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防衛費過去最大8.8兆円 無人機で沿岸防衛 概算要求(2025年8月29日)

2025年9月2日更新


無人機を活用する沿岸防衛構想「SHIELD(シールド)」のイメージ=防衛省提供

 防衛省は8月29日、2026年度予算案の概算要求を発表した。防衛力の抜本的強化を掲げた整備計画の4年目となる来年度は過去最大の8兆8454億円の防衛費を計上した。空と海上、海中でドローン(無人機)を活用する沿岸防衛構想「SHIELD(シールド)」を打ち出し、大量配備に向けた調達費を盛り込んだ。攻撃や警戒監視能力を強化する狙い。他国のミサイル基地などを破壊する反撃能力(敵基地攻撃能力)に活用する国産の長射程ミサイルの量産にも着手する。

 政府は27年度までの5年間で防衛費を計約43兆円とする方針を示している。これに基づき、23年度当初予算から防衛費は急増。今回の要求額は、25年度当初(約8兆7千億円だった)を上回る規模となった。

 来年度の概算要求で、新たに盛り込まれたシールド構想は2027年度中に構築する。陸海空3自衛隊へ配備する無人機の調達費用1287億円に加えて、無人機の管制システムの実証に向け23億円を要求した。配備する無人機は海外製を中心に調達する。将来的には国産の無人機に切り替え、国内生産の整備基盤を強化する方針。

 同構想は、艦艇から発射する水上艦発射型の無人航空機のほか、水中を進む無人潜水機や水上用の無人水上艦で敵艦の侵入を阻止するもの。陸側からは情報収集用の小型無人機や小型攻撃用無人機で沿岸に迫ってきた敵艦に対応する。

 長射程ミサイルを活用して敵の侵攻を防ぐ「スタンド・オフ防衛能力」に1兆246億円を計上した。この中には、国産ミサイルの量産体制を整える費用も盛り込んだ。

 反撃能力に活用する長射程ミサイルの「極超音速誘導弾」では関連設備を含めた取得費305億円、開発費742億円をそれぞれ要求した。12式地対艦誘導弾の射程を延ばす「能力向上型」の地上発射型に1798億円を求める。艦艇発射型や潜水艦発射型誘導弾、島嶼防衛用高速滑空弾も取得する。

 宇宙領域の能力強化として次期防衛通信衛星などの整備に903億円を要求。運用中のXバンド防衛通信衛星「きらめき」の後継機の製造に着手する。日本の人工衛星の電磁妨害状況を把握する装置の導入に12億円を求めた。

 防衛省は26年度の組織改編としては内局をはじめ、自衛隊の組織改編を計画する。防衛相の負担軽減のため防衛副大臣を1人増員。また、軍事活動を活発化させる中国を念頭に太平洋地域の防衛計画を検討する「太平洋防衛構想室(仮称)」を新設する。

 陸自では、南西シフトの一環として1個普通科連隊を新編し、15旅団を師団に改編するほか、特殊作戦群を「特殊作戦団」に格上げ。加えて、「陸自後方支援学校(仮称)」を新編する。宇宙領域での能力強化に向け、27年度までに予定していた航空自衛隊の「航空宇宙自衛隊(仮称)」への改編を26年度に前倒しする。この中に「宇宙作戦集団(仮称)」を新たに設ける。(船木正尋)

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