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自衛隊記念日に寄せて 自衛艦隊司令官 大町克士海将(2025年11月1日)
2025年11月11日更新

自衛艦隊司令官 大町克士海将

横須賀でイージス艦「ちょうかい」にトマホーク模擬弾を搭載する訓練が行われた。海自はスタンド・オフ防衛能力の獲得に向け着々と準備を進めている(9月25日、海自提供)
「精強・即応」の真価 問われる時代
「自衛隊記念日」に際し、読者の皆様には、平素より自衛艦隊の任務、諸活動に対して、深いご理解と多大なるご支援を賜っておりますことに心より感謝申し上げます。
◆国際秩序の試練
さて、現下の国際社会は、戦後最大の試練の時を迎えており、世界平和の既存の秩序は深刻な挑戦を受け、我が国を取り巻く安全保障環境は、戦後最も厳しく複雑なものと評価されています。
中国軍は、「連合利剣」「海峡(かいきょう)雷霆(らいてい)」といった台湾周辺での大規模演習に見られるように、その活動を一層活発化させています。今年6月には「遼寧」「山東」の2つの空母グループが西太平洋で初めて同時に活動し、中国軍機が海上自衛隊の哨戒機に異常に近接するという事案も生起しました。9月には、3隻目の空母「福建」の航行を海上自衛隊として初めて確認しています。
また、近年は中露両国の軍事面での連携も進み、今年8月には中露合同演習「海上協力2025」の日本海での実施が報じられたほか、中露艦艇の共同航行も確認されました。
そして、北朝鮮は、引き続き弾道ミサイルなどの発射を強行しており、海上自衛隊のイージス艦は、その対応のため、常時、警戒に就いています。加えて、我が国の海上交通の安全確保に直結する海賊対処行動は、今年で16年目を迎え、流動的な中東情勢の中で、部隊は日々、高い緊張感をもって任務を継続しているところです。
◆隙のない防衛態勢維持
こうした情勢下、将来にわたって隙のない防衛態勢を維持する観点から、観閲式等は実施されなくなったと承知しています。自衛艦隊としても、創設以来掲げてきた「精強・即応」の真価が今ほど問われている時代はないと考えています。国家安全保障戦略では「2027年度までに、我が国への侵攻が生起する場合には、我が国が主たる責任をもって対処し、同盟国の支援を受けつつ、これを阻止、排除できるように防衛力を強化する」とされています。
このため、・・・