衡なパートナーシップと、それが生み出すダイナミズムが、インド太平洋における安全保障環境の不確実性を高めている」と警鐘を鳴らした。
今年は地域研究部長の庄司智孝氏が編集長を務め、中国研究室長の増田雅之氏、米欧ロシア研究室長の山添博史氏、アジア・アフリカ研究室研究員の浅見明咲氏が執筆。A4判、全87ページ。防研HPには日英中3カ国語による全文がPDF版で公開されている。(日置文恵)